「入場者数」と「売上」のようにスケールの異なるデータを1つのグラフで表現するときは、「第2軸」を使って複合グラフを作成するのが一般的だ。そこで今回は「第2軸」を使った複合グラフの作成ポイントを紹介していこう。「第2軸」の使用そのものは難しくないが、見た目よく目盛線を表示するには工夫が必要となる。

第2軸を使った「複合グラフ」の作成

今回は、以下に示した表をグラフ化する場合について考えてみよう。

  • グラフの基となる表

この表は、ある施設における各月の「入場者数」と「売上」をまとめたものだ。一般的には、「入場者数」が増えるほど「売上」も増えていくはず、と考えられるが果たしてどうであろうか? グラフ化して検証してみよう。

前回の連載でも紹介したように、まずは「集合縦棒」のグラフを作成する。続いて、いずれかの系列を右クリックし、「系列グラフの種類の変更」を選択する。

  • 「系列グラフの種類の変更」の呼び出し

今回は「入場者数」を折れ線グラフで示したいので、「入場者数」のグラフを「マーカー付き折れ線」に変更し、「OK」ボタンをクリックする。

  • 「入場者数」を「マーカー付き折れ線」に変更

これで「縦棒グラフ」+「折れ線グラフ」の複合グラフに変換できる。ただし、作成されたグラフは以下の図のようになってしまう。

  • 作成された複合フラフ

「入場者数」を示す「折れ線グラフ」が地を這うように描画されてしまい、グラフとしての意味をなしていない。

それもそのはず。「売上」のデータは数百万という規模のスケールになるのに対して、「入場者数」は数千程度のスケールしかない。よって、「折れ線グラフ」が地を這うように描画されるのは、当然の結果といえる。

このような場合はグラフの右側に「第2軸」を設けて、それぞれの系列を別の縦軸で示してあげるとよい。もういちど「系列グラフの種類の変更」を開き、「入場者数」の系列の「第2軸」をONにする。

  • 「第2軸」を使って「入場者数」を描画する場合

すると、グラフが以下の図のように変化し、「売上」だけでなく、「入場者数」についてもデータ推移をグラフで確認できるようになる。

  • 作成された複合フラフ

このように「スケールの異なるデータ」を複合グラフで示すときは、「第2軸」を活用するのが一般的な解決法となる。

なお、「第2軸」を使うときは、「左右それぞれの軸が何を示しているのか?」を明確にするために「軸ラベル」を表示しておくのが基本だ。この操作は、「グラフ要素」のアイコンをクリックし、「軸ラベル」のサブメニューから「第1縦軸」と「第2縦軸」をONにすると実行できる。

  • 「軸ラベル」の追加

続いて、左右の「軸ラベル」に文字や単位を入力すると、複合グラフの基本形が完成する。

  • 「軸ラベル」に文字を入力

あとは各自の趣向に合わせて、「グラフの色」や「折れ線の書式」、「影の有無」などをカスタマイズしていくだけ。今回は、以下の図のようにカスタマイズを施した。

  • 書式をカスタマイズしたグラフ

このグラフを見ると、おおよそ「入場者数」の増減にあわせて「売上」も増減している、ということを確認できる。

さらに細かく見ていくと、7月と8月は「入場者数」が多いにも関わらず、「売上」はそれほど増えていない、ということを把握できる。この2カ月のみ、「棒グラフ」より上に「折れ線グラフ」が位置しているのを見て取れるだろう。

第2軸の目盛線の表示

続いては、各軸の「目盛線」に注目してみよう。先ほど作成した複合グラフをよく見ると、

 ・第1軸(左側の縦軸)には「目盛線」が表示されている
 ・第2軸(右側の縦軸)には「目盛線」が表示されていない

ということに気付くと思う。このままでは「入場者数」の数値を読み取りにくいので、第2軸にも「目盛線」を表示してみよう。この操作は、「グラフ要素」のアイコンをクリックし、「目盛線」→「第2主横軸」の項目をONにすると実行できる。

  • 目盛線の表示設定

これで「第2軸」にも「目盛線」を表示できる。しかし、その結果は以下の図のようになり、以前よりも数値を読み取りづらいグラフになってしまう。

  • 「第2軸の目盛線」も表示したグラフ

この例のように「目盛線」の数が多すぎると、かえって数値を読み取りづらいグラフになってしまう。この問題を解決するには、左右の軸で「目盛線」を共通化するように工夫しなければならない。

目盛線を共通化するには?

続いては、目盛線を共通化する方法について解説していこう。現状において、2つの軸の「目盛線」は次のような状況になっている。

(第1軸)
  範囲は0~900万円
  100万円単位で「9つに区分」

(第2軸)
  範囲は0~6,000
  1,000単位で「6つに区分」

ここでポイントとなるのは、各軸が目盛線で「いくつに区分されているか?」である。この区分数を統一できれば、2つの軸の目盛線を共通化することが可能となる。

まずは「第2軸」を調整する方法から紹介していこう。「第2軸」を右クリックし、「軸の書式設定」を選択する。

  • 「軸の書式設定」の呼び出し

現在、「第2軸」は6つに区分されている。これを「第1軸」と同じ9つに区分するには、「最大値」を9,000に変更すればよい。

  • 「最大値」の変更

すると、左右の軸とも「目盛線」が9本になり、「目盛線」を共通化することが可能となる。

  • 目盛線を共通化したグラフ(1)

これでグラフの数値を読み取りやすくなるが、その一方で別の問題が発生する。それは「折れ線グラフ」の位置が変化したことにより、「入場者数」と「売上」の関係を把握しにくくなることだ。

上記のグラフだけを見た場合、7月と8月は「入場者数」の割に「売上」が少ない、という状況を把握できない恐れがある。これでは、せっかくグラフを作成した意味がなくなってしまう。よって、最善の解決策とはいえない。

続いては、「第1軸」を調整した場合の例を紹介していこう。「第1軸」を右クリックし、「軸の書式設定」を選択する。

  • 「軸の書式設定」の呼び出し

現在、「第1軸」は0~900万の範囲で9つに区分されている。この「最大値」を維持したまま「第2軸」と同じ6つに区分するには、「単位」(主)を150万に変更すればよい。

  • 単位(主)の変更

すると、左右の軸とも「目盛線」が6本になり、「目盛線」を共通化することが可能となる。

  • 目盛線を共通化したグラフ(2)

こちらの方法を選択した場合は、「折れ線グラフ」の位置は変化しない。よって、7月と8月は「入場者数」の割に「売上」が少ない、という状況を把握することが可能である。つまり、こちらの方がベターな解決策になると考えられる。

このように「第2軸」を使ったグラフでは、各軸の「最大値」、「最小値」、「単位」をどのように調整するかが重要なポイントとなる。その調整方法に応じて「グラフの見た目」は大きく変化する。

このことを念頭に「グラフを使って何を表現したいのか?」をよく考えながら、各軸の数値を調整していく必要がある。状況によっては、「目盛線」の共通化を諦めなくてはならないケースもあるかもしれない。

今回の連載で紹介した「目盛線の共通化」は絶対に行わなければならない作業ではなく、「グラフの目的に応じて可能であれば・・・」という考え方のもと、作業を進めていくとよいだろう。