月末になると、各部署・各支店からフォーマットの微妙に違うExcelが届きます。数字をそろえ、転記し、体裁を整える作業に時間を吸い取られて、本来やりたい「傾向を読み取り、次の判断につなげる」ところまで手が回らない――。

こうした集計・分類・転記といった「分析の手前の単純作業」こそ、AIに任せやすい領域です。書籍『Claude Cowork スゴイ活用術』(著:AI部/マイナビ出版)をもとに、①複数Excelの横断集計、②KPIの可視化、③自由記述の分類の進め方を整理します。

  • (書影1)『Claude Cowork スゴイ活用術』

書式の違う複数Excelを、Claude Coworkで横断集計する

まず、毎月直面する「複数ファイルの集計」からです。同書は、書式のばらついた個別ファイルを1つにまとめる作業こそ、Claude Coworkが力を発揮する場面だと説明します。

月末に全国の支店から届く個別Excelファイル。12個・20個・30個。手動で集計すると神経を使うし、1つのセルのズレで全体が狂う。Excelマクロでは、書式が微妙に違うと止まってしまう。Claude Coworkなら書式が違っても柔軟に読み取って集計し、1つの統合ファイルにまとめてくれます。

集計対象のExcelをフォルダにまとめ、「全部読み込んで統合表を作って」と指示します。

指示の出発点は「全部読み込んで統合表を作って」というシンプルな一言です。実際の指示では、これに「対象ファイルの場所」「出力したい表の構成」「確認したい数字」の3点を添えます。同書が示す基本プロンプトは次のような体裁です。

「2026年4月_支店別売上」フォルダのExcel 12個を読み込み、全社合計の集計表を作成してください。

# 出力
- ファイル名:全社集計_202604.xlsx
- シート:サマリー/支店別一覧/商品カテゴリ別/元データ一覧

# 処理
- 異常値(前月比±50%超)は「要確認」フラグ
- グラフ:全社売上推移、支店別構成比

ポイントは、「異常値(前月比±50%超)は『要確認』フラグ」のように、集計と同時にチェック機能を組み込んでいる点です。単に合計するだけでなく、目を配るべき数字をClaude Coworkに認識させておくことで、人間の気づきに繋がります。

  • 完成した集計ファイルの「サマリー」シート

    完成した集計ファイルの「サマリー」シート(キャプション・画像とも『Claude Cowork スゴイ活用術』より引用)

さらに、集計表を「作って終わり」にせず、毎月データを足して育てていく使い方も同書は紹介しています。その際のポイントになるのが次の2つの指示です。

集計表は一度作って終わりではなく、毎月データが増えていくものです。Claude Coworkは「ゼロから新しく作る」だけでなく、「すでにある表に当月分を追記する」使い方もできます。毎月作り直す必要がなくなり、過去データの蓄積もそのまま活かせます。

更新・追記の作業では、次の2点を指示に含めるのが安全のコツです。

「既存の行・データは変更しない」と明示する
追記のつもりが、Claude が気を利かせて既存部分まで作り直してしまうのを防げます。

上書きせず別名で保存させる
「_v2」「_20260417」などを付けて保存させれば、元の表が残るので、万一おかしくなっても戻せます。

「既存の行は変更しない」「上書きせず別名で保存」という2つの指示は、後述する“精度”の話とも地続きです。任せる範囲を広げるほど、元データを守る指示が大事になります。

KPIレポートを可視化する - グラフだけでなく「数字の意味」まで言及する

バラバラのExcelファイルを統合して数字をそろえたら、次は判断に使える形まで整える段階です。どこが伸び、どこに問題があるのか――。注目すべき変化が浮かび上がる形にして、はじめて次の一手につながります。

月次KPIレポートの可視化作業に、毎月4~6時間かかっている担当者は珍しくありません。Excelでグラフを整え、色を調整し、コメントを添え、PowerPointに貼り付け、体裁を整える。Claude Coworkなら、生データを渡すだけでグラフ付きレポートが出てきます。

生データ・前月の実績データ・年度目標・前月のレポート(デザイン見本)を同じフォルダにそろえて渡します。見本のデザインを踏襲しつつ、今月分の数字で可視化レポートを作ります。

Claude Coworkに見本のレポートを渡しておくと、デザインを踏襲して今月分の数字に差し替えてくれる、という進め方です。ここまではグラフの自動生成ですが、同書が価値の核心として挙げるのは、その先の「意味」を書かせることです。

「読み取れる意味」を書かせましょう。単にグラフを作るだけでなく、「このグラフから何が言えるか」のコメントを添えさせると、経営層向けレポートとしての価値が大きく変わります。

グラフを作るだけなら、ExcelやBIツールでもできます。差がつくのは、「このグラフから何が言えるか」という一文を添えさせるかどうか。数字を並べるレポートから、示唆のあるレポートへと質が向上します。

  • 生成されたエグゼクティブサマリー

    生成されたエグゼクティブサマリー(達成状況が色分け)(キャプション・画像とも『Claude Cowork スゴイ活用術』より引用)

数百件のアンケート自由記述を分類する - 先に分類軸を決めておく

AIに任せられるのは、数値データだけではありません。人間では読み切れないほど大量の、アンケートの自由記述のような非定型データも構造化して傾向を取り出せます。

500件・1000件の自由記述を1つずつ読み、グループ化し、代表的な声を抽出してレポートにまとめる作業は、2~3日がかりの大仕事です。時間がないから自由記述が未分析のまま放置される、ということもありがちです。Claude Coworkなら、自動でテーマ別に分類し、代表的な声を抽出してくれます。

「データを見せる→分類軸の提案→分類実行→深掘り分析」の4段階で進めます。Claudeが勝手に分類してしまう前に、人間が分類軸を理解・合意することで、後工程の修正が激減します。

4段階のうち、成否を分けるのは2つ目の「分類軸の提案」です。ここで人間が切り口を確かめておくかどうかが、後工程の手戻りを大きく左右します。

「分類軸を事前に合意する」が最大のコツです。分類軸をClaudeに任せっぱなしにすると、期待と違う切り口で集計されがち。途中で修正するより、最初に軸を合意するほうが圧倒的に早く、質の高いアウトプットが得られます。

分類が終わってから「思っていた切り口と違う」とやり直すより、着手前に軸をすり合わせておくほうが結果的に速い。人間が判断すべきところ(どう切るか)と、AIに任せるところ(実際に集計する)を分ける点がこの事例の勘所です。

  • 深掘り後の最終レポート

    深掘り後の最終レポート(キャプション・画像とも『Claude Cowork スゴイ活用術』より引用)

推測で補完させない - 出力の精度を保つ「指示のコツ」

Claude Coworkに任せる範囲を広げるほど、出力をそのまま鵜呑みにしない指示が重要になります。時短で終わらせず、精度まで担保するための勘所です。ここで大切なのは、AIに任せる範囲をあらかじめ線引きしておく「# 注意」の指定です。

# 注意
- 個人特定情報はマスキング
- 判断に迷った回答は「要人間確認」列に印
- まずは812件中100件で試して、精度に問題なければ残りすべてを処理
- 全件処理後、分類済みの行数が元の812件と一致するか照合して報告

いきなり全件を処理させず「まず100件で試す」、そして「行数が元の件数と一致するか照合して報告」させる――。確認の段取りをあらかじめ指示に組み込んでおくのがポイントです。もう一つ、同書がくり返し強調するのが、数字を勝手に埋めさせないことです。

個人情報(顧客名・メールアドレス)のマスキングを必ず指示しましょう。また、「金額・件数は推測で補完しない」と制約することで、データにない数字をでっち上げるのを防げます。

どちらの指定にも共通するのは、AIの判断に委ねる範囲をあらかじめ狭めておくという発想です。確認の段取りを決め、埋めてよい数字とそうでない数字を線引きしておくことが出力を信頼できるものにします。

ここまで見てきたように、Claude Coworkは複数Excelの集計・KPIの可視化・自由記述の分類という「分析の手前の工程」を引き受けてくれます。そのうえで、推測で補完させない、件数を照合させるといった指示を添えれば、速さと精度は両立します。まずは手元にある数個のファイルを渡して集計させ、行数の照合まで確かめてみる――。そんな小さな一歩から踏み出すのが、無理のない始め方と言えるでしょう。

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Claude Cowork スゴイ活用術
著者:AI部
発売日:2026年8月27日
販売ページ:電子書籍ストア「マナティ」
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  • (書影2)『Claude Cowork スゴイ活用術』