日本IBMは8月20日、IBM Institute for Business Value(IBV)が世界のCIOやCTO、そのほかのテクノロジーに関する経営層を対象に実施した最新の調査「テクノロジー・リーダー・スタディ 2026:テクノロジー・リーダーの新たな使命」を発表した。

AI導入の加速に対し、可視化と統制体制の整備が追い付かず

調査では、AIが実験段階から全社規模の本格展開へと移行する中で、調査対象のCIO・CTOのおよそ3分の2(世界66%、日本68%)が、自らが完全には統制しきれていないAIシステムに対して責任を問われていると回答し、その一方でガバナンスが大規模展開のスピードに追い付けずにいる実態が明らかになりました。

IBVではオックスフォード・エコノミクス(Oxford Economics)の協力のもと、2026年1月~4月にかけて、33に及ぶ国や地域、19業界にわたり、組織のIT、テクノロジー、またはAI関連の意思決定に責任を持つ2000人のシニアエグゼクティブを対象に調査を実施。調査は、AIの拡大に伴う財務、運用、ガバナンスの課題に組織がいかに対応しているかについて、インサイトを収集することを目的として設計されている。また「備え」と「効率性」にもとづいて組織をセグメント化し、ガバナンスの成熟度を評価することで、AIを効果的に拡大するための構造的能力を構築した組織を特定する追加分析を実施した。

調査結果によると、可視性の欠如が広範に及んでいることが明らかになり、調査対象の経営層の過半数(世界70%、日本64%)が、社内の各チームがIT部門で追跡できるよりも速いスピードでテクノロジーを導入していると回答した。同時にそれを支える体制が十分に整っていない組織が多いにもかかわらず、AIの本格展開を速く進めることへのプレッシャーが高まっているという。

調査対象者は2027年までにAIエージェントの導入数が4割程度(世界38%、日本45%)増加すると予測し、回答者の8割(世界、日本ともに80%)がCEO主導のAI変革の指示を受けていると報告する一方で、今後1年間に予想されるAIエージェント展開の規模に対して、十分な備えができていると考えているのはわずか1割前後(世界11%、日本7%)にとどまるとのこと。ガバナンスも後れを取っており、調査対象組織の約7割(世界77%、日本69%)が、AI導入のスピードがすでに現在のガバナンス能力を上回っていると報告している。

AIエージェント関連インシデントは日本で平均72件、セキュリティ懸念が壁に

手動のガバナンスに依存している組織では、AIの導入拡大にいインシデントリスクが高まる反面、AIシステムに直接統制を組み込んでいる組織では、インシデントが25%少ないことが判明した。調査対象者の約6割(世界59%、日本60%)が、AIエージェントを本格展開するうえでの障壁として、セキュリティとコンプライアンスへの懸念を指摘した。

調査対象組織では過去1年間で世界では平均54件、日本では平均72件のAIエージェント関連のインシデントが発生(意図しない事象や有害な事象が生じ、人による是正を必要としたもの)し、報告されたAIエージェント関連インシデントのうち深刻度が高いものは、世界では17%、日本では13%となった。

その封じ込めには4時間以上を要したと回答し、内訳はデータ漏えいまたはセキュリティ侵害(世界37%、日本39%)、連鎖的なシステム障害(33%、日本28%)、コンプライアンス上の問題(世界、日本ともに17%)となる。

AI統制を組み込んだ企業は16倍多く展開、利益率も18%向上

AI支出は、2025年にはIT予算の15%弱だったが、2027年までには約25%に達すると予測されており、2年間で71%の増加が見込まれている。しかし、回答者の8割強(世界84%、日本82%)がAIの財務管理(FinOps for AI)をまだ完全には運用に組み込めておらず、8割半ば(世界85%、日本88%)がリアルタイムのAI支出を完全に可視化できていないと回答した。

分析によると、AIシステムに統制を組み込んでいる組織は、手動のガバナンスに依存している組織よりも16倍多くのAIエージェントを展開、18%高い営業利益率を達成、AI予算の支出を4分の1に抑制といった成果を実現している。

また、強固な財務規律を備えた組織については、AI/IT予算を増やすことなく、2.4倍多くのAIエージェントを展開、AIの本格展開に対して十分な備えができていると回答する可能性が3倍高いなどの傾向を確認している。

早期から適応力を考慮して設計した組織(ワークロードの移行容易性を保ち、強固な依存関係に固定するのではなくモデルを置き換え可能な状態にしていた組織)は、2025年におけるAIのROI(投資収益率)が10%高い傾向にあるという。