この半導体ニュースのまとめ
・ナノブリッジ・セミコンダクターがシーメンスのFPGA論理合成技術を採用
・NBS6503HおよびNBS1201向けに最適化した設計フローを顧客へ提供
・航空宇宙、車載、重要インフラなど低消費電力と信頼性が求められる用途へ展開
シーメンスデジタルインダストリーズソフトウェアは9月4日、ナノブリッジ・セミコンダクターが、自社のFPGAデバイス・ファミリ向けの論理合成技術として、シーメンスの「Precision FPGA Synthesis」を採用したことを発表した。
OEM契約に基づき、ナノブリッジ・セミコンダクターは独自FPGA「NBS6503H」および「NBS1201」向けに最適化したPrecision FPGA Synthesisを顧客へ提供する。設計者は両FPGAのアーキテクチャに合わせた論理合成を行い、高品質な合成結果を得ながら実装作業を進められるようになる。
独自のNanoBridge技術を用いた不揮発FPGAを展開
ナノブリッジ・セミコンダクターは、独自技術である固体電解質中での金属イオンの析出・溶解反応を利用した不揮発性スイッチ「NanoBridge」を基盤とする不揮発FPGAおよびメモリ技術を開発、製品化してきた。
もともと同社はNECから2019年にスピンオフする形で設立されたスタートアップで、研究開発はNEC時代から長年にわたって行われてきており、2011年には65nmプロセスを用いて書き換え可能なLSI(NB-FPGA)の実証を報告していたほか、2017年には産業技術総合研究所(産総研)とともに、宇宙での利用に向けた高い放射線耐性を有するNB-FPGAを開発したことも報告していた。この宇宙向けNB-FPGAは、2020年にイプシロンロケット4号機を活用して、宇宙航空研究開発機構(JAXA)の200kg級の「小型実証衛星1号機(RAPIS-1)」に搭載される形で、軌道上で長時間の運用実績が確認されている。
不揮発FPGAは、電源を切っても回路構成の情報を保持できるため、電源投入時に外部メモリから設定情報を読み込む必要がないという特徴があり、待機時の消費電力や起動時間を抑えられるほか、外部の設定用メモリを削減できる可能性がある。
同社は、こうした特性を生かし、航空宇宙、スマートインフラ、セキュアエレメント、車載システムなど、電力効率と信頼性が重視される分野への展開を進めているという。
今回、商用EDAツールとして利用されているPrecision FPGA Synthesisを自社製品向けに最適化して提供することで、顧客による設計から実装までの作業を支援し、NBS6503HおよびNBS1201の採用拡大につなげる考えだ。
FPGA向け論理合成フローを顧客に提供
FPGAの開発では、ハードウェア記述言語で作成した回路設計を、対象となるFPGAが備える論理回路や配線資源へ実装可能な形へ変換する論理合成が必要となる。
デバイスのアーキテクチャに適した論理合成を行えなければ、回路規模や動作周波数、消費電力などで本来の性能を引き出せない可能性がある。また、新たなFPGA製品を市場へ展開するには、デバイスそのものに加え、設計者が既存の開発環境から利用できるツールチェーンの整備も重要となる。
Precision FPGA Synthesisは、FPGA向けに設計された論理合成ソリューションで、設計データを対象デバイスへ実装するためのネットリストへ変換する。ナノブリッジ・セミコンダクターは同製品をNBS6503HおよびNBS1201へチューニングし、デバイスとともに顧客へ提供する。
これにより、設計者がナノブリッジ・セミコンダクター独自のFPGAを利用する際の開発環境を整え、設計の複雑性や導入負担を軽減する狙いがある。
設計支援とエコシステム開発で協力
両社は今回の提携を、FPGA設計のイネーブルメント、技術サポート、エコシステム開発に関する継続的な協力関係の基盤と位置付けている。
ナノブリッジ・セミコンダクターが持つ不揮発FPGA技術と、シーメンスのEDAに関する技術を組み合わせ、設計者が低消費電力かつ過酷な環境に対応したプログラマブル半導体を効率的に開発できる環境を構築する。
半導体の採用では、デバイスの性能だけでなく、論理合成や実装、検証に利用できる設計ツール、技術サポート、IPなどを含む開発環境が重要になる。特に独自アーキテクチャを採用するFPGAでは、既存の設計資産を利用しながら、対象デバイス向けに最適化できるツールの整備が市場拡大を左右する。
今後、両社は技術サポートと設計エコシステムの整備を進め、低消費電力と高い信頼性を特徴とする不揮発FPGAの市場投入を加速していくとしている。
