NEC信息系統(中国)有限会社は先頃、ソリューション事業とソフトウェア開発体制を強化するため、江蘇省無錫市に支社を設立した。当然のことながら、これはNECグループが中国全土にもつ数多くの現地法人のなかの、ちょっとした挙措に過ぎない。本稿ではNECの長年にわたる中国事業の現状について述べてみたい。

中国におけるNECの30年

NECの中国事業は30余年前にまで遡ることができる。1972年の日中国交正常化後、当時の田中角栄首相が中国を訪問し、中国側がその歴史的な訪問の様子を全世界に向けて生中継しようとしたのだが、当時の中国にはそのような技術も設備もなかった。そのため、NECが日本政府の臨時指名を受け、北京の首都空港で衛星中継システムを組み立てた。それが、NECの中国進出のきっかけとなった。

NECはその後、早くも1980年に中国に事務所を設け、最も早く中国進出を果たした外資企業の一社となった。1991年の半導体メーカー「首鋼日電電子有限公司」設立後も、電話交換機、コンピュータ、モバイル通信およびソフトウェア開発などの分野で、多くの合弁、もしくは独資企業を設立。2003年には北京にNEC中国研究院を設立した。2004年10月になると、NECは中国全土に広がった現地法人の整合をはじめ、NEC通訊(中国)有限公司を設立。中国の3G市場に狙いを定めた。翌2005年10月には、傘下の4つの子会社を整合してNEC電子(中国)有限公司を設立、中国における業務の全面的な整理統合を完成させた。

現在、NECの中国における現地法人は、直接投資、子会社および中国の提携パートナーとの合弁企業など、全てを含めれば合計50社を越え、従業者数も15,000人を超える。また、中国での業務内容は非常に広範で、その製品は半導体製造、モバイル通信、交換機、光ファイバー通信設備、コンピュータソフトウェアなど多岐に渡る。

特筆すべきはNEC電子(中国)有限公司だが、これはNEC Electronics Corporationが2005年下半期に設立した独資企業で、主に同社の中国における半導体設計、開発、販売と、技術サポートを担当する。上海や深センなどにも子会社を設立したNEC電子(中国)有限公司は、世界をリードする半導体素子製品およびソリューションの顧客への提供に力を注いでいる。

NEC(中国)有限公司はNECグループ全体の中国区総本部にあたり、事業発展部、国際購買本部、NEC中国研究院、知的資産センターなど4つの機構からなる。その内、事業発展部はNECグループの中国におけるブランド力増強推進や新規事業開拓を担当する窓口部門だ。2003年に北京で設立されたNEC中国研究院は、NECの全世界における研究開発事業の配置をより一層完備させたと評価されている。

NEC在中国主要会社一覧表
会社名称 業務内容
NEC(中国)有限公司 広告宣伝、市場調査、研究開発
NEC信息系統(中国)有限公司 システム集成、コンピュータソフトウェア開発
NEC通訊(中国)有限公司 携帯電話、通信設備の生産、販売、整備
NEC卓越軟件科技(北京)有限公司 コンピュータソフトウェア開発
首鋼日電電子有限公司 半導体チップ製造、販売
中訊潤通科技(北京)有限公司 携帯電話設計
NEC電子(中国)有限公司 LSIとソフトウェア設計、開発、販売
天津日電通信技術有限公司 交換機整備、ソフトウェア開発
上海華虹NEC電子有限公司 半導体チップ製造、販売
上海宇夢通信科技有限公司 3Gコア技術開発
NEC数碼応用製品貿易(上海)有限公司 ノートパソコン、サーバー販売
上海広電NEC液晶顕示器有限公司 TFT液晶製造
上海NEC電子国際貿易有限公司 電子国際貿易
武漢NEC移動通信有限公司 携帯電話生産、販売
武漢日電光通信工業有限公司 光通信設備生産、販売
日電(広州)信息設備貿易有限公司 プロジェクター、ディスプレー販売
西安NEC無線通信設備有限公司 マイクロウェーブ設備生産、販売
桂林NEC無線通信有限公司 マイクロウェーブ設備生産、販売

このように、NECは中国で数多くの各種企業を設立し、運営しているわけだが、NECの中国における事業を向かうところ敵なし、と言う訳にはいかないのだ。