農林中央金庫は、農業協同組合(JA)・漁業協同組合(JF)・森林組合(JForest)など、農林水産業者の協同組織を基盤とする全国金融機関である。業務効率化や業務の堅確性、収益向上に向けてデジタル化を推進しており、2021年にMicrosoft 365、2022年にBoxを全社標準の基盤として導入してきた。

ServiceNowを導入し社内ワークフローを最適化

社内稟議や各種申請に用いるワークフローシステムについても、複数システムへの重複入力や差し戻し時の再入力といった業務プロセスの分断を解消するため、ServiceNowへ刷新した。他のクラウドサービスや業務システムとの柔軟な連携、共通機能の部品化による迅速な展開などが選定の理由だという。

現在はグループ全体で約7,000人が利用する基盤へと拡大し、申請・承認プロセスの簡素化や承認スピードの向上、タスク進捗の可視化を実現したとしている。

ServiceNowの利用拡大で金融機関特有の帳票要件が課題に

ServiceNowの適用範囲が個別性の高い業務や金融機関特有の業務領域へ広がる中、新たな課題として浮上したのが帳票出力である。

農林中央金庫では、受発注購買業務や資金動向管理、出資者向けポータルなど、帳票出力を必要とする業務がある。これらの帳票では、押印や可変長となる住所などを所定の位置へ正確に配置する必要があり、定められた様式への対応が求められていたのだ。また、Excelを使った帳票作成や情報の転記作業が発生することもあり、帳票の種類や数が増えるにつれて運用負荷が課題となっていた。

しかしServiceNow上で帳票ごとに個別開発やカスタマイズを行う方法では、初期開発に加え、業務変更に伴う改修や継続的な保守の負担が増える懸念があった。担当者が変わるたびに仕様や構築方法を確認し直す手間も避けたかったという。

当初は他のソリューションに備わる帳票出力機能も検討したが、帳票の入出力形式に関する制約から、求める要件への柔軟な対応は難しいと判断した。そのため農林中央金庫は、ServiceNowと帳票出力の仕組みを切り分け、SVF Cloudを導入するに至ったのだ。

可変長帳票への対応力やGUI開発を評価

選定にあたって重視されたのは、ServiceNowとの親和性、帳票の表現力、開発・保守のしやすさ、将来的な拡張性である。SVF Cloudは、PDFやWordが中心の他の帳票出力サービスと異なり、Excelを含む可変長の帳票にも対応しており、大量データの処理を前提とした仕様である点も評価された。ServiceNowのバージョンアップを考慮しても、帳票出力をSVF Cloudに任せることで、ServiceNow側のカスタマイズを必要最小限に抑えられるという。

スクリプトベースの開発が多い他製品に対し、SVF CloudはGUIで帳票を開発できる。将来的には非IT部門の担当者が自らレイアウトを作成する運用も視野に入る。日本語のドキュメントやQ&A、問い合わせ対応が充実していることも、開発を進めるうえでの安心材料になったとのことだ。帳票システムの開発は2026年4月に始まった。

受発注購買管理システムは2026年11月に本稼働予定

新たな基盤では、ServiceNowに入力されたデータをほかのマスター情報とひも付け、SVF Cloudで帳票を出力する。作成した帳票はPDFまたはExcel形式で、契約システムやBoxへ格納する仕組みとした。

  • 年間5万枚の帳票出力に備える。農林中央金庫がServiceNowとSVF Cloudを連携させた理由とは

現在は、SVF Cloudを活用した帳票出力の仕組みを開発しており、SVF Cloudが使われる受発注購買管理システムの帳票は、2026年11月の本稼働を見込んでいる。2027年4月には、資金動向システムにおいても50種類の出力を予定しているとのことだ。

本稼働前の段階ながら、Boxへの文書保存が自動化されるなど、すでに業務の効率化が進んでいるという。PoCの時点から安定して稼働しており、帳票出力の遅れが業務の停滞につながる懸念も小さいと評価している。帳票やレイアウトを一元的に管理できるようになり、修正箇所の特定も容易になった。

今後はAI活用や外部企業への導入支援も推進

農林中央金庫は今後、職員一人ひとりが日常業務でAIを活用できる環境づくりを進める方針だ。Boxに集約した社内文書の検索、営業支援、投資判断、社内ヘルプデスクなど、業務特化型のAIエージェントの開発にも取り組むという。さらに、自社でServiceNowやBoxを導入・活用して蓄積した知見を生かし、2025年4月からは外部企業への導入支援も展開している。

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