2022年から爆発的に広がっている第四次AIブームはとどまることを知りません。毎日のように新サービス・技術が登場し、大手のプロダクトも頻繁にアップデートが繰り返されています。本連載では生成AIを中心に、今注目すべきAIのサービス/ソフト/ハードなどのレビューやニュース、インタビュー、イベントレポートなどを紹介します。→過去の「柳谷智宣のAIトレンドインサイト」の回はこちらを参照。
2年前、生成AIは学習時点までの情報しか持っていないので、最新情報は扱えないということが常識でした。
しかし、ナレッジカットオフ(モデルが学習したデータの最終更新日)のタイミングはどんどん更新されてAIは最新情報を持つようになり、さらには自ら検索してリアルタイムに情報を調べることもできるようになりました。ChatGPTもWeb検索機能を備えています。しかし、それとは別に検索に特化した生成AIサービスも登場しています。
「Perplexity」や「Genspark」などがありますが、2024年7月に日本のAIスタートアップであるSparticleが「Felo」をリリースしました。もちろん、日本語で利用できるAI駆動の検索エンジンで、リリースから1カ月で15万ユーザーを獲得しました。
調べ物で「Felo」を使うと、Google検索より早く、目当ての情報を得られる可能性が高く、作業効率がアップします。
これまでであれば検索しまくって集めていた情報も、Proサーチなら一発で収集できます。今回は、調べ物に最適な国産の検索特化型生成AIサービス「Felo」の活用方法を紹介します。
有料プランなら高機能なプロフェッショナル検索が1日300回使える
Feloのスタンダードプランは無料で無制限に利用でき、高機能なプロフェッショナル検索も1日5回まで体験できます。誰でも気軽に検索特化型AIを試せるのは、うれしいところです。
有料のProプランも用意されており、プロフェッショナル検索を1日300回利用できます。Claude 3.5 Sonnetといった高性能なAIモデルを選択でき、ファイルのアップロードやパワーポイント作成、Felo Chatなども利用可能です。月額2099円で、年額プランは2万998円で月額当たり1750円と16%の節約となります。また、年額プランユーザーは新機能を優先して体験できるとのことです。
「ユーザー設定」画面からはAIモデルを変更したり、パーソナライズのための指示を入れておくことができます。また、仕事で利用するのであれば、「設定」→「AIデータ保持」のスイッチはオフにしておくといいでしょう。オンになっているとユーザーが入力したプロンプトなどをAIモデルを改善するために利用されてしまうためです。
ページ遷移なし、広告なしで目当ての情報をしっかりと出してくれる
初めて見る単語の意味を調べる場合、「~とは?」と付けて検索することでしょう。例えば「AIガバナンス・プラットフォームとは?」とGoogle検索すると、なかなか目当ての情報が見つかりません。しかし、Feloに聞けば一発でバッチリと回答してくれます。
生成AIはハルシネーションと呼ばれる誤回答が怖いのですが、出力結果から出典を確認できます。出典先のウェブページを開くこともでき、すぐにファクトチェックが可能なため手間がかかりませんし、安心できます。ちなみに、この場合、20のウェブページをソースとしていました。
手動でGoogle検索する場合、何度も行ったり来たりする必要がありますし、中には意味のないサイトもあります。さらには広告が表示されたりして、目当ての情報が探しにくいこともあるでしょう。検索特化型生成AIはこれらの手間を省けるのも大きなメリットです。
画面右下には、関連画像と関連動画の検索結果も表示されます。確かに関連する画像・動画が出ることもありますが、関係ないものが出てくることも多いです。また、著作権などはチェックしていないので、勝手にダウンロードして使いまわすことは避けましょう。
SNS検索や論文検索など検索対象を選べるほか強力なディープサーチも使える
検索対象を通常のWeb検索以外にすることも可能です。虫眼鏡アイコンをクリックすると、「チャット」「SNS検索」「論文検索」「X」など8つのカテゴリーを選べます。筆者もGoogle検索で見つからない場合、Xで追加検索することも多いのですが、Feloであればそのまま調べられるので手間がかかりません。
例えば、プロンプトエンジニアリングについての最新の研究をいくつか教えて、と普通に検索しても、Few-shot promptingなど基本の手法を列挙し「プロンプトの最適化はAIモデル自身が行うのが最も効果的である」といったインサイトはごく僅かでした。
しかし、論文検索を行うと、40の論文をチェックし、医療分や教育、ビジネスなどの分野での研究について触れたうえ、最新の研究結果も教えてくれています。それぞれの研究内容については詳しく触れていませんが、リンクが付いているのですぐに原典を確認できるのも便利です。
さらに、12月にはFelo Pro 2.0がお目見えし、「ディープサーチ」という機能を利用できるようになりました。3段階で深掘り検索し、多彩な情報ソースを参照しながら、クオリティの高い出力を生成してくれるのが特徴です。回答精度は7%向上するとのことです。
試しに、AI時代に生まれる職業について質問してみました。
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出力
説明を読むと、基本的な回答であるクイック検索の1から4はほぼ同じ職種について言っているように感じました。
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クイック検索:52のソース
1. AIエチケット専門家
2. 感情分析カウンセラー
3. AIトレーナー
4. データエンジニア
5. AIとの共生コーディネーター
ProはClaude 3.5 Sonnetを利用して回答していたので、職業名も説明もそれっぽかったです。しかし、カウンセラーとマネージャーはイマイチピンときませんでした。
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Pro:51のソース
1. AIエシックスコンサルタント
2. AI-人間協働マネージャー
3. デジタルウェルネスカウンセラー
4. AIシステム監査専門家
5. デジタルクローンマネージャー
ディープサーチは流石です。ソースの数も多いですし、納得の職業を挙げてくれました。
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ディープサーチ:65のソース
1. AIプロンプトエンジニア
2. AI倫理専門家
3. データキュレーター
4. AIトレーナー
5. AIコンテンツクリエイター
Notion連携、マインドマップ作成、プレゼンスライド作成
出力の下には、コピーや共有、書き直しなどのメニューが並んでいますが、ここに「Notionに保存」や「マインドマップ」という項目があります。
「Notionに保存」をクリックすると、オールインワンワークスペースサービス「Notion」にデータベースを作り、リンクやクエリを追加できるのです。自分の全情報をNotionで管理している人にはぴったりです。
「マインドマップ」をクリックすると出力の内容をもとに、すらすらとマインドマップを生成してくれます。とてもクオリティが高く、何なら文章よりも理解しやすいのでお役立ち度が高いです。ぜひ試してください。
そして、出力の右上にある「プレゼンテーションを生成」をクリックすると、マインドマップの内容を元にプレゼンスライドを作成してくれます。試しに、Feloの魅力を伝える資料を作ってもらったのですが、なかなかのクオリティです。
文章が入ると文字が小さくなりますが、個別修正で何とかなるレベル。もし、他のプレゼンスライド生成AIを使っていないなら、ありがたい機能となるでしょう。
オリジナルのRAGを構築できる「トピック集」
「トピック集」ではFeloの出力をカテゴリ分けできる機能です。しかも、文書ファイルやリンクを追加し、自分のためだけのRAG(検索拡張生成)として利用することも可能です。文書ファイルは50個まで、1ファイルあたり25MBまたは500ページ以内となかなかのボリュームを扱えます。リンクは10個までとこちらはもう少し欲しいところです。
Feloでの出力の左上にある「トピックに追加」をクリックし、任意のトピックに登録できます。この情報もRAGの対象となります。
試しに、プロンプトエンジニアリング関連の論文PDFやAIサービスが出しているプロンプトエンジニアリングガイドのウェブサイトを登録し、質問したところ、確かにRAGのように動作することは確認できました。
以上が、Feloの解説となります。検索特化型生成AIはやはり便利で、これからのGoogle検索がどうなるのか心配になるほどです。Proサーチやディープサーチはとても高性能なので、調べ物をする際の強力な助っ人になってくれることは間違いありません。無料でも十分に利用できるので、まずは試してみましょう。ブックマーク必至です。