Googleは6月30日、[画像生成AI「Nano Banana 2 Lite」と、動画生成AI「Gemini Omni Flash」]を公開しました。Nano Banana 2 Liteはテキストから画像を約4秒で出力し、1K解像度の画像1枚あたり0.034ドル、日本円でおよそ5円という速さと安さがメリットです。→過去の「柳谷智宣のAIトレンドインサイト」の回はこちらを参照。

Gemini Omni Flashはテキストや画像、動画を入力し、自然言語で会話しながら動画を生成できるモデルで、価格は動画1秒あたり0.10ドル、10秒のクリップでおよそ1ドルです。この2つを組み合わせれば、Nano Banana 2 Liteで作った画像をGemini Omni Flashに渡して動画化することもできます。

速くて安い分、高性能なNano Banana 2やNano Banana Pro、Veo 3.1などにはクオリティでかないません。それでも、ビジネスで活きるシーンはあります。今回は、実際にNano Banana 2 LiteとGemini Omni Flashを使って作品を生成してみました。ビジネスシーンでの活用方法も紹介します。

  • 柳谷智宣のAIトレンドインサイト 第31回

    6月30日、画像生成と動画生成の軽量モデルが公開されました

画像のNano Banana 2 Liteと動画のGemini Omni Flashがお目見え

Nano Bananaは、いまや用途に合わせて使い分けるファミリーへと広がっています。速度と量産に向くLite、性能とコストのバランスがよいNano Banana 2、高精度で複雑な指示に対応できるNano Banana Proの3つがあり、作りたい画像に合わせて選び分けます。

世に出す1枚の完成画像の場合、数円を節約することに意味はありません。本番の画像なら、単価が高くても品質で勝るProを選べばいいのです。

安さと速さのメリットが出てくるのは、検証や量産の工程です。1枚が4秒、約5円で生成できるなら、案を絞り込む前に構図やシーンをいくらでも試せます。

広告バナーの色違いや訴求ポイントの違いを一気に並べて反応を見たり、SNS投稿の下書きを大量に用意したりできます。長いシーンの絵コンテを高速に起こしたり、市場ごとに文言を差し替えたローカライズ版を作るといったことも可能でしょう。

どれも1枚あたりの単価と待ち時間がそのまま積み上がる作業で、ここが安く速いほど試せる幅が広がります。1回ごとにコストを気にして数案から選ぶのと、気にせず大量の案から選ぶのとでは、最終的に採用する1枚の質が変わります。

動画生成のモデルはGemini Omni Flashです。テキストや画像・動画・音声を同時に扱うネイティブなマルチモーダル構成を採用しています。出力は720pで最長10秒のクリップ、価格はVeo 3.1 Fastと同じ動画1秒あたり0.10ドルに設定されています。環境音やセリフの同期、背景音楽まで映像の文脈から自動で作られ、あとから別ツールで足す必要はありません。

Gemini Omni Flashのポイントは、動画制作を「一発勝負の生成」ではなく、「会話しながら直す作業」に近づけていることです。たとえば、商品の画像を渡して「手に取って回している動画にして」と指示すれば、静止画を10秒程度の短い動画にできます。

さらに、仕上がりを見てから「もっとゆっくり寄って」「背景を暗くして」などと追加で頼めるため、動画編集ソフトを細かく操作しなくても、ラフな動画案を作り込めます。完成度を極限まで追う本番映像を仕上げるより、広告案やSNS投稿、店頭用の短い動画を素早く試すといった用途に向いています。

  • 柳谷智宣のAIトレンドインサイト 第31回

    1秒0.1ドルで動画を生成できるGemini Omni Flash

ウイスキーのボトルを多数のシーンで量産する

それでは、ウイスキーのマーケティングをテーマに、実際に素材を作成してみましょう。Nano Banana 2 LiteはGeminiアプリやGoogle検索のAIモードなど一般向けにも展開されていますが、アプリ側は画像生成に使うモデルを名指しで固定しづらく、Liteだけを狙って使うには向きません。

モデルを指定してまとめて作りたいときは、ブラウザ上でGoogleの各モデルを直接選べるGoogle AI Studioを使うとよいでしょう。プログラミングの知識がなくても操作でき、使った分だけ支払う従量課金で利用できます。新しいプロンプト画面を開き、モデル選択で「Nano Banana 2 Lite」を選び、名指しで動かせます。

今回は自社ブランドのボトルをiPhoneで撮影した写真を1枚だけ用意し、それをさまざまなシーンに置いた画像を量産してみます。まずAI Studioにボトルの写真をアップロードして参照画像として読み込ませ、ボトルは変えずにシーンだけを差し替えるプロンプトを入力します。

  • 柳谷智宣のAIトレンドインサイト 第31回

    「Nano Banana 2 Lite」モデルを選び、参照画像をアップロードし、プロンプトを入力します

たとえば「この参照画像のボトルをそのままに、夕暮れの砂浜の流木の上に置いたリアルな写真」といった具合です。「Run」ボタンを押すと、すぐに画像が返ってきます。公式情報では4秒となっていますが、実際は5~6秒かかりました。

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    6秒ほどで参照画像を取り込んだリアルな画像が生成されました

1K解像度とはいえ、なかなかのクオリティの画像が生成されて驚きました。この速度でまともな画像が生成できるのはやはりすごいです。ただ、ディテールが弱く、文字化けします。

そこで「Thinking level」という設定を「Minimal」から「High」にして生成してみました。時間はちょうど倍、10~12秒ほどかかります。しかし、クオリティは上々です。文字化けも抑制されています。

  • 柳谷智宣のAIトレンドインサイト 第31回

    「Thinking level」を「High」にして再生成しました。十分なクオリティです

1枚の生成コストは同じですが、推論コストは「High」の方が大きくなります。とはいえ、入力トークンが100万トークンあたり0.25ドル、出力テキストと思考トークンが100万トークンあたり1.50ドルなので、ほぼ無視できる価格です。

ここからがNano Banana 2 Liteの真骨頂です。コストを考えずに、プロンプトのシーン部分だけを書き換えて次々と生成していきます。オーセンティックバーのカウンター、雪山の山小屋、書斎の机、火星の赤い荒野に立つ火星人の手元など、思いつく限りのシーンを試しました。

生成された画像を横に並べ、いい感じの出力をチェリーピッキングします。うまくいかないシーンは、同じプロンプトで数回引き直したり、語順を入れ替えたりすると歩留まりが上がります。

  • 柳谷智宣のAIトレンドインサイト 第31回

    余計なロックグラスが映り込んでしまったら、プロンプトで再調整します

  • 柳谷智宣のAIトレンドインサイト 第31回

    商品をアピールするのにどんな画像がマッチするでしょうか

選んだ画像をGeminiのウェブUIで動画にする

次は動画生成にチャレンジしてみましょう。今回選んだのは、火星人がボトルを手にした遊びのある1枚です。動画化にはGemini Omni Flashを使いますが、AI Studioでは何度試しても動画生成がサーバ側のエラーになってしまいました。

公開直後のプレビュー版で動作が不安定なようで、ここは深追いせず、Gemini Omni Flashが標準で使えるGeminiのウェブUIに切り替えました。GeminiアプリはVeoに代わってOmniが動画生成を担っており、ブラウザからそのまま動画を作れます。追加コストもかかりません。

Geminiのウェブ画面で先ほどの画像をアップロードし、動きを言葉で指示します。今回は「火星人がボトルをこねくり回している」とだけ入力しました。

数十秒待つと、静止画だった火星人がボトルを持ち替えて回し始め、質感のある10秒のクリップになりました。参照した1枚の雰囲気を保ったまま、動きと環境音まで自然に付いてきます。プレビュー版とは思えない仕上がりで、そのままSNSに載せられる水準でした。

  • 柳谷智宣のAIトレンドインサイト 第31回

    Nano Banana 2 Liteで生成した画像をアップロードして、プロンプトを入力します

Gemini Omni Flashの強みは、できあがった動画を会話で直せる点です。「もっとゆっくり寄せて」「光を強めて」「背景を少し暗く」と指示を重ねると、その都度作り直してくれます。単発で最高画質のクリップを作るならVeo 3.1に分がありますが、手元の素材を起点に会話で詰めていく今回のような使い方では、この会話型の編集が効いてきます。

ここでは「最後の火星人の顔のアップ、瞳にウイスキーのボトルが映り込んでいるようにしてください」と追加指示を出してみました。

ただし、契約しているプランにもよりますが、サブスク内で生成できる本数は限られています。やはり、ビジネスで生成しまくるなら、APIで利用したほうがよいでしょう。

また、販促に使う場合、生成AIで作った、ということは隠せないので注意してください。Nano Banana 2 LiteとGemini Omni Flashで作った画像や動画には、AI生成であることを示す不可視の電子透かしSynthIDが、プランや設定にかかわらず、すべてに付与されます。

APIにも透かしを外す設定はなく、意図的な除去や改ざんは利用規約違反にあたるため、付いたまま使うのが前提です。

この2つの軽量モデルが活きるのは、クオリティはそこそこでも数を大量に試す場面です。ビジネスに活用するなら、少数の本番素材を作り込む場面よりも、数を打つほど成果につながる施策が向いています。

たとえば、キャンペーンサイトでユーザーが好きな背景やテイストを選ぶと、自社商品を入れたオリジナル画像を自動生成し、そのままSNSで共有してもらう。店舗やイベントで来場者ごとに違う記念画像を作る。地域別、季節別、ターゲット別に広告案を何十通りも作り、反応のよいものだけを本番に回す。これらの「大量チャレンジ」が前提の企画では、安くて速いNano Banana 2 Liteと、画像をすぐ動画にできるGemini Omni Flashの組み合わせが効いてきます。

アイディア次第で色々な活用ができそうです。何はともあれ、コストも安いのでまずは試してみることをおすすめします。