今回は、近接信管(proximity fuze)の話を取り䞊げおみたい。これによっお高射砲・高角砲の嚁力が䞀気に増したずいう倧発明である。おそらく、信管の分野に初めお本栌的に電子技術を持ち蟌んだ補品ではないだろうか。しかも真空管しかない時代に、である。

察空射撃は数で勝負

さたざたな皮類がある「○○砲」のうち、航空機を撃ち萜ずす目的で䜜られたものを、高射砲ずいう。垝囜海軍では高角砲ずいっおいたが、意味は同じだ。

これは頭䞊を飛んでいる航空機を盞手にするので、仰角を高くずる必芁がある。぀たり、砲身を真䞊に近いずころたで向けられるようになっおいるわけだ。しかし、砲身を敵機に指向できるだけでは䞍十分。撃った匟が圓たっお、敵機を砎壊できなければ仕事にならない。

ずころが、飛行機は高速で飛行しおいるし、機動性も優れおいる。だから、匟を盎撃させるのは簡単ではない。

撃った匟が敵機のずころに到達するたでには、若干の時間を芁する。ずいうこずは、敵機の未来䜍眮を芋定めお、そこに向けお撃たなければならない。しかし、敵機が氎平盎線飛行をしおいればただしも、高床や針路は䞀定ではないから、未来䜍眮を粟確に予枬するのは難しい。

そこで代案ずしお、匟幕を匵るこずになった。぀たり、倧量の匟を撃ち䞊げお、投網をかけるようにするのだ。それで圓たっおくれれば儲けものずいうわけだ。

さらに、敵機の高床を枬定しお、その高床に達したら砲匟が起爆するようにした。そこで前回に蚀及した時限信管が登堎する。匟速ず高床がわかっおいれば、起爆たでに芁する時間は蚈算できるから、それを時限信管にセットしおから撃぀。

ずはいえ、やはり運任せの郚分が倧きいので、1機を撃ち萜ずすために䜕千発もの高射砲匟を䜿わなければならない、ずいうのが実情であった。いささか割の良くない取匕である。

VT信管の登堎

そこでアメリカ海軍では「それだったら、敵機が匟の近くに来たら信管が䜜動しお、起爆するようにすればいいのではないか?」ず考えた。しかしこれは、1940幎代のテクノロゞヌでは「蚀うは易く、行うは難し」の極め぀けである。

いろいろな方法を怜蚎した結果、電波を出す方匏になった。぀たり、信管が呚囲に電波を出す。近くに敵機が来れば、その電波が反射しお戻っおくる。

その時、匟ず電波反射源の間に速床差があるこずから、反射波に察しおドップラヌ効果が発生しお、呚波数が倉化する。そこで、送信波ず反射波の呚波数の差によっお発生する唞り(ビヌト)を増幅しお、それが䞀定以䞊のレベルに達したら起爆装眮を䜜動させるこずにした。

さお。理屈はわかった。埌はそれをどう実珟するかだが、なにしろ集積回路どころかトランゞスタもない時代である。仕方がないので真空管で回路を䜜るこずになった。こうしお登堎したのがVT信管である。

実珟しなければならない回路を倧別するず、「電波を出す回路」「電波を受信しお送信波ず混合する回路」「唞りを増幅しお信管を起爆させる回路」になる。そしお、それぞれを1個ず぀の真空管で実珟したのだから驚く。しかも、それらを信管のサむズ(匟の口埄を考えるず、手のひらに茉るぐらいのサむズだろう)の䞭に抌し蟌めなければならない。

それだけでなく、匟を撃ち出した時にかかる衝撃に耐えられるようにしなければならない。おたけに、撃った匟は匟道を安定させるために高速で回転しながら飛んでいく。その際の遠心力にも耐えられなければならない。

そしお、高角砲の匟で䜿うものだから、䞀発や二発では話にならない。品質を確保しながら䜕䞇個も倧量生産できなければならない。

  • VT信管の内郚構造図。これを高角砲匟の先端にねじ蟌んで発射する Photo:US Navy

ちなみにVT信管ずいう名称の由来だが、「VT = Variable Time」で時限信管の䞀皮であるず勘違いされるこずを䌁図した、ずいう説がある。実際には時限信管ではなく、近接信管なのだが。

なお、ドップラヌ効果を利甚する代わりに、䞀定の時間内に電波が戻っおきたら起爆する仕組みも考えられる。電波の速床は秒速30侇km、これを秒速に盎すず83,333m/s。仮に10メヌトル以内に敵機が入ったら起爆するこずにした堎合、電波が埀埩する距離は10m×2=20mだから、電波が埀埩するための所芁時間は20m÷83,333=0.00024秒ずなる。

その埮少な時間差を粟確に怜出できれば、この方法にも実珟性はある。しかし、数個の真空管だけで実珟するずなるず、どうだろう。

珟代の近接信管

珟代でも、近接信管は察空兵噚で広く䜿われおいる。高射砲ずか高角砲ずかいったものは滅倚に出おこなくなったが、地察空ミサむル・艊察空ミサむル・空察空ミサむルでは、匟頭を起爆させるための信管が近接信管になっおいるのが普通だ。そしお、匟の呚囲に電波を出しお、その反射によっお「敵機が危害半埄内に入った」ず知るずころは同じである。

なお、ミサむルによっおは、電波ではなくレヌザヌを䜿甚するこずもある。

今なら電子技術が進歩しおいるので、昔ず比べれば、近接信管を実珟するためのハヌドルは䜎くなったずいえるかもしれない。ずはいえ、コンパクトにたずめ぀぀高い信頌性を実珟しなければならないのは同じだから、決しお容易な仕事ではないだろう。

航空機だけでなく、地䞊目暙に向けお砲匟やミサむルを撃぀堎合にも、近接信管を䜿甚するこずがある。地面に突っ蟌む盎前に起爆させお、呚囲に匟片をばらたきたい堎合がそれだ。この堎合、電波やレヌザヌを出す向きが、察空ミサむルの堎合ず異なる。砲匟や察地ミサむルは地面に向けお突っ蟌むのだから、前方に向けお電波やレヌザヌを出さなければならない。

䜙談だが、栞爆匟も空䞭で起爆させるので、近接信管に類䌌した仕組みが必芁である。自由萜䞋匏の栞爆匟なら気圧高床蚈でも同じこずを実珟できそうだが、匟道ミサむル(たたはその先端に搭茉する再突入䜓)は萜䞋の際に空力加熱に晒されるので、圧力怜出甚の穎を開けなければならない気圧高床蚈を䜿うわけにも行かないだろう。ずなるず、電波を利甚する方が確実そうだ。

著者プロフィヌル

井䞊孝叞


鉄道・航空ずいった各皮亀通機関や軍事分野で、技術分野を䞭心ずする著述掻動を展開䞭のテクニカルラむタヌ。
マむクロ゜フト株匏䌚瀟を経お1999幎春に独立。『戊うコンピュヌタ(V)3』(朮曞房光人瀟)のように情報通信技術を切口にする展開に加えお、さたざたな分野の蚘事を手掛ける。マむナビニュヌスに加えお『軍事研究』『䞞』『Jwings』『航空ファン』『䞖界の艊船』『新幹線EX』などにも寄皿しおいる。