今回は、「棒グラフ」+「折れ線グラフ」のように、種類の異なるグラフを組み合わせた「複合グラフ」の作成手順を紹介していこう。Excelには「複合グラフの挿入」というコマンドが用意されているが、このコマンドを使うのではなく、グラフの種類を自分で指定したほうがバリエーション豊かなグラフを作成できる。ぜひ、覚えておくべきだ。

複合グラフの作成コマンド

今回は、以下に示した表を使って、データのグラフ化について考えていこう。

  • グラフの基となる表

この表は、あるショップの「売上高」と「経費」を過去10年間について集計したものとなる。「経費」の部分は、

 ・仕入れに要した費用となる「原価」
 ・賃料や広告費、人件費などの「販管費」(販売管理費)

の2つに分けて集計されている。

これらのデータから知りたい内容は、たいていの場合、(売上高)-(経費)=(利益)となるのが一般的ではないだろうか? 今回の例の場合、(売上高)-(原価)-(販管費)=(利益)というのが大雑把な考え方になる。

これをグラフ化することにより分かりやすく示していこう。まずは、普通に「集合縦棒」のグラフを作成してみると、以下の図のような結果が得られた。

  • 「集合縦棒」のグラフを作成した場合

「売上高」が伸びていることは理解できるが、それ以外はイマイチ内容が伝わりづらいグラフが作成される。このような場合は、「1種類のグラフ」だけでデータを表現しようとするのではなく、「棒グラフ」と「折れ線グラフ」を組み合わせた「複合グラフ」を作成してみるのも一つの手だ。

そこで今度は、Excelに用意されている「複合グラフの挿入」コマンドを使ってグラフを作成してみよう。グラフの形式に「集合縦棒 - 折れ線」を選択すると、以下の図に示したようなグラフが作成される。

  • 「複合グラフの挿入」コマンド

  • 「集合縦棒 - 折れ線」のグラフを作成した場合

確かに、「集合縦棒」と「折れ線」を組み合わせたグラフが作成されているが、今回の事例においては、「何を伝えたいのか理解に苦しむグラフ」になってしまう。なぜ「販管費」だけ「折れ線グラフ」になっているのか、を説明できる理由は見当たらない。

このように「複合グラフの挿入」コマンドを使っても、思い通りのグラフを作成できないケースは多々ある。そこで、「各系列のグラフの種類」を変更して、自分で「複合グラフ」を作成する方法を覚えておくとよい。

系列ごとに「グラフの種類」を変更するには?

「複合グラフ」を作成するときは、最初に「集合縦棒」のグラフを作成するのが基本だ。そして、このグラフをカスタマイズして「複合グラフ」に仕上げていく。順番に操作手順を説明していこう。

「集合縦棒」のグラフを作成できたら、いずれかの系列を右クリックし、「系列グラフの種類の変更」を選択する。

  • 「系列グラフの種類の変更」を選択

すると、各系列の「グラフの種類」を自由に変更できる画面が表示される。たとえば、「原価」の系列だけを「マーカー付き折れ線」に変更するときは、以下の図のように操作すればよい。

  • 「原価」を「マーカー付き折れ線」に変更

同様の手順で「販管費」の系列も「マーカー付き折れ線」に変更し、「OK」ボタンをクリックすると、以下の図に示したような「複合グラフ」にカスタマイズできる。

  • 「販管費」を「マーカー付き折れ線」に変更

  • 作成された複合フラフ

このように「集合縦棒」のグラフをもとにして、各系列の「グラフの種類」を変更していくと、「折れ線グラフ」にする系列を自由に選択できるようになる。

もちろん、通常の「折れ線」ではなく、「積み上げ折れ線」を指定することも可能だ。今回の例の場合、「原価」と「販管費」はどちらも経費になるので、これらは積み上げて示した方が伝わりやすいグラフになる。

もういちど右クリックメニューから「系列グラフの種類の変更」を選択し、以下の図のように設定を変更する。

  • 「原価」と「販管費」を「マーカー付き積み上げ折れ線」に変更

このように設定を変更すると、2種類の経費を「積み上げ折れ線」で示したグラフにカスタマイズできる。

  • 作成された複合フラフ

最後に、グラフの色や文字の書式を調整し、「折れ線グラフ」に影を付けると、以下の図のような「複合グラフ」に仕上げることができる。

  • 書式をカスタマイズしたグラフ

各年の「利益」は(売上高)-(原価+販管費)になるなので、このグラフにおいて「赤色の折れ線」より上の部分が「利益」になる。この点にも注目しながらグラフを見ていくと、売上高は順調に伸びている、利益の割合(利益率)も大きくなっている、ということを把握できるようになる。

ただし、「原価」と「販管費」が「積み上げ折れ線」になっていることが明確に伝わらない可能性があることにも配慮しておく必要がある。もしかすると、「販管費」の折れ線は「積み上げ」ではなく、そのままの数値を示している、と勘違いされる恐れもある。そういう意味では「面グラフ」を使った方が最適かもしれない。

「縦棒」と「積み上げ面」の複合グラフ

ということで、「原価」と「販管費」の系列を「積み上げ面」に変更した例も紹介しておこう。操作手順は先ほどと同じで、右クリックメニューから「系列グラフの種類の変更」を選択し、以下の図のように設定を変更すればよい。

  • 「原価」と「販管費」を「積み上げ面」に変更

  • 作成された複合フラフ

続いて、各系列のグラフの色を調整すると、以下の図のようなグラフに仕上げることができる。

  • 書式をカスタマイズしたグラフ

こちらの方が、各系列のデータを読み間違える危険性は少なくなるだろう。このグラフを見ると、「原価」は「売上高」に応じて少しずつ上昇している、「管理費」はあまり増加していない、「売上高」は年々増加している、ということが読み取れる。さらに、「面グラフ」より上に突き出た部分が「利益」になると考えられるため、利益率が大きく改善されている、といこうとも読み取れる。

「複合グラフ」は「縦棒」+「折れ線」の組み合わせにするのが一般的であるが、状況によっては「縦棒」+「面」の方が適しているケースもある。種類の異なるグラフを自由に組み合わせられるように、この機会にいちど、操作手順を確認しておくとよいだろう。

組み合わせ可能なグラフの種類

最後に、組み合わせが可能なグラフについて補足しておこう。「系列グラフの種類の変更」を使うと「グラフの種類」を自由に指定できるが、指定不可の組み合わせもある。

たとえば、ある系列に「集合縦棒」を指定し、別の系列に「積み上げ縦棒」を指定しようとすると、後から指定した「積み上げ縦棒」にグラフの種類が統一されてしまう。つまり、「集合縦棒」と「積み上げ縦棒」の混在は不可能な仕様になっている。

同様に、「折れ線」と「積み上げ折れ線」を組みわせることも不可能である。基本的な考え方としては、「同じ種類で形式の異なるグラフ」の組み合わせは不可、と覚えておけばよい。

その一方で、かなりトリッキーな組み合わせも可能である。以下の図は、「原価」の系列だけを「集合横棒」に変更した例となる。

  • 「原価」を「集合横棒」に変更したグラフ

「縦」と「横」の棒グラフが組み合わさった、かなり見づらいグラフになるが、このようなグラフも技術的には作成可能である。ただし、実用的な用途は思い浮かばない。

そのほか、「棒グラフ」と「円グラフ」を組み合わせた「複合グラフ」も作成可能となっている。とはいえ、こちらも用途が全く見当たらないグラフといえる。

  • 「原価」を「円」に変更したグラフ

現実的に考えれば、「棒グラフ」+「折れ線グラフ」、もしくは「棒グラフ」+「面グラフ」で複合グラフを作成するのが基本といえるだろう。これらの作成方法を十分に習得しておけば、グラフ作成の幅が広がるはずだ。