はじめまして!

2026年4月から日本科学未来館で科学コミュニケーターとして活動している杉野瑠七です。

未来館で働き始めてから、家族や友人に「科学コミュニケーターになったよ!」と伝えると、かなりの確率で返ってくる言葉があります。

「それって何をする人なの?」

たしかに、「研究者」や「先生」はイメージできても、「科学コミュニケーター」という仕事はあまり聞きなじみがありませんよね。
科学コミュニケーターは簡単にいうと、科学技術を題材に、来館者のみなさんと未来について語り合う仕事をしています。

そんな科学コミュニケーターのことをもっとみなさんに知ってもらうため、この夏、未来館では「1日科学コミュニケーター体験 ~対話でつくる、私たちのミライ~」という体験型のイベントを開催しました。参加してくれたのは12名の中学生のみなさん。未来館の展示を舞台に、私たちが普段行っている来館者との対話に挑戦してもらいました!

はじめの一歩は、相手を知ること

当日、会場に集まった中学生のみなさんは少し緊張した様子。

それもそのはず。学校も学年も、好きなこともバラバラ。今日初めて出会った仲間たちです。

そこでまずは、インタビュー形式で、お互いのことを知るところからスタート。

「どんなことに興味がありますか?」「どうしてそれが好きなんですか?」

そんな質問をきっかけに、一人ひとりの意外な一面が少しずつ見えてきました。

参加したみなさんどうしで対話してもらい、お互いのことをちょっと知れたところで自然と先ほどまでよりもやわらかい雰囲気に。

同じ机に座ったメンバーでお互いにインタビュー

そう。1日科学コミュニケーター体験のキーワードは「対話」。

ここでいう対話とは、ただ自分の意見を話すことではありません。相手の意見に耳を傾け、「どうしてそう考えるのだろう?」ということを知ろうとしながら、一緒に考えを深めていくことです。

 

そこでまず、私たち科学コミュニケーターが普段の対話で大切にしていることを紹介しました。

ポイントは、「相手のことを知ろうとする姿勢」。

ですが、科学コミュニケーターは、「はい」か「いいえ」だけで答えられる質問ではなく、回答者側が自由に考えて答えられる「オープンクエスチョン」という質問の仕方や「あいづち」をしながら相手がどうしてそう考えているかを知ることを意識して対話をしています。

先ほどのインタビューでも、参加者のみなさんにはこうしたポイントを意識しながら話をしてもらいました。

イベント内で使用した資料から抜粋

対話のポイントがわかったところで、実際に来館者のみなさんと対話する内容を準備していきます。

どんなことを話そうか。それを探しに、中学生のみなさんと展示フロアへ向かいます!

「答え」ではなく、「問い」を探しに、展示フロアへ

今回、中学生のみなさんに対話をしてもらった展示は、「ハロー!ロボット」「100億人でサバイバル」「“ちり”も積もれば世界をかえる」です。この3つの展示について、現役の科学コミュニケーターがツアー形式で解説を行いました。

人によって考え方が異なる「防災」の問い探し

中学校で出会う問題には正解があることが多い一方、未来館で扱うのは、人によって考え方が異なる問いや、まだ答えが見つかっていない問いばかりです。例えば、「ロボットとどんな未来をつくりたいのか」「災害とどう向き合うべきなのか」「生命や宇宙はどのように生まれたのか」。今回対話をしてもらった3つの展示にも、そんな問いがたくさん含まれています。

 

そこで中学生のみなさんには、展示を見学しながら、「来館者と一緒に考えてみたいこと」を探してもらいました。

解説を聞きながら、中学生のみなさんは自分が展示の中で気になったことや不思議に思ったことをしっかりとメモ。

このあと行う対話準備では、展示を通して感じた疑問や関心をもとに、「来館者の方に聞いてみたい問い」を考えていきます。現役の科学コミュニケーターたちも、中学生のみなさんからどんな問いが生まれるのか、ワクワクしていました。

解説を聞きながら、来館者と一緒に考えてみたいことをメモ

午前終了!みんなでお昼ごはん!

展示見学のあとは、昼食会場へ! 午前中の緊張もすっかりほぐれ、ごはんを食べながら楽しくお話ししました!

そんな中で私たちに、「どうして科学コミュニケーターになったんですか?」という質問をしてくれた参加者が。

実は、未来館の科学コミュニケーターは経歴も専門もさまざま。研究者出身の人もいれば、企業で働いていた人もいますし、文系出身の人もいます。共通しているのは、「科学」と同じくらい「コミュニケーション」を大切にしていることです。

私たちの話をしたあとは、中学生のみなさん自身の話へ。参加してくれたみなさんも実にさまざま。科学が好きで応募してくれた人もいれば、先生に勧められて「おもしろそう!」と興味をもった人もいました。今のところ文系と理系、どちらに進みたいかも人それぞれです。

将来や進路についても、今興味をもっていることや挑戦してみたいことなど、それぞれの思いを聞かせてくれました。

私自身、中学生のころは数年後の自分の姿すらうまく想像できていませんでした。

未来というと、ロボットや宇宙、地球環境など、何十年も先の社会を考えるイメージがあります。でも未来は社会のことだけではありません、自分がどんなことに興味をもち、どんな人になりたいのかを考えることも、未来を思い描く大切な時間です。

午後の対話に向けて、中学生のみなさんと私たち科学コミュニケーターがお互いを知ることができました。

ひとつのテーブルを囲んでお昼ごはんを食べました

対話の練習をし、いざ展示フロアへ!

午後は、まず来館者との対話に向けて準備。

展示見学の中で気になったことや考えたことをベースに、「来館者の方と一緒に考えてみたい問い」をつくっていきます。

現役の科学コミュニケーターと話しながら、展示内で気になった部分を深掘りしていくと、「ロボットがどんな表情をしてくれたらうれしいかな?」「年々暑くなっている夏をどう乗り切ればいいかな?」「掘削船『ちきゅう』でどこを掘ったらおもしろいかな?」といった問いが! どれも、展示の中で見つけた疑問や興味から生まれたものばかり。来館者の方がどんなふうに考えるのか、ぜひ聞いてみたくなる問いです。その問いをもとに、「どう話しかけるか」「どんなふうに相手の考えを聞くか」を考えながら、自分なりの対話の原稿を作成しました。

現役の科学コミュニケーターと相談しながら、対話の原稿を作成中

原稿ができたら、次はいよいよ対話の練習です。来館者役と科学コミュニケーター役に分かれ、お互いに声をかけながら本番に向けて準備を進めました。最初は、自分が準備してきた内容を伝えることに集中している様子でしたが、練習を重ねるうちに、あいづちを打てるようになったり、相手の話に耳を傾けながら、「どうしてそう思ったんですか?」とさらなる質問で話を膨らませたりしている様子も見られました。素晴らしい!

原稿ができたら、次は話す練習!

練習を終えたら、いよいよ本番。

展示フロアに向かう途中、「もともと人に話しかけるのが苦手で……」と不安そうに話してくれた参加者もいました。「大丈夫だよ!」と声をかけつつ、自分も初めて展示フロアで来館者の方とお話ししたときもすごく緊張したのを思い出し、一緒にドキドキしながら向かいました。

まずは私が来館者の方に声をかけ、そこから中学生のみなさんにも会話に入ってもらいました。

すると、自分たちで準備してきた問いだけでなく、来館者の方との対話を通して新しい問いが生まれ、その場で一緒に考えを深めていく姿が見られました。

そして、「話してみたら楽しかった!」という体験をきっかけに、次は自分から来館者の方に話しかけに行く姿も。

1日科学コミュニケーターとして、来館者の方と対話しながら、その場で自分の問いや考えをアップデートしていくみなさんの姿に、普段科学コミュニケーターとして活動している私自身も学ぶところがたくさんありました。

1日科学コミュニケーターとして自分なりの対話を行う中学生のみなさん。立派です!

対話でつくる、私たちのミライ

展示フロアでの活動を終え、1日科学コミュニケーター体験のまとめを行いました。
対話の中で印象に残ったことを聞いてみると、

「自分が話すよりも、来館者の方の話を聞くのが楽しかった。」

「今回はできなかったけど、外国の人にも意見を聞いてみたら面白そう!」

「未来館に来る人はみんな科学が得意な人だと思っていたけれど、知りたいという気持ちで来ている人もいた。」

といった声が。参加者のみなさん一人一人が、自分なりのの面白さを見つけてくれたようで、私としてもうれしかったです。
最後は、「未来に活かしたい今日の発見」をテーマに振り返りを行いました。

参加者のみなさんからは、

「いろいろな人と関わる仕事につきたい」

「ロボットを使って世界中の人と話してみたい」

「技術を使う人も使わない人も快適に暮らせる社会になったらいい」

といった未来への思いが語られました。

来館者、参加者同士、そして私たち科学コミュニケーター。たくさんの人との対話を通して、自分がどんなことに興味をもち、どんな未来をつくりたいのかを考えるとともに、その先にある社会の未来にも思いを巡らせてくれたことがとても印象的でした。

 

別れ際には、「また会えますか?」と声をかけてくれた参加者も。

その言葉が本当にうれしくて、少し泣きそうになりました。

人と人、人と科学をつなぐ

私たちは他者との関わりの中で生きています。

「またこの人に会いたい」という気持ちも、「世界中の人と話してみたい」という願いも、誰かを知りたい、誰かとつながりたいという思いから生まれるのかもしれません。

 

科学コミュニケーターもまた、人と人、人と科学をつなぐ存在でありたいと思っています。

科学が好きな人もいる。詳しくない人もいる。科学を活用したい人もいれば、少し不安を感じる人もいる。そんなさまざまな価値観をもつ人たちが、対話を通して未来を一緒に考える。それが科学コミュニケーターの大切な役割だと私は考えています。

 

そして未来館の科学コミュニケーターは、いつでもみなさんとの対話を待っています。

このブログを読んでくださったみなさんがつくりたいミライの話、ぜひ科学コミュニケーターに聞かせてください。

 

そして最後に、参加してくださった12人の中学生みなさん、本当にありがとうございました!
今回の体験が、みなさんがつくるミライへ続く一歩となるよう、愛をこめて。

7月28日に参加してくれた中学生のみなさん、ありがとうございました!
7月29日に参加してくれた中学生のみなさん、ありがとうございました!


Author
執筆: 杉野 瑠七(日本科学未来館 科学コミュニケーター)
【担当業務】
アクティビティの企画全般に携わり、対話活動や展示解説、情報発信などを行う。

【プロフィル】
「雨のあとには虹が出る」そんなあたりまえにも思える地球のしくみを知ったとき、雨女の私の世界のみかたが一変しました。地球の現象に魅せられて大学では大気化学を学び、地球と人との関係を守りたいという思いから、防災アプリのエンジニアを経て未来館へ。どんな漫画やアニメの世界よりも美しくて面白いこの星で生きていくことへのときめき。そんな思いをみなさんと共有するために日々活動中です。

【分野・キーワード】
防災、大気化学