イオンエンジンも大型化

「はやぶさ」といえばイオンエンジン。イオン化した推進剤(キセノンガス)を電気的に加速し、推力を得る高効率のエンジンであるが、前述のように「はやぶさMk-II」ではより大きなμ20の搭載が予定されており、この展示も行われていた。

イオンエンジンのコーナー。奥では運転中のイオンエンジンを見ることもできる

これがイオンエンジンの光。昨年は正面から見たが、今年は横向きに設置されていた

初代に搭載されていたμ10の推力が8mNであったのに対し、μ20が目標とするところは27mNと3倍以上。その一方で、システム電力は350Wから900Wと3倍以下に抑え、推力/電力比の改善も図られている。「はやぶさMk-II」では、これが6基搭載されることになるようだ(初代はμ10が4基)。

担当者によると、性能に関してはほぼ目途が立ってきたので、そろそろ耐久性の検証に移るところだという。まずは1,000時間程度の連続運転を行い、最終的には2万時間程度のテストに持って行くそうだ。

20cm径のイオンエンジン「μ20」

まもなく耐久テストを実施するという

気になる月探査用の「あれ」

次は月探査についての話題。といっても夏に打上げられる予定の月周回衛星「かぐや」(SELENE)の話ではなくて、筆者が気になったのは月探査衛星「LUNAR-A」で使われるハズだった「ペネトレータ」についての情報である。

槍のような観測機器「ペネトレータ」。月面に高速で打ち込まれる

搭載する月震計のデモ。近くを歩いただけでも検出する精度の高さ

ペネトレータは、月面に高速で打ち込み、搭載した月震計と熱流量計により、月内部の構造・組成・熱的状態に関する観測を行うものだ。当初、LUNAR-A計画としてスタートしたが、ペネトレータの完成が遅れに遅れ、ようやく完成の見通しが立ったものの、結局プロジェクトは中止になってしまった。しかし、ペネトレータによる月・惑星内部探査の科学的価値は認められており、国内外の探査機への搭載を目指していた。

このペネトレータであるが、現在、ロシアの月探査機「LUNA-GLOB」への搭載を前提とした協議が行われており、2012年の打上げを目指しているという。LUNAR-A中止の理由の1つは、ペネトレータの搭載数が2本と冗長性に乏しかったことがあるが、LUNA-GLOBでは4本搭載。打上げロケットと衛星本体はロシア側が用意し、ペネトレータはブラックボックスで構わない(つまり技術情報を提供しなくても良い)ことになっているそうで、日本側としては悪くない話に聞こえる。

これが開発スケジュール

衛星にはペネトレータを4本搭載する

またLUNA-GLOBのほかに、SELENEの次号機で搭載することも検討されているのだとか。ペネトレータは来年2月頃に最終の貫入試験を行い、「技術の完成」とする見込みだ。

「次期固体」の現状は?

旧ISASが開発した全段固体燃料の大型ロケット「M-V」。糸川英夫教授によるペンシルロケットからの流れを汲む究極の固体ロケットだったが、2006年9月に打上げられた7号機をもって運用を終了し、後継となる「次期固体ロケット」を開発するという発表があったのが約1年前。会場の一角では、この次期固体ロケットについての紹介も行われていた。

次期固体ロケットのイメージ

昨年7月の発表では、次期固体ロケットは2段式で、第1段はH-IIAロケットの固体ブースタ(SRB-A)、第2段はM-Vロケットの第3段(M-34)をそれぞれ流用する、となっていたが、今回の構成図ではこれが3段式になっていた。3段目となるキックステージはもともとオプションとして考えられていたものだったが、2段では能力的に足りなかったようで、今はこの3段式で進めているそうだ。打上げ能力も、LEO(地球低軌道)で1.2tと修正されている。

会場で配られていたパンフレット

1年前の報道では「流用」という面が強調されていたが、上段(つまりM-Vがベースの部分)に関しては、実際にはかなりの改修を行うようだ。低コスト化のほか、整備作業の簡素化なども狙っているもので、2010年の打上げを目指している。