この半導体ニュースのまとめ

・MarvellとGoogleがTPUエコシステム向けカスタム半導体製品の商業契約を締結
・AI推論、ストレージ、ネットワーク、メモリ、ニアメモリコンピュートへ協業を拡大
・Googleに最大5897万907株を1株206.58ドルで取得できるワラントを発行

Marvell Technologyは、Googleとのカスタム半導体製品に関する商業契約の締結と、それに関連してGoogleにMarvell普通株式を取得できるワラントを発行したことを、米国証券取引委員会(SEC)へ提出したForm 8-Kで明らかにした

商業契約は2026年7月29日付で締結され、ワラントは同年8月18日付で発行された。両社の協業は、GoogleのTPUエコシステムに関連するカスタムシリコンプログラムを対象としており、AI推論アクセラレータ、ストレージコントローラ、ネットワークインタフェースコントローラ、メモリインタフェースコントローラ、ニアメモリコンピュートを含んでいる。

GoogleのTPUエコシステムを幅広いカスタム半導体で支援

今回の発表で注目されるのは、MarvellとGoogleの協業が、単一のAIアクセラレータや特定のインタフェース製品にとどまらず、AI計算基盤を構成する幅広いカスタム半導体へ広がっている点であろう。

生成AIや大規模言語モデルの利用拡大に伴い、AIデータセンターでは演算性能だけでなく、アクセラレータにデータを供給するメモリ、ストレージ、ネットワークの性能がシステム全体の効率を左右するようになっている。データの移動に伴う消費電力や遅延を抑える観点から、メモリの近くで演算処理を行うニアメモリコンピュートの重要性も高まっている。

Googleは自社開発のTPUをAIインフラの中核に据えているが、AIクラスタ全体を構築するには、演算チップに加えて、ストレージやネットワーク、メモリとの接続を担う多様な半導体が必要となる。Marvellはカスタムシリコンや高速インターコネクト、データセンター向け半導体で培った技術を生かし、TPUを中心とするシステム全体の高度化を支援することになる。

最大5897万907株を取得できるワラントを発行

商業契約に関連して、MarvellはGoogleに対し、最大5897万907株のMarvell普通株式を購入できるワラント(新株予約権)を発行した。権利行使価格は1株当たり206.58ドルとなっている。

ただし、Googleがワラントの発行時点で対象株式のすべてを取得するわけではない。対象株式のうち136万867株は時間経過に基づいて権利が確定する「Time-Based Warrant Shares」とされ、商業契約とワラントの締結後1年間にわたり、四半期ごとに均等に権利確定する。

残る株式については、Googleまたは同社の関連会社によるMarvellのカスタム半導体製品の購入実績に応じて権利が確定する。対象期間はMarvellの2027年度第3四半期から2033年度末までで、権利確定枠は240の等しいトランシェに分割されているという。

Googleによる対象製品の売上高が5億ドル発生するごとに、1トランシェ分の権利が確定する仕組みであり、240トランシェすべての条件を満たすために対応する累計売上高は1200億ドルとなる計算で、Googleによる実際の調達規模にワラントの権利確定を連動させた契約となっている。

協業の拡大と株式取得権を連動

今回のワラントは、MarvellとGoogleによる長期的なカスタム半導体協業の拡大に向け、Googleによる調達額と株式取得権を連動させた仕組みといえる。

カスタム半導体の開発では、顧客固有のアーキテクチャやワークロードに対応するため、設計開始から量産まで長期にわたる開発投資が必要となる。一方、顧客側もカスタム半導体をAIインフラへ採用すると、周辺ハードウェアやソフトウェア、データセンター設備を含めた長期的な投資を行うことになる。

購入実績に応じてワラントの権利を段階的に確定させる今回の条件は、Googleによるカスタム半導体製品の調達拡大と、Marvellの企業価値向上に対する利害を一致させる狙いがあるとみられる。

ワラントの権利行使価格と対象株式数については、株式分割などに対応する一般的な調整条項が設けられている。また、権利確定などの条件を満たした場合、ワラントは発行日から2033年8月18日まで、全部または一部を行使できるという。

AIインフラはシステム全体の最適化が求められる時代へ

AIデータセンター向け半導体市場では、GPUや独自アクセラレータの演算性能に注目が集まってきたが、AIクラスタの規模が拡大するにつれて、ラック間を接続するネットワーク、ストレージ、メモリ、電力、冷却を含むシステム全体の最適化が競争力を左右するようになっている。

特に大規模なAIモデルの学習や推論では、膨大なデータをアクセラレータへ供給し続ける必要があり、ネットワークやメモリの帯域不足が演算器の稼働率を低下させる要因となるため、ストレージからのデータ転送やチェックポイント保存も含め、複数の半導体をワークロードに合わせて協調設計することが全体として高い性能を実現するために必要になってくる。

MarvellとGoogleの協業範囲に、AI推論アクセラレータだけでなく、ストレージ、ネットワーク、メモリ、ニアメモリコンピュートが含まれていることは、そうしたAIインフラの競争軸が単体のGPUやアクセラレータといったAI半導体というレベルからシステムレベルの最適化へ移行していることを示すものといえる。

Marvellとしては、Googleとの協業を通じて、カスタムシリコンに加えて、強みとするネットワークをはじめとする周辺半導体まで幅広くカバーすることで、AIデータセンター向け事業の拡大につなげる狙いがあるとみられる。購入実績に応じて権利が確定するワラントの規模からも、両社が2033年までを視野に入れた長期的な協業を想定していることがうかがえる。