2022年から爆発的に広がっている第四次AIブームはとどまることを知りません。毎日のように新サービス・技術が登場し、大手のプロダクトも頻繁にアップデートが繰り返されています。本連載では生成AIを中心に、今注目すべきAIのサービス/ソフト/ハードなどのレビューやニュース、インタビュー、イベントレポートなどを紹介します。→過去の「柳谷智宣のAIトレンドインサイト」の回はこちらを参照。

「ChatGPT Pro」は長文の作成能力がダントツ

2024年12月にリリースされたChatGPT Proは月額200ドルながら、高性能なo1 Pro modeを利用できるので多くのユーザーが利用しています。OpenAIの予想以上に利用されており、CEOのサム・アルトマン氏はChatGPT Proサブスクリプションは赤字だとXに投稿しました。

推論性能が高く、コードを書いたり、理工学系の問題を解くのが得意です。筆者としては、長文の作成能力がダントツに上がったと感じています。性能がいいうえ、出力できるトークン数が多いのです。今回は、ChatGPT Proの効果的な活用方法を紹介します。

1万6000文字の面白いラノベが5分で生成できる

長文を書けるとなると、まず思い浮かぶのが小説だという人も多いでしょう。筆者もいろいろと試していますが、なかなかのレベルです。実際に試してみましょう。まずは、プロットを入れる必要がありますが、これもChatGPTに考えてもらいましょう。

「転生物のプロットを考えてください」と1行だけ入れて、出力をコピーします。英雄に転生しようと思ったら魔王だった、というパターンの物語です。

AIモデルのメニューからChatGPT o1 proを選び、プロットをペースト。プロンプトは、1章だけを2万文字で書くように指示しました。あまり軽いと読みにくいので、トーンの希望を入れています。それ以外、小説の内容に関するコントロールはしていません。

4分18秒後、1万6378文字の小説が生成されました。人はAIが生成したエンタメと知ると興味を失う傾向にありますが、それでも筆者はさらっと全文読み切ってしまいました。数箇所変な記述もあるのですが、それ以外はなかなかレベルが高いと思います。

実際、面白かったですし、続きが読みたくなりました。これは人の好みなので、皆さんも読んでみてください。こちらのリンクから出力を確認できます。やり直しや修正なしで、さくっと一発で出したものです。

もちろん、最初からアクションシーン全開で書いてほしいとか、美少女を登場させてほしいとか、スライムに転生させたい、などという要望があれば、プロンプトに入れればいいだけです。

このまま2章を続けて出そうとすると、トークンが足りず細切れになります。そのため、別セッションで1章を読み込ませ、続きを書かせるようにして2章を生成させてみました。こちらも、なかなかに面白かったのですが、やや1章の内容とテイストが異なる部分があり、この後の章も含めトータル10万文字を生成する際に整合性を取るには工夫が必要になるでしょう。

  • プロンプト
  • 柳谷智宣のAIトレンドインサイト 第3回

    「AIが社会に浸透する中で、今後新たに登場するであろう職業を予測し、リアリティのあるものから5つ、具体的に根拠とともに解説してください」と聞いてみました

  • 出力

第1章 終わりと始まり
佐藤明人--二十九歳。大学を卒業して以来、地元の市立図書館で司書として働いていた。もともと目立った特技もなく、成績も中の上くらい。就職活動もうまくいかず、ようやく見つけた職場が今の図書館だった。だが、彼にとってその仕事は「天職」と呼べるものだった。
読書好きな性格ゆえに本に囲まれていると落ち着いたし、人付き合いが苦手でありながらも図書館の静かな空間なら、それほど気を張らずにすむ。忙しい時期は利用者の対応に追われるが、それ以外の時間は書架の整理に没頭できる。誰にも邪魔されることなく、ただ本を並べ替え、背表紙のタイトルを眺めていれば、時間などあっという間に過ぎてしまう。ある意味で極めて平凡な日常だったが、彼にとっては心の安らぎと小さな誇りがあった。以下、略。

頭が固くなって陰謀論を信じ始めたらChatGPT Proにほぐしてもらおう

ChatGPTと文字でやり取りをした後、それまで陰謀論を信じていた人たちが、その考えを改めるケースが増えているという研究結果が出ています。

人と人との議論では頑固に譲らなかった考えも、AIとの対話では恥ずかしい思いをせずに済むためか、より柔軟に見直せるようです。AIとの対話が社会の分断を和らげる可能性があるのはポジティブなポイントだと思います。実際に試してみましょう。

ここでは、部活の練習中に水を飲ませないほうが強くなる、という昭和の根性論を信じていると仮定して、ChatGPTに聞いてみました。自分が信じていることを詳しく書き、そのうえで「どう思いますか?私が間違っている場合、具体的にわかりやすく教えてください」と入力してください。

「私は間違ってないですよね?」などと書くと、ChatGPTが寄り添ってしまう可能性があるためです。なんなら「論理的に反論してください」と書いて、反対意見を読むことも効果的です。

時代背景から現代スポーツ科学、誤解の理由、どう指導すればいいのか、など論理立てて、誤解がとけるように説明してくれました。特に「耐え抜いた人だけ残った」という選抜バイアスであるというところに納得しました。

もし、自分が陰謀論的なものにこだわっていて、友人や世間と意見がズレているなと感じ始めたら、他社を攻撃する前にChatGPTと対話してください。誰にも知られず、改善できる可能性があります。

  • プロンプト

私は陸上部の顧問をしています。昔は練習に水を飲むのは禁止されているのに、今は熱中症対策などで飲ませるように指導されます。昔は飲まずに頑張り、皆強くなっていったのに、今は水を飲みまくって甘やかされるので、結果が出せないと思います。どう思いますか?私が間違っている場合、具体的にわかりやすく教えてください。

  • 出力
  • 柳谷智宣のAIトレンドインサイト 第3回

    陰謀論的なものに対しても的確に指摘してくれる

出力共有リンクはこちらです。

マルチモーダル対応のChatGPT o1 Proは画像も解析できる

ChatGPT o1 Proが画像のアップロードに対応しました。試しに、たくさんの淡水魚が入っている水槽の写真を分析させて、魚の種類を聞いてみます。ChatGPT 4oではコリドラス、クーリーローチ、グラミー、テトラ、モーリーと答え、左下の魚はプレコと判断しました。

  • 柳谷智宣のAIトレンドインサイト 第3回

    画像解析能力もChatGPT 4oを超えています

ChatGPT o1 Proは流石の分析力でした。複数のコリドラスを認識し、アルピノも検出。左下の魚は判別しにくいとしつつもラファエルキャットと正解しています。ローチもクラウンローチと正解し、オレンジのプラティ、ネオンテトラ、グラミーも正解です。魚の陰に隠れ一部しか見えていないプレコは見逃したようです。

公開されているレオナルド・ダ・ヴィンチのフォースター手稿から、幾何学に関するページを読み込ませたところ、2分25秒で解析しました。出典を正解したうえ、どんな内容が書いているのか、分析してくれています。ダ・ヴィンチの一般的な解説も含んでいますが、きちんと画像の内容を押さえた解説をしてくれています。

もしレスポンスが改善されるか、「o1-mini」で画像をアップロードできるようになれば、撮影OKの博物館や美術館で展示物をChatGPTに読み込ませて解説して欲しくなるくらいです。PDFやExcelなどのアップロードはまだできないので、“なるはや”の対応が期待されます。

  • 柳谷智宣のAIトレンドインサイト 第3回

    レオナルド・ダ・ヴィンチのフォースター手稿を読み込ませて解説してもらいました

以上が、「ChatGPT Pro」のo1 Pro modeレビューとなります。長文生成能力も画像解析能力も最高峰なのは間違いありません。生成に時間がかかるので、筆者は他の作業を進めつつ、o1 Pro modeを裏側で走らせるという使い方をしています。筆者はまるで火を得た猿のように使い倒しており、もう手放せなくなってしまいました。月額200ドルは高いですが、きちんと使えば、それ以上の価値を得られること請け合いです。