NECはIT、通信、半導体の三分野で窓口の一本化を図っており、いまのところ、その整合も順調にいっているようだ。しかしITと通信の融合というマクロ背景にあって、2つの産業領域に跨るNECは、事の必然として「融合の優勢」を発揮することが難しい。IBMやHPのようなITサービスを提供する欧米系企業は、社内が一本化された管理モデルで貫徹されている。しかし、多くの日本企業が実施しているのは「管理権下放」という分散型管理体制で、各業務分野が事実上単独で運営を行っているのだ。このような管理体制が、NECグループの掲げるITとネットワークソリューションの融合、発展にとって望ましいとは決していえないはずである。

一連の再編、統合を経てNEC信息系統(中国)有限公司、NEC通訊(中国)有限公司とNEC電子有限公司が成立したが、2005年10月時点でも、NECグループは大中国区(中国大陸、香港と台湾を含む)にまだ69社もの現地法人をもっている。このうち多くの法人がNEC直系の子会社、子会社の子会社が設立した現地法人だ。あまりにも多すぎる現地法人。こうした状況もNECがめざす「統制ある発展」を困難なものにしているわけだが、NECの中国事業を支える根幹は、結局優秀な現地人材であり、さらにいえば、高度の経営現地化を図るためにも、優れた経営人材が欠かせないということになる。しかし、これは長い道のりを経て初めて実現されるものであって、特別な近道などないものだ。

NECは経営管理人材の現地化を加速させるため、最近になって大胆な試みを始めた。それは欧米企業ですでに鍛え上げられた現地人材を天下りさせることだ。

例えば先にも示した通り、2004年4月にNECがNEC通訊(中国)有限公司を設立した際、元Motorola副総裁兼個人通信事業部 中国地区総経理の盧雷氏を総裁に抜擢した。一般の日系企業の腰をすえて一歩一歩着実に仕事を進めるやり方と違って、市場を熟知し、ヤル気満々の盧雷氏は、着任後の初仕事として、企業ブランドの知名度引き上げに集中した。巨額の資金を注ぎ込んでCCTVのゴールデンタイムのコマーシャル枠を落札、さらには売り場イメージに統一感ある新デザインを採用したのだ。こうしたNEC通訊の新たな広告施策は一定の功を奏し、短期間でNEC携帯のブランドイメージを引き上げ、多くの人に「NEC」を知ってもらうことができたのだった。