NTT東日本は8月、「ギガらくWi-Fi ハイエンド7プラン」の提供を開始する。Wi-Fi 7への対応が注目される一方で、同社が重視するのはアクセスポイントそのものではなく、ネットワークの設計から運用・保守までを支援するマネージドサービスという考え方だ。
本稿では、マーケティング統括本部 ビジネス開発本部 無線&IoTビジネス部 Wi-Fi/映像ビジネス担当課長の柴田梨理氏と井達佐氏に、Wi-Fi 7対応の狙いに加えて、「運用まで任せる」というギガらくシリーズの思想について聞いた。
「ギガらくWi-Fi」は中小企業の運用負担を減らすために始まった
--「ギガらくWi-Fi」はどのような課題を解決するために始めたサービスなのでしょうか--
柴田氏: 日本の中小企業では、専任のIT管理者を置けないケースが少なくありません。本業の傍らでネットワークを管理している企業も多く、Wi-Fiの設定やトラブル対応が負担になっています。
そこで当社では、お客様のWi-Fi環境をクラウド経由で遠隔管理し、設定情報を管理するとともに、通信が遅い、Wi-Fiが切れるといったトラブルにも迅速に対応できるマネージドサービスとして、2014年に「ギガらくWi-Fi」を開始しました。
サービス開始にあたっては、クラウドからネットワークを可視化し、設定を一元管理できることや、グローバルでの運用実績を評価してシスコの製品を採用しました。これが現在の「ギガらくWi-Fi」のハイエンドシリーズにつながっています。
当時はオンプレミス型のコントローラーが一般的でしたが、クラウド管理により、遠隔からお客様のネットワークを支援できるビジネスモデルを実現できました。
井達氏: 世界的にも高い市場シェアを誇るシスコシステムズの機器をNTT東日本の高いサポート力で運用をおまかせできることに加え、機器をレンタルにて提供するサブスクリプションモデルを取ることでお求めやすい提供価格になっていることも特徴です。
--「ギガらく」という名称にはどのような意味が込められているのでしょうか--
柴田氏: 当時はまだ最大1.3Gbpsでしたが、このギガ速度に対応した最新のギガWi-Fiであることをアピールしつつ、さらにサポート付きでとても楽に導入できるコンセプトを表したく、「ギガらくWi-Fi」と名付けました。
Wi-Fi 7は"速度"より"安定性"――まずはアクセスポイントから導入を
--Wi-Fi 6でも十分という声がありますが、それでもWi-Fi 7対応製品を投入する理由は何でしょうか--
井達氏: Wi-Fi 7の最大のメリットは、通信の安定性が向上することと考えています。比較的空いている6GHz帯を利用できるほか、複数の周波数帯を組み合わせて通信できるため、オンライン会議や大容量データのやり取りでも安定した通信環境を実現できると考えています。
現状(2026年7月)ではWi-Fi 7に対応している端末を利用している方はまだ少ないかもしれないですが、その前にネットワーク環境を整えておくことが、今回のサービスを提供する狙いです。また、今回採用した機器は処理性能自体も向上しているので、Wi-Fi 6対応端末を利用する環境でも、混雑時の安定した通信への寄与も期待できます。
柴田氏: 現在の環境に問題がなければ、無理にWi-Fi 7へ移行する必要はありません。ただ、今回はWi-Fi 6対応プランとの価格差を抑え、導入しやすい価格帯としていますので、まずはアクセスポイントからWi-Fi 7対応を進めることもおすすめしたいです。
井達氏: リモートワークが定着した現在では、事務所内でもTeamsやZoomによるオンライン会議を実施する機会は増えています。また、AI活用による大容量データのやり取りも増えています。こうした利用シーンで安定した通信を提供できることも、Wi-Fi 7の大きなメリットです。
クラウド管理を生かしたハイエンドシリーズが主力に
--今後はハイエンドシリーズが中心になるのでしょうか。その理由を教えてください--
柴田氏: 現在はハイエンド、ベーシック、ライトの3ラインを展開していますが、9月にベーシックを終了し、今後はハイエンドとライトの2ラインになります。
クラウドコンソールを利用できるハイエンドは、マネージドサービスとの親和性が高く、実際に販売の中心になっています。
井達氏: シスコはAIを活用したネットワーク分析やチャネル設計などの機能も提供しています。ダッシュボードを通じて通信環境の最適化を図れる点は、ハイエンドシリーズの大きな強みだと考えています。
柴田氏: 2023年度には「おまかせITマネージャー」の提供を開始しました。シスコのアクセスポイントから取得した利用ログをAPI経由で分析し、通信状況や遅延などを把握した上で、アラート通知やプロアクティブなサポート、月1回のレポート提供を行っています。
シスコのAPIを活用したマネージドサービスは、世界的に見ても先行的な取り組みです。実際に、提供当初、お客様から「こういうものを待っていました」といったお声もいただきました。今後も、お客様にネットワーク運用を任せていただける領域をさらに広げていきたいと考えています。
設計から運用まで、通信会社ならではのトータルサポート
--今後、ギガらくシリーズをどのように進化させていく考えですか--
柴田氏: ギガらくシリーズはWi-Fiからスタートしましたが、その後はルーターやスイッチへと対象を広げ、LAN環境を支えるサービスへと発展してきました。
ネットワーク上で利用するカメラやデジタルサイネージなどにも対象を広げてきており、今後もより、機器とクラウドを組み合わせたマネージドサービスをさらに充実させていきたいと考えています。
さらに、各機器のログを組み合わせることで、「何かお困りではありませんか」「以前と利用状況が変わっていますね」といった変化を先回りして把握し、お客様へ提案できる仕組みも実現したいと考えています。
井達氏: もう一つ注力していくのが10Gbps対応です。フレッツ 光クロスの提供開始から数年が経過し、10G回線の利用が広がりつつあります。
当社は回線事業者でもあるため、回線だけでなくルーターを含めた10Gbps対応のネットワークをフルスタックで提供し、中小企業でも導入しやすい価格帯のラインアップを充実させていきたいと考えています。
--最後に、Wi-Fi 7対応製品は各社が提供していますが、NTT東日本ならではの強みはどこにあるのでしょうか--
柴田氏: NTT東日本の強みは、光回線からLANまで通信全体のノウハウを持っていることです。回線だけでなく、設計・施工から運用まで一貫してサポートできる点は、他社にはない強みだと考えています。
井達氏: もう一つの強みは全国に広がる営業・サポート体制です。各地域の支店や営業担当に加え、116の電話窓口やお客様専用のWebページ(マイページ)も準備しており、お客様が困ったときにすぐ相談できる体制を構築しています。
Wi-Fi 7対応製品そのものは各社から提供されていますが、導入後の運用まで安心して任せていただけることが、NTT東日本ならではの価値だと考えています。
Wi-Fi 7対応を契機に、NTT東日本は機器の提供だけでなく、ネットワークの設計から運用までを支援するマネージドサービスの強化を進めていく考えだ。


