ヴイエムウェアは5月20日、5月5日に発表した「VMware Cloud Foundation(VCF)9.1」の概要を説明した。AIワークロードの増加やインフラコスト高騰を背景に、“モダンプライベートクラウド”の強化を打ち出した。
ITインフラの再定義が必要、その答えがモダンプライベートクラウド
ヴイエムウェア Broadcom カントリーマネージャの山内光氏は、日本企業を取り巻く環境について、不確実な経済情勢や労働人口の減少、経済安全保障の強化、AI活用の進展、サイバーセキュリティリスクなどが重なっていると説明した。
同氏は、こうした状況を踏まえ、「ITインフラストラクチャの再定義が必要」と指摘。そのうえで、変化への柔軟性や自動化、セキュリティ、コスト管理を両立できる基盤として、“モダンプライベートクラウド”の重要性が高まっているとした。
さらに同氏は、モダンプライベートクラウドについて、パブリッククラウドの俊敏性やスケーラビリティと、データセンターのセキュリティや主権性を組み合わせた「両方の長所を融合するもの」と位置付けた。
「AIはプライベートクラウドへ」VCF 9.1の狙い
Broadcom VCF部門 製品担当バイスプレジデントのポール・ターナー氏は、VCF 9.0が12カ月以内に2000以上のユーザーに導入され、1900万コア以上に展開されたと説明した。
同氏は、1800人以上のITプロフェッショナルを対象に実施した調査を紹介し、「56%が新規AIワークロードの展開先としてプライベートクラウドを優先している」と説明した。
その背景について、同氏はAIが実験用途から業務利用へ移行していることを挙げた。特にエージェントAIの普及により、企業システムとの連携や、大規模運用、コスト管理、セキュリティ対策が重要になっているという。
また、同氏は次世代のインフラの要件として、「大規模環境における効率的なインフラと運用」「高速なアプリケーションデリバリー」「サイバーレジリエンスとデータセキュリティ」を挙げた。VCF 9.1はこれらの要件を満たしている。
「AIはコストが高いが、CPUやGPUなどの仮想化によってインフラコストをコントロールできる。エージェントAIを使うようになると、アプリケーションは増えていくが、アプリが増えるが、マネージドのKubernetesを提供することで、コスト効果の高い形でアプリケーションをデリバリーできるようにする」
また、GPUやCPUを仮想化しながらAIワークロードを実行できる点や、ソブリンクラウド環境でAIを利用できる点もVCFの強みとして挙げた。
VCF 9.1、AI時代の運用・コスト・セキュリティを強化
ターナー氏は、VCF 9.1の注目すべき機能として、NVMe階層化、CaaSのデプロイ、ゼロダウンタイムパッチを紹介した。
NVMe活用でサーバコスト最大40%削減へ
VCF 9.1では、NVMeを活用したメモリ階層化機能を強化した。DRAMとNVMeを組み合わせることで、サーバの総コストを最大40%削減できるという。
同氏は、近年のメモリ価格高騰を背景に、コスト効率の高いハイブリッド型メモリ構成の重要性が増していると述べた。
NVMe利用による性能への影響については、トランザクションベースのベンチマークでは遅延増加は5%未満だったという。vCenterから設定可能で、専用カードを追加するだけで導入できる点も特徴としている。
CaaSのデプロイで運用コストを低減
VCF 9.1では、コンテナ実行環境やAI向け運用監視機能も強化した。
新たにCaaS(Container as a Service)機能を提供し、仮想マシン、vSphere Pod、Kubernetesクラスタ(VKS)を単一プラットフォーム上で利用できるようにした。ターナー氏は「3つの選択肢を持てるようになる」と語った。
また、AI向けオブザーバビリティ機能も追加。トークン/秒やKVキャッシュ利用率、エージェント数、MCPサーバ数などをリアルタイムで監視できる。これにより、AIモデルのボトルネック分析やチューニング、本番環境での継続的運用を支援する。
ヴイエムウェア 執行役員 ソリューションアーキテクト本部 本部長の塩﨑崇氏は、「AIもプライベートで実行できる環境を提供できる点が強み」と述べ、従来の仮想マシンとAI/コンテナワークロードを共存できる点をアピールした。
ゼロダウンタイムパッチとサイバーリカバリを強化
セキュリティ機能としては、ライブパッチとクイックパッチによるゼロダウンタイムパッチ適用を拡張した。VMware ESXおよびvCenterに対し、クリティカルなセキュリティパッチを停止時間を最小限、またはゼロで適用できるとしている。
また、サイバーリカバリ機能も強化した。VCF隔離クリーンルーム環境を利用し、AI/MLによるマルウェア検出や、CrowdStrike EDRとの連携による検証を実施したうえで復旧を行える。
塩﨑氏は、「防御だけではなく復旧も重要。セキュリティ設定を含めてシステム全体をパッケージ化し、自動化された復旧を実現する」と説明した。
日本気象協会やJRAも導入、国内で広がるVCF
国内事例として、一般財団法人日本気象協会と日本中央競馬会(JRA)が紹介された。
日本気象協会では、気象データ増大への対応やランサムウェア対策を目的にVCFを導入。パブリッククラウド代替案と比較して最大50%のコスト削減を実現したほか、バックアップ強化によって復旧時間を1週間から数時間へ短縮したという。
一方JRAでは、約130台の物理サーバと8000台の仮想マシンを運用する25の基幹システムを刷新。一晩で2000台の仮想マシンを移行したほか、GPU対応VDIの安定運用やマイクロセグメンテーションによるセキュリティ強化を実現したとしている。




