半導体製造装置の設置や保守を担う世界各地の拠点を、どのように共通の仕組みでつなぐか。KOKUSAI ELECTRICは、工程管理と問い合わせ管理にServiceNowを採用し、グローバル8社、千数百ユーザーを対象に、4言語で展開した。
10月27~28日に開催された「ServiceNow World Forum Tokyo 2026」では、同社 BX推進室 部長代理の土田靖生氏が登壇。少人数かつ短期間で進めた導入の経緯や、拠点をまたぐ情報共有の変化、今後の課題について語った。
拠点ごとに分かれた情報が、エンジニアの適正配置を妨げていた
KOKUSAI ELECTRICは、半導体製造の前工程における成膜などに強みを持つ装置メーカーだ。装置の販売に加え、設置・セットアップや保守、修理、部品販売などのサービスを世界各地の拠点を通じて提供している。
今回のシステム導入では、こうしたサービス業務のうち、装置の設置・セットアップに関する工程管理と、アフターサービスにおける問い合わせ管理が対象となった。設置・セットアップを手掛ける装置は月に数百台に上り、完了まで数カ月を要するケースもある。また、保守や修理などに関する問い合わせも月に数百件発生するという。
事業の拡大に伴い、各拠点での対応だけでなく、国や地域を越えてエンジニアが支援する機会も増えていた。しかし、人員情報や業務の管理方法が拠点ごとに異なるため、グローバルでの稼働状況を把握し、適切に人員を配置することが難しかった。
「拠点ごとに業務やシステムが統一されておらず、個別のファイル管理や、メール、チャットでの連絡が中心になっていました。ノウハウの蓄積や活用もできていない状況でした」(土田氏)
既存のCRMツールにも問題があった。問い合わせを扱うケース管理には利用していたものの、工程管理に必要な要件を満たしていなかったため、その機能は使われていなかったのだ。また、機能やライセンスに見合った活用ができていないことも、解決すべき課題の一つだった。
そこで土田氏は、課題を「人員管理」「業務・情報共有」「ツール」の3つに整理した。人員管理では、エンジニアの稼働状況を可視化し、スキルやスケジュールに基づいて適切に配置できる状態を目指したという。業務・情報共有については、グローバルでの業務標準化と連絡手段の一元化を掲げた。さらにツールの面では、工程管理に必要な機能を実現するとともに、ライセンスコストの適正化を図る方針を定めた。
これらの取り組みを通じて目指す最終目標が、問い合わせ対応の迅速化や柔軟な工程調整による顧客満足度の向上だった。
工程管理にSPM、問い合わせ管理にCSMを採用
同社が選んだのは、ServiceNowの複数の製品を業務ごとに使い分ける構成だ。装置の設置・セットアップにはSPM(Strategic Portfolio Management)、問い合わせ対応にはCSM(Customer Service Management)を採用。周辺システムとのデータ連携にはWDF(Workflow Data Fabric)を利用した。
「当社の業務は、複数の作業工程を数カ月にわたって管理する必要がありました。そのため、SPMを使って、プロジェクト型の工程管理を導入しました」(土田氏)
一方、問い合わせ管理では、既存のCRMツールでグローバルに利用していた機能を維持しながら、CSMへ移行した。あわせて、ライセンスコストの適正化も進めた。
デモ環境と標準機能を活用し、短期間で導入
導入にあたっては、時間的な制約があった。既存のCRMツールの契約更新期限が2025年12月末に迫っており、それまでに問い合わせ管理を切り替える必要があったのだ。工程管理についても、必要な機能の早期実現が求められていた。
対象はグローバル8社、千数百ユーザー、4言語。社内ではBX推進室の3人と業務部門の9人がプロジェクトに参加した。BX推進室のうちIT担当者は土田氏1人で、開発は日立ソリューションズが支援した。土田氏は、自ら担った導入実務を次のように振り返る。
「ソリューションの選定から社内での上申、要件定義、データ移行、稼働直後の年末年始対応まで、私一人で進めました。特にCSMは年末の期限があり、Go Liveの前後は、本当に年を越せるのかと不安でした。日立ソリューションズの担当者と励まし合いながら進めたことは、とてもいい経験になっています」(土田氏)
短期間での検討を後押ししたのが、ServiceNowから提案段階で提供されたデモ環境だった。
「特にSPMは新しい機能でしたが、ガントチャートを使った工程管理のイメージを業務担当者と共有できました。その後の機能評価や社内承認もスムーズに進められ、大変助かりました」(土田氏)
デモ環境はその後も、グローバルユーザー向けのトレーニングやユーザー受け入れテスト(UAT)に活用された。
開発では、標準機能を中心に据える方針を採った。データ連携で課題が発生した際には、KOKUSAI ELECTRIC、ServiceNow、日立ソリューションズの3社が毎週のように技術確認を実施。こうした対応を重ねた結果、CSMは3カ月、SPMは5カ月で、いずれもスケジュール通りに構築を完了。カスタマイズを抑えたことで、導入後の運用・保守にかかる負担も軽減できているという。
エンジニアの配置状況と問い合わせ対応を一元的に把握
導入後、工程管理では案件情報の取り込みからエンジニアの作業実績の記録までを共通の仕組みで扱えるようになった。まず、装置の案件情報を管理する上位のSFA(営業支援システム)からWDFを通じてデータを連携。取り込んだ情報にテンプレートを適用し、工程管理用のプロジェクトを自動で作成する仕組みだ。
各拠点では、作成されたプロジェクトに対してエンジニアを割り当てる。地域やスキル、ビザ情報、これまでの割り当て時間などを考慮してシステムが候補者を提示し、その中から担当者が選択する仕組みだ。選ばれたエンジニアにはメールで通知が届き、作業後はタイムカード機能を使って実績を登録する。さらに、リソースカードやダッシュボードを通じて、各拠点の稼働状況を確認できる。
「グローバルでのデータ一元化と見える化を実現しています。各拠点のエンジニアの負荷や、拠点間での支援要請も一元的に確認でき、これまでExcelやメールで行っていた個別連絡を減らせています」(土田氏)
問い合わせ管理では、顧客や納入装置ごとに問い合わせの状況、原因、対策を記録する。平均修理時間(MTTR)や交換部品の履歴も管理可能だ。現地作業に関するタスクを作成すると、SPMへ連携し、プロジェクトの作成やエンジニアの割り当てまで行える。顧客ごとに閲覧権限を設定することで、情報の参照範囲も制御した。
また、Microsoft 365やJiraなどの外部システムともデータを連携。問い合わせについては、日本を含む各拠点がServiceNow上で連絡を完結できるようになった。他システムとの連携によってチケットを自動発行し、システム間の二重登録も削減している。従来の問い合わせ管理からの移行だったこともあり、利用者は大きな違和感なく使えていると土田氏は説明した。
拠点ごとの活用に差 - 問い合わせ対応を起点に周辺業務へ
土田氏は、グローバルでのシステム導入と業務標準化は実現できたと語る。ただし、工程管理がすべての拠点で同じように定着しているわけではない。利用の拡大に向けては、なお課題が残る。
「入力が必須の運用以外では、拠点ごとに活用の度合いに差があります。利用できる機能を最大限に活用することや、ライセンスの割り当ての再調整にも取り組んでいます。今後は各拠点に運用の必要性や有用性を示し、システムを使い倒す意識を持ってもらえるよう支援を続けていきます」(土田氏)
問い合わせ管理では、ケース管理で蓄積した情報を社内の不具合検索システムでも活用できるよう、連携機能の実装を進めている。
さらに今後は、問い合わせ対応を起点として、部品手配や売上管理、請求などの周辺業務をつなぐことも検討する。同氏は、複数の業務を横断して情報を利用できる、統合的なサービスビジネスの仕組みへ発展させたいと語る。
「今回整備した基盤を生かしてデータ活用を進め、サービス業務の高度化と、顧客満足度のさらなる向上につなげていきたいと思います」(土田氏)



