クマの大きく鋭い爪による攻撃から上半身を守る防護服を、大阪産業大学などが開発した。実際のツキノワグマの剥製を用いて、手を振り下ろす動作を再現。わずか4ミリメートルの厚みでも、クマの爪によってできる傷から身を守る布ができた。山形県・村山市猟友会の協力で、生きたクマでの実証実験も行った結果、素材の強度が十分であることを確かめているという。

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    グラスファイバーとポリエチレンを重ねた布でできたクマの防護服(サクセスプランニング提供)

大阪産業大学システム工学部の榎真一教授(機械工学)は、金属や繊維強化プラスチック(FRP)などの材料の強度を評価する研究を続けてきた。今回、防護衣のメーカー「サクセスプランニング」(京都府八幡市)から、クマの攻撃から身を守れるような服を作りたいと打診を受け、実験に着手した。

同社社長の桒原(くわばら)由香子さんがクマの手の剥製をインターネット上の剥製店舗で購入し、榎教授のもとに持ち込んだ。だが、剥製のままでは手の肉球部分がせり出しているため、「クマの攻撃」を再現できない。硬くなった肉球部分をグラインダーで削り、振り子式の衝撃試験機にセットした。

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    榎教授が実験で用いた振り子式衝撃試験機の仕組み(大阪産業大学提供)

振り子式衝撃試験機は、振り子の重りを利用して衝撃を与え、様々な素材の強度を測る装置だ。今回、26キログラムの重りを付け、クマが手を振り下ろして引っかくときの速度を時速17キロメートルと仮定して試験を行った。この数値は、クマが振り下ろす大きなエネルギーが爪の先に集中していると仮定して計算したものだ。

まずは一般的に洋服に用いられているニットなどで試験をし、布がボロボロに引き裂かれるのを確認してから、グラスファイバーとポリエチレンをフェルト状に重ねた布でクマの爪から守れるか試した。その結果、このフェルト状の厚さ4ミリメートルの布では、クマの爪による傷がほとんどできなかった。榎教授は「爪をセットする位置が布から離れすぎても、近すぎても実験にならない。しっかり当たる位置を学生と検討した」と振り返った。

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    今回の実験結果。クマの爪でも破れない(サクセスプランニング提供)

桒原さんが実験結果を踏まえ、クマ被害について聞き取った事例を基に、上半身を主に守る服を作った。特に顔を守るための腕周りは強度を出して販売にこぎ着けた。防護服の割には厚みがないため動きやすいのが利点で、クマに対応する自治体職員からの問い合わせが複数あったという。今後、下半身を守る防護服についても検討したいとしている。

榎教授は「今回の試験機では、人間の手や腕への評価はできていない。打撲を防げるかどうかや、腕に傷ができないかどうかといった影響を今後は調べたい」と話している。