地殻のひずみは、内陸地震が起こりやすい場所を理解するための重要な手がかりとなる。これまでも、国土地理院が運用する全球衛星測位システム(GNSS)観測網「GEONET」(電子基準点網)を用い、ミリメートル単位の精度で地殻の動きの解析は行われていた。しかし、観測点の間隔に限界があり、局所的な地殻変形の理解には不十分な面があった。
そこで東北大学と北海道大学は、電子基準点が全国約1,300カ所にあるGEONETと、ソフトバンクが全国3,300カ所以上に展開する独自の基準点を組み合わせ、日本列島の地殻がどこで強く変形しているのかを、従来よりも細かく可視化することに成功。9月25日に両者が共同発表した。
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(a)超稠密GNSS観測網の観測点分布。丸がGEONET、四角がソフトバンク独自基準点を示す。塗りつぶしたシンボルが地殻ひずみ速度場の推定に用いられた。(b)超稠密GNSS観測網から推定された超高解像度地殻ひずみ速度分布。面積ひずみ速度と主ひずみ速度を示す。(c)超高解像度地殻ひずみ速度場(最大せん断ひずみ速度)と震央分布の比較。灰色の線が活断層、1923年1月14日から2023年12月31日までに発生した地震の震央分布を示す。水色の点と青丸はどちらも深さ20km以浅で発生した地震、青丸のみがマグニチュード5.5以上の地震を示す (出所:東北大ニュースリリースPDF)
同成果は、東北大大学院 理学研究科の大舘未来大学院生(日本学術振興会特別研究員)、同・太田雄策教授、北大大学院 理学研究院の大園真子教授、同・髙橋浩晃教授らの共同研究チームによるもの。詳細は、日本の地球惑星科学関連5学会が共同で刊行する、地球・惑星科学分野の英文オープンアクセスジャーナル「Earth, Planets and Space」に掲載された。
「日本の内陸地震はどこで起きやすいか」を理解する手がかり
日本列島は4つのプレートがひしめき合う場所に位置しており、プレートの沈み込みや内陸活断層の運動により、人間には感知できないゆっくりとした速度で常に変形を続けている。この変形が蓄積することで生じたひずみは、内陸地震がどこで起こりやすいのかを理解するための重要な手がかりと考えられている。
ソフトバンクは現在、誤差数センチの測位をリアルタイムで実現する高精度測位サービス「ichimill」(イチミル)を提供している。全国約1,300カ所の電子基準点網を持つGEONETに、ichimillの全国3,300カ所超の独自基準点を加えることで、GEONET単体よりも詳細に日本列島の地殻変動を捉えられる可能性が出てきた。
そこで研究チームは今回、両者のデータを統合し、日本列島の地殻がどこで強くひずんでいるのかを高い空間分解能で推定することにした。
今回の研究成果
今回の研究では、2019年11月から2023年12月末までのGNSSデータを用い、品質を確認した両観測網合計3,606カ所の観測点データに基づいて、日本列島全域の高解像度なひずみ速度場が推定された。その結果、GEONETのみを用いた場合に比べ、より小さな空間スケールのひずみ集中構造を捉えることに成功したとする。
特に、新潟-神戸歪集中帯、北海道北部、山陰地方せん断帯、奥羽脊梁山脈周辺などで、地震活動や火山の分布と対応する特徴的なひずみの集中が確認された。これは、国の基盤観測網と民間の高密度GNSS観測網を統合することで、内陸地震の発生場をより詳しく把握できることを示す成果だという。
これらの成果を基に、今後、個別の活断層帯や火山地域を対象とした詳細解析を進めることで、内陸地震の発生メカニズムや、地震・火山活動と地殻変形の関係についての理解がより深まることが期待されるという。また、高密度GNSS観測網を継続的に活用することで、将来的には地震ハザード評価の高度化や、防災・減災に資する地殻変動モニタリングの発展にも貢献できる可能性があるとしている。