Ars Technicaは8月25日(現地時間)、「AI is hitting entry-level jobs hardest, Stanford study finds - Ars Technica」において、スタンフォード大学の経済学者らが実施した人工知能と雇用に関する最新の研究論文に基づき、生成AIが若年層の雇用に影響を与えていると報じた。
同大の研究では、AIの影響を受けやすい職種で、22~25歳の若年労働者の雇用が落ち込んでいると報告。AIの影響が大きい職種における同年代の雇用水準は、影響が小さい職種に比べて19%低く、この差は前年の13%から拡大したことが明らかになった。
雇用全体への影響は見られず、22~25歳で変化
研究ではまず、経済全体でAIによる広範な雇用喪失が起きている証拠は確認されていないとしている。その一方で、年齢層別に見ると、22~25歳の若年労働者ではAIの影響を受けやすい職種で雇用の減少が目立つという。
研究者らは、人事および給与計算代行企業「Automatic Data Processing(ADP)」が集計した匿名化された高頻度の給与データから大規模なサンプルを抽出した。各職種へのAI影響度については、過去の研究で作られた労働市場への影響指標と、Anthropicが公開する「Economic Index」が利用された。
ここでは分析手法の説明を割愛し、AIが雇用に与える影響の推移について注目する。論文では、生成AIが急速に普及し始めた2022年末ごろの雇用指数を1.0とし、その時点を基準とする変化グラフを掲載。AIの影響を受けやすい職種(濃い黒線)から受けにくい職種(薄い黒線)までを20%ずづ5つに分け、全体の傾向を赤線で示している。
AIの影響を受けやすい職種と受けにくい職種の雇用動向は、生成AIが普及する以前にはおおむね同様の傾向を示していた。その後、22~25歳では両者の差が拡大している。
22~25歳のグラフを見ると、生成AIの普及以降、AIの影響が大きい上位40%の職種で雇用が減少傾向を示し、一方でAIの影響が小さい60%の職種では上昇傾向が示された。2026年の時点では差が大きく開き、論文によると前者は11%減、後者は10%増だったとされる。
研究者はこの若年層の雇用減少について、解雇や労働者の離職よりも、新卒採用の低下によって生じた結果だと説明。賃金水準の低下より、雇用者数そのものの減少が主な変化だったとしている。
「自動化」される仕事ほど若年層の雇用が減少
AIの使われ方によっても差が生じた。Anthropicの「Economic Index」では、人間が担っていた仕事を完全に置き換える「自動化(automative)」と、人間の作業効率を高める「強化(augmentative)」とで区別している。
会計士、監査人、受付係、IT関連などは自動化の影響を受けやすい職種とされる。一方、経営責任者や正看護師などは「強化」に分類される。研究者らによると、AIによる自動化が多い職種ほど若年層の雇用水準が相対的に低下し、他方は横ばいまたは増加がみられるという。
「形式化された知識」が多い職種ほどAIの影響大きく
研究では、職種に含まれる「知識の性質」も分析された。学校教育や教科書、参考書などから学べる「形式化された知識」が中心の職種と、実務や指導、現場での反復作業によって身につく知識(経験)が中心の職種を比較した。その結果、前者への依存度が高い職種ではAIの影響が大きく、後者への影響は限定的で雇用の伸びがみられた。
大学教育にも一定の影響が確認された。大学卒業者の割合が高い職種では、AIの影響を受けやすい職種とそうでない職種の雇用の差は抑えられた。一方で大学卒業者が少ない職種では、AIの影響が小さい職種で雇用が増え、影響が大きい職種では雇用が減少した。
研究責任者のErik Brynjolfsson氏は、ワシントン・ポストのインタビューで、AI導入以前から働いている人の雇用が維持される一方、これから就職する若手が減少する可能性を指摘した。同氏は、若年労働者への影響が「現実に存在し、持続し、拡大している」と述べ、新卒採用の窓口が狭まることへの懸念を示している。

