では次にPhenomで同じ様に計算してみよう。ここで厄介なのはPhenomがQuad Coreな事。このため、Static PowerにはCPUコア4つ分が加算されることになる。これはBIOS SetupのDowncoreを使っても変わらない。Downcoreの機能はあくまでいくつのコアにClockを供給するかだけの選択であって、電気的にコアを切り離す訳ではないからだ。このため、全てのCoreは常にStatic Powerを消費することになる。この結果、例えば1P構成であれば図2の様な形になる。

図2

同じように計算すると、

CPUコアのDynamic(1.3GHz)×1=19W
マザーボード+ノースブリッジのStatic/Dynamic Power = 142.0W
また2.6GHzにおける待機時とフル稼働時のDynamic Powerの差 = 19W

と計算される。この調子で、全てのケースを算出してみたのが表1である。

表1

結果を見るとPhenomの1P~4Pで、1Pあたりの待機電力/稼動電力にバラつきがあるが、グラフ2でも判る通り特に待機時の電力にバラつきがある。一番漸近線に近いのは3Pの時のようなので、これを採用すると、

Athlon 64 X2: 待機時11.0W / 稼動時32.5W
Core 2 Quad : 待機時12.4W / 稼動時31.4W
Phenom : 待機時28.0W / 稼動時41.7W

という計算が成立する。これはCPUコア1個あたりの消費電力であって、やはり突出してPhenomの消費電力は大きい。

ついでにもう一つ。Athlon 64 X2とPhenom 3Pで「CPUのDynamic Power以外の消費電力」を比較すると、

Athlon 64 X2: 102.1W
Phenom : 116.9W

となっている。マザーボード以下の構成は同じだから、違いは、

  • Memoryの速度(Phenomは800MHz、Athlon 64 X2は742.8MHz)
  • L3キャッシュの有無
  • コアの数(2P→4P)

程度であろう。Memoryの速度差はせいぜい1W程度、キャッシュもせいぜいが数Wといったオーダーと想定すると、コアが2P→4Pに変わったことで15W弱増えている計算になる。つまりコアあたり約4Wという計算だが、これはちょっと驚異的な数字となる。ということは、コア1Pあたりの最大消費電力は45Wを越える事になり、4Pだと180W(!)にもなる。まだPhenom 9900のTDPやMAX Powerは公開されていないが、TDPが140Wになるという話であり、これを軽く凌駕することになる。これはやはり前提が間違っているのであって、もう少しL3キャッシュやその他のノースブリッジ機構の消費電力が増えていると考えるべきかもしれない。