今回のどこでもサイエンスはアルミホイルです。

アルミホイルといえば、台所常備でありかつ実験系研究室でも常備な役立ち物品、百均でも入手できるでなアルミホイル。噛むと苦いアルミホイル。スイス生まれのアルミホイルを紹介します。

えー、世の中はノーベル賞週間に入っております。これ書いている間にも、生理学・医学賞が発表され、化学賞、物理学賞も続きますな。その、ノーベル賞は実証されて受賞が決まるそうでして、実証には実験や観測が不可欠です。そして、そこには多分、アルミホイルが使われているはずです。そう、実験室にはアルミホイルがよく似合うのでございます。

遮光から電波遮蔽まで、アルミホイルが実験室で重宝される理由

なぜ、アルミホイルかというと、安価で入手しやすく、軽量で自在に折り曲げられ、それなりに上部で破れにくいうえに、次のような機能があるからです。

  1. 電気を非常によく通します
  2. 熱を非常によく伝えます
  3. 光を遮断します
  4. 電波を遮蔽します
  5. 匂いを遮断します
  6. ビーカーのふたにすると、外部からの物質を遮断します
  7. 酸に強く
  8. 舐めても味がしません

私はかつて、手作りのプラネタリウムドームを作ったことがございます。そのさいに、暗黒を作るためにアルミホイルを光もれがするところにあてがったのです。黒いシートよりも、分厚い段ボールよりも、薄いアルミホイルは完璧に遮光してくれました。

匂う食品もアルミホイルで包むことで、それを遮蔽することができます。実際、ポテトチップスなど、アルミを貼った袋を使っていますが、開けるまでは見事に匂いがしません。もっとすごいのはカレー粉の缶ですね。あのどこにでも侵入するカレーの匂いがしないのだからすごいものです。もちろんアルミホイルは外部からの物質を遮断することで、変質を防ぎます。チョコレートの包装といえばアルミホイルですな。

そして、これは実験室でも同様なのです。

このとてつもなく高性能かつ、安価で入手性が高いアルミホイル。

アルミホイルはなぜスイスで生まれたのか?

発明されたのは、20世紀初頭のスイスです。なんで? それはスイスが先端の欧州の中にある、雪が豊富な山岳国家だからです。

山岳国家といえば日本もそうです。そして、急峻な山には滝がつきもの。これを人工的に制御するのがダム、そして滝をエネルギー源とするのが水車です。スイスは地理的特性を活かし、水車の利用が盛んな国でした。そして、19世紀後半に、水車にもう一つの役割が与えられます。それは発電で、それまで電池でないと作れなかった電気を大量かつ効率的に作れるようになったのです。

電気によって、電灯やモーターが使えることになると、発電所の需要が発生します。

アメリカではナイアガラの滝に水力発電所が建設され、さらにエジソンらによって多数の発電所が作られました。日本では琵琶湖から京都にそそぐ水路、琵琶湖疎水に水力発電所が建設されました。

そして欧州で、水力発電に積極的に取り組んだのがスイスです。時計などでも知られる工業国家のスイスでは、紡績産業も盛んであり、その動力源として電気の需要が見こされたからです。

大量の電力でアルミを生み出す「ホール・エルー法」

そして、電気が大量に必要なのがアルミの精錬です。アルミの発見は19世紀中ごろですが、鉄や銅と違って「鉱石を溶かせばよい」とはなりませんでした。アルミの原材料のアルミナの溶融温度が2000度を超える高温で、そんな温度を安定して作り続けるのが困難だったからなのですな。

ところが、アメリカのホールとフランスのエルーという2人の若者(当時22~23歳)が全く独立に、氷晶石を1000度で溶かした中に、アルミナをぶち込むとあら不思議、1000度で溶けてしまうことを発見したのです。そこに、電気を通すと、純粋なアルミが分離して底にたまるのです。これが、現在でもアルミを作る方法の主流な「ホール・エルー法(Hall–Héroult process)」といわれる方法です。1886年に発明されました。

このホール・エルー法には大量の電気を使います。ここで幸運なのでは大量の電気を供給する水力発電が本格化しようとした時期だったことです。

スイスは水力発電が盛んになったので、アルミの生産工場も立地していきます。そして、その中でアルミを薄く引き伸ばし、スズのホイルの代用に使うということが始まります。アルミホイルは1910年にスイスの J.G. Neher & Sons(ネーア社) が最初でした。

アルミホイルを広めたチョコレート包装

このアルミホイルに最初に目を付けたのは1908年創業のスイスのチョコレート屋のトブラローネ社でした。日本では、国産チョコレートが強くて、高級スーパーや輸入スーパーでないと見かけませんが、三角柱のような形のチョコで有名です。ここが、スズ箔でなくアルミホイルを使うとチョコの鮮度が保たれることに注目したのですな。

その後、アルミホイルの効能は、チョコレートとともに広まり、食品包装からはじまって、軍事、医薬など多方面で使われるようになり、家庭用のアルミホイルが発売されるようになります。もちろん科学者も実験に使うようになり、アルミホイルの進撃は現在もとどまるところを知らない状態となっているのでございます。

アルミホイルを噛むと「ビリッ」とするのはなぜ?

ところで、冒頭で「噛むと苦いアルミホイル」と書きましたが、あれはアルミホイルが苦いのではなく、口の中で電池ができてしまうからなのです。

歯の金属(銀歯など)とアルミの間に唾液が入ると、微弱な電流が流れます。これが神経を刺激して、あの“ビリッと苦い”独特の感覚になるわけです。

アルミホイルは電気をよく通すので、こんなところでも性能を発揮してしまうのですな。

備長炭電池からハサミまで、アルミホイルの科学実験

また、電池になってしまうと書きましたが、もちろん電池としても利用されており、アルミ空気電池など実用化されています。また、備長炭にティッシュを巻きアルカリの液を湿らせ、それをアルミホイルで巻くとLEDを光らせるくらいの電力が発生するので科学実験教室などでも楽しいネタになりますな。

また、アルミホイルの小ネタとしては、ハサミでアルミホイルを切ると、ハサミの切れ味がよくなるなんてのもあります。

地球の表面付近の近くでは、酸素、ケイ素の次に多いアルミニウム。泥の中にもいくらでもあるアルミニウム、ホイルにすることで革命をおこしたといってよいですな。ノーベル賞になってもおかしくないほどの発明なのですが、今年の受賞にならんかな~←発明者が生存していないので取れません。