スウェーデン王立科学アカデミーは6日、2026年のノーベル物理学賞を米ウィスコンシン大学マディソン校のフランシス・ハルツェン教授(82)に授与すると発表した。南極の地下に建設した実験施設「アイスキューブ」の国際観測を率い、超高エネルギーの宇宙ニュートリノを捉えることに成功した。素粒子であるニュートリノの観測を手がかりに、宇宙の謎に挑む「ニュートリノ天文学」を発展させた功績が評価された。
2021年の真鍋淑郎氏(米国籍)以来となる日本からの物理学賞受賞はならなかった。
宇宙には、地上実験で到達できる水準の100万倍ものエネルギーを持つニュートリノなどの粒子を放出する天体が存在することが知られていたが、その正体や仕組みは謎だった。ニュートリノは電気的に中性で、他の物質とはほとんど相互作用しないため、宇宙のかなたから方向を変えたり減衰したりすることなく地球に到達する。これを観測すれば、宇宙線の起源の解明に役立つと考えられる。
ハルツェン氏は1988年、南極の氷の中でニュートリノを捉える構想を発表。ニュートリノがまれに原子核や電子と衝突すると、荷電粒子ができてチェレンコフ光という青い光を放つ。これを観測してニュートリノを捉える仕組みだ。南極の氷の深い部分は非常に透明で、さまざまな干渉を受けず、地震がないといった多くの利点があった。
観測施設は2004年に建設を開始。南極点直下の氷の深さ1450~2450メートルに5160個もの検出器を埋め込み、11年に完成して観測が本格化した。13年、初めて太陽系外から高エネルギーのニュートリノを捉えたと発表。17年には発生源を示唆し、世界各地の観測施設の追尾観測を通じて特定に成功した。わが国では千葉大学の研究グループが参加している。
天文学は可視光やエックス線、電波などによる観測を通じ発展してきた。ここにニュートリノを捉えるニュートリノ天文学が加わることで、さまざまな天文現象の謎の解明が進むと期待されている。アイスキューブは東京大学宇宙線研究所の観測施設「スーパーカミオカンデ」(岐阜県飛騨市)などと共に、ニュートリノ観測に大きく貢献している。
ハルツェン氏の成果について同アカデミーは「素晴らしい観測装置を開発した研究者と技術者の国際チームを率いてきた。彼の粘り強さと科学のビジョンが、新タイプの天文学への道を切り開いた」などと評価した。
賞金は1200万スウェーデン・クローナ(約1億9000万円)。授賞式は12月10日にスウェーデンで開かれる。
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