今回のHOT CHIPS 20では、2日間で9つのセッションと2つのキーノート講演、そして、パネルディスカッションが行われた。

今回は第20回という節目の年で、プログラム委員会が頑張ったのか、全体に聞き応えのある発表が多い充実した内容であった。中でも、26日の午前中に開催されたPC Chipsと題するセッション6では、グラフィックスプロセサを内蔵するAMDのチップセットであるAMD 780Gの論文、そして中国科学院のクワッドコアチップであるGodson 3プロセサのマイクロアーキテクチャの論文、更にIntelのNehalemマイクロアーキテクチャの論文の発表と3つの興味深い論文が並び、昨日に比べて大幅に出席者が増加した感じであった。

PC Chipsセッションの会場風景

また、同日の午後に開催されたVisual Computingと題するセッション8では、NVIDIAのGT200の論文とIntelのLarrabeeの論文が発表された。Larrabeeの論文は、予稿集では、前の週のIDFでの発表スライドを使いまわしたような内容で、がっかりであったのであるが、登壇したIntelのDoug Carmean氏は、主催者から、もっとハードウェアの説明を入れるようにという要請があり、ここ2~3日で発表スライドをかなり修正したと述べて発表に入り、新しい内容が含まれた発表となっていた。

そして、最後のセッション9はServer Chipsのセッションで、Intelの次世代ItaniumであるTukwilaの論文、富士通のSPARC64 VIIの論文とSunのRockの論文が発表された。人気の点では、PC Chipsのセッションに比べると、多少、出席者が減少した感じであったが、技術的には、Tukwilaの論文はIntelの3つの論文の中ではベストであったし、SunのRockの論文では、偵察(Scout)スレッドを使って性能を向上させるマルチスレッドメカニズムが詳しく説明されるなど、聞きに来た甲斐があったセッションであった。

また、富士通の発表では、最後に予稿集に含まれていないおまけスライドが表示され、Venus(ビーナス)と呼ぶ開発中の次世代SPARCチップの概要が公開された。それによると、Venusは45nmプロセスを使用し、8コアを1チップに集積するペタスケールコンピューティング向けのCPUであり、HPC-ACEと呼ぶSIMD機構を搭載し、ソケットあたりの性能は128GFlopsとなっている。また、CPUチップにメモリコントローラを内蔵するという。時期と内容から見て、富士通担当の次期日の丸スパコンのスカラ部には、このプロセサが使用されるものと考えられる。