建設機械用油圧フィルタで国内外トップシェアを持つヤマシンフィルタと、導電性繊維やウェアラブルIoT製品を手がけるミツフジは7月29日、資本業務提携に基づく「戦略的アライアンス」の始動を発表した。“着るウェアラブルデバイス”と“次世代電磁波シールド材”という2つの製品で実用化を目指す。
気候変動による酷暑や、生成AIの普及にともなうデータセンターの電磁波・排熱問題が社会的な問題となるなか、両社はこの2つの製品の技術的な課題をクリアし、社会実装のフェーズへ移したい考えだ。
なお両社は2026年5月15日付で資本業務提携を発表済み、ヤマシンフィルタが第三者割当増資でミツフジ株式の一部を5億円で引き受けることが告知されている(関連PDF)。
綿のような質感のナノファイバー素材
建機向け油圧フィルタで国内外トップシェアを持つヤマシンフィルタの代表取締役 社長執行役員の山崎敦彦氏によると、ろ材(フィルタ性能に関わる、ろ過機能を持たせるための素材)の素材はより細いものへ進化してきているが、同社では髪の毛の直径の約1/120という極細繊維、「ナノファイバー」技術の活用が進んでいるそうだ。
山崎社長は、同社が開発したナノファイバーが綿のようなふわっとした質感を持つことに着目し、ゴミを除去するフィルタ用途にとどまらず、断熱・防音、さらにナノファイバーを加工することで電波・電磁波の遮断にも応用できる可能性に気づいたという。
2026年5月には信州大学繊維学部と共同研究契約を締結し、ナノファイバーの用途開発を進めている一方で、開発した技術を単独で社会実装へつなげることは難しいとの認識から、ウェアラブルデバイスや電磁波シールドの分野で実績を持つミツフジとの提携に至ったと説明した。
酷暑時代の体調管理アイテムを開発中
ミツフジは繊維技術から生まれた導電性繊維や、熱中症対策用のスマートウォッチ・リストバンド製品および関連技術を展開している。外資系メーカーが大半を占める国内ウェアラブル市場において、日本メーカーとしては単独で首位のシェアを持っており、例えばワークマンが展開する、脈波から深部体温の上昇を推定して熱中リスクを警告するウェアラブル製品「暑熱バンド」シリーズは、ミツフジのアルゴリズムを採用している。
ヤマシンフィルタ 取締役 副社長執行役員の山崎裕明氏が挙げた、ミツフジとのアライアンスで取り組む課題は「酷暑時代の体調管理」と「電磁波干渉」の2つ。
山崎氏は、現在主流のLEDで血流を測る光学式に対し、皮膚へ接触した電極からより精度の高い生体信号を取得できるとする電極式のウェアラブルデバイスに着目しているとする。ヤマシンフィルタのナノファイバー素材を次世代電極として応用することで、高精度な生体情報をユーザーの負担なく取得できる製品の開発を目指す。
早期の量産体制構築と市場投入を目指す
ミツフジ 代表取締役社長の三寺歩氏は、研究段階の技術が戦略的な価格で市場に浸透する“社会実装”の難しさを認識しているとし、ヤマシンフィルタの素材開発力と自社の市場展開力を組み合わせ、電極式の着衣型生体デバイスや、次世代電磁波シールドの実用化を加速させたいと話した。
着衣型の生体デバイスに関しては、着るだけで生体データを計測できるアイテムを想定。同社が展開する深部体温推定アルゴリズムと、ヤマシンフィルタの極薄ナノファイバー電極を組み合わせるなどして、現在の課題である体動によるノイズ発生を抑え、24時間連続で高精度なデータを取得できる心電・心拍計測を開発していくとした。
商品化時期は未定だが、まずは提携第一弾となる製品群の実証実験を完了させ、早期の量産体制構築と市場投入を目指すとする。





