2026年8月20日(木)、未来館でイベント「見て、考えて、動くAI ~フィジカルAIで未来はどう変わる?」を開催しました。
最近、「フィジカルAI」という言葉をニュースなどで耳にしたことはありませんか? フィジカルAIとは、みずから「見て、考えて、動く」ことができる、身体をもったAIのことです。ロボットや自動運転など、私たちの暮らしを大きく変える可能性をもつ技術として、いま世界中で注目されています。
そんなフィジカルAIの研究に取り組む2人の研究者が、2026年から未来館の研究エリアで活動を始めました。未来館の研究エリアでは現在8つのプロジェクトが進行しており、最先端の科学技術を活用しながら、来館者からの意見やフィードバックも取り入れて、よりよい未来をつくるための研究開発を行っています。
今回のイベントでは、「AIロボットリビングラボ」プロジェクトを率いる松嶋達也さんと、「オープンソース自動運転」プロジェクトを率いる加藤真平さんをお招きし、研究者トークを行いました。それぞれのプロジェクトで目指していることや、フィジカルAIによって私たちの暮らしや社会がどのように変わっていくのか、お話をうかがいました。
また、イベント後半には、実際にロボットや自動運転バスを間近に見ることができる見学ツアーも実施しました。参加者のみなさんには、研究者との対話や実際の技術に触れる体験を通して、フィジカルAIが身近になる未来について考えていただきました。
本ブログでは、イベントの様子をダイジェストでお届けします。なお、研究者トークの様子は、後日、未来館公式YouTubeにて公開予定です。
研究者トーク: フィジカルAIの現在地、そして未来とは……?
イベント前半は、研究者トーク。松嶋さんと加藤さんから、それぞれが率いるプロジェクトについて紹介していただいた後、「フィジカルAIによって未来はどう変わるのか」をテーマに、おふたりに対談していただきました。
【第1部】「AIロボットリビングラボ」プロジェクト紹介「AIロボットリビングラボ」プロジェクトは、ロボットにさまざまな動きを学習させて「かしこく」することで、社会のいろいろな場面で活躍できる「汎用ロボット」の実現を目指しています。
身近なロボットを思い浮かべてみてください。たとえば、お掃除ロボットや配膳ロボット、警備ロボットなど、私たちの身の回りにはさまざまなロボットがあります。しかし、それぞれがお掃除や配膳、警備など、特定の役割に特化しているものがほとんどです。さらに、活躍できる場所も限られています。工場のような整備された環境では動きやすいかもしれませんが、家庭では部屋の様子が家ごとに異なるだけでなく、掃除や片付け、物を運ぶことなど、求められる作業もさまざまです。
「汎用ロボット」は、こうしたさまざまなタスクや環境に柔軟に対応できるロボットです。このようなロボットが実現すれば、時間や場所にとらわれることなく、より多くの人がロボットの便利さや価値を実感できる社会につながると期待されています。
【第2部】「オープンソース自動運転」プロジェクト紹介「オープンソース自動運転」プロジェクトでは、「Autoware(オートウェア)」という自動運転向けのオープンソースソフトウェアの開発を通して、自動運転技術の発展に取り組んでいます。
オープンソースとは、ソフトウェアの設計図(ソースコード)を公開し、誰でも自由に利用したり、改良したりできる仕組みのことです。自分たちだけで自動運転技術を開発するのではなく、世界中の開発者と協力しながら開発を進めていることが、このプロジェクトの大きな特徴です。自動運転が普及することで、バスのドライバー不足をはじめとする社会課題の解決も期待されています。
自動運転の実証実験は世界各地で進められており、日本における社会実装も少しずつ現実のものとなってきています。実際に、未来館の近くでも近年では自動運転バスの実証実験が行われています。私たちが自動運転車で自由に移動できる日も、そう遠くないのかもしれません。
【第3部】対談: フィジカルAIで未来はどう変わる?AIロボットも、自動運転も、「見て、考えて、動く」フィジカルAIの仲間です。今回は、そんなフィジカルAIがもたらす未来について、松嶋さん、加藤さんにお話をうかがいました。
「フィジカルAI」という言葉に明確な定義はありませんが、私たちの身の回りにも、フィジカルAIといえるものはありそうです。よく知っている漫画に登場するロボットのキャラクターも、実はフィジカルAIだった……?なんてこともあるかもしれません。
フィジカルAIがもたらす未来には大きな期待が寄せられています。一方で、AIが予想外の動きをしてしまうなど、フィジカルAIならではのリスクや、それに対する対策についてもお話をうかがいました。新しい技術には、期待だけでなく不安もつきものです。技術を開発する研究者だけでなく、私たちも、その技術をどのように使っていきたいのかを考え、自分たちの意見を伝えていくことも必要ですね。
質疑応答では、「感情のあるロボットはつくれますか?」など、子どもたちから鋭い質問も飛び出しました。また、暮らしの中にフィジカルAIが入ってきたとき、ロボットに「愛着」を感じられることも、意外と大切なのかも……と、考えさせられるお話もありました。フィジカルAIとは何か、それがこれから私たちの生活にどのように関わってくるのかを、いろいろな視点から考える時間となりました。
見学ツアー: 実際に、ロボットや自動運転バスに触れてみたら……?
「AIロボットリビングラボ」プロジェクト未来館5階研究エリアにある研究室では、遠隔操作ロボットを間近で体験していただきました。遠隔操作で動くのは、トヨタ自動車が開発したヒューマン・サポート・ロボット(HSR)です。その名のとおり、人を支援するために開発されたロボットで、将来は家庭で家事などを手伝う存在として活躍することも期待されています。
研究室の中は、まるで家の中のよう! このような生活空間を再現した環境でAIロボットの研究開発が行われているのもおもしろいですね。普段は入ることのできない研究室で最先端の研究現場に触れたことで、AIロボットが暮らしの中で活躍する未来を思い描くきっかけになったかもしれません。
「オープンソース自動運転」プロジェクト未来館の1階バスロータリーには、自動運転バスが登場! 自動運転バスの外観や車内を見学しました。今回、試乗は行いませんでしたが、バスに搭載されたセンサーを間近で見たり、車内からセンサーが周囲の物体を認識する様子を見学したりしました。
自動運転車は、乗り心地が一般の車とほとんど変わらないため、乗っているだけでは「自動運転らしさ」を実感しにくいこともあります。しかし、今回のようにその仕組みを知ってから自動運転車に乗ると、車が周囲をどのように認識し、判断しているのかを想像しながら体験できるかもしれませんね。
フィジカルAIと、どんな未来をつくりたい?
このように、本イベントでは、研究者トークと見学ツアーを通して、フィジカルAIがもたらす未来について、研究者のおふたりと一緒に考えました。未来館では、最先端の研究や技術を紹介するだけでなく、来館者のみなさんとともに未来の社会について考える場づくりにも取り組んでいます。フィジカルAIは私たちの暮らしをより便利にする可能性がある一方で、社会の中でどのように活用していくのかを考えていくことも大切です。
みなさんもぜひ、フィジカルAIがもっと身近になった未来を想像しながら、どのような未来をつくっていきたいか、期待や懸念も含めて考えてみてください。一人ひとりの考えや声が、これからの未来を形づくっていきます。
関連リンク
- 見て、考えて、動くAI ~フィジカルAIで未来はどう変わる? https://www.miraikan.jst.go.jp/events/202608204653.html
- 「AIロボットリビングラボ」プロジェクト https://www.miraikan.jst.go.jp/lab/facilities/AIRobotLivingLab/
- 「オープンソース自動運転」プロジェクト https://www.miraikan.jst.go.jp/lab/facilities/Open-SourceAutonomousDriving/

執筆: 若林 里咲(日本科学未来館 科学コミュニケーター)
【担当業務】
未来館で実施する実証実験に関わる科学コミュニケーションの企画やプロジェクトマネジメントを担当。これまでに、ノーベル賞やイグ・ノーベル賞の関連イベントなどにも携わる。
【プロフィル】
進路に悩んでいた高校3年生の時、偶然手に取った本がきっかけで「サイエンスライター」という職業を知り、科学コミュニケーションに興味をもつようになりました。
大学・大学院では化学専攻として創薬の基礎研究に携わり、修士号を取得。その後、総合系コンサルティングファームに入社し、電力・エネルギー業界の案件を中心に担当してきました。
未来館では、科学の楽しさや魅力を共有しながら、私たちの暮らす社会や地球のこれからを、みなさんと多様な視点で考えたいと思います。
【分野・キーワード】
化学、電力、実証実験





