日本オラクルは7月7日、新年度事業戦略説明会を開催した。2026年度(2025年6月〜2026年5月)の業績は、売上高が前年比8.2%増の2,850億円となり過去最高を更新した。オンプレミス向け事業が堅調に推移したほか、Oracle Cloud Infrastructure(OCI)やSaaS事業の成長が業績を押し上げた。
取締役 執行役 社長の三澤智光氏は、昨年度に掲げた重点施策「日本のためのクラウド」「お客様のためのAI」が成果を上げたと振り返り、OCIによるミッションクリティカルシステムのクラウド移行や、ソブリンクラウドの整備などが進展したと説明した。
2027年度の戦略は「AIの光を力に、信頼で加速する」
同社は2024年度から3年連続で、「日本のためのクラウドを提供」「お客様のためのAIを推進」を重点施策としてきたが、2027年度は「AI Changes Everything AIの光を力に、信頼で加速する」をコーポレートメッセージとする。
三澤氏は、「AIは光だけでなく、影も持つ。影を信頼に変えて、光を加速する」と語った。
同氏は、レガシーなオンプレミス環境では、高額な運用・保守コストやアプリケーションの更新停滞が課題になると指摘。あらためてインフラのモダナイゼーションの支援を打ち出した。
「今のオンプレミスにはいいことがない。しかし、すべてをいきなりモダナイゼーションするのは難しい。せめて、インフラだけでもクラウドでモダナイゼーションするご支援をしたい」
同氏は、オンプレミスからクラウド、AI、SaaSへと段階的に移行する「クラウド/AIジャーニー」と、各段階でセキュリティを高度化する取り組みを両輪で進める考えを示した。
また、AI活用を推進する一方で、AI時代の新たな脅威に対応する「AIの影」への取り組みも進める。
AIの光 AIエージェントを支えるデータプラットフォーム
AIの「光」としては、AIエージェントによる業務変革を見据えた取り組みを打ち出した。
三澤氏は、これまでの生成AIは個人や業務、中小企業の効率化に活用される一方、多くは情報を参照する用途にとどまっていると指摘。今後は、AIエージェントが基幹業務を実行する時代が到来するとの見方を示した。
同氏は業務を実行するAIエージェントを「基幹系AIエージェント」と呼び、その実現には、コンテキスト(業務の文脈)やセマンティクスを備えたデータプラットフォームが不可欠だと説明した。
「AIエージェントを導入する企業では、データ基盤を複数製品の組み合わせで構築するケースも多い。しかし、オラクルはデータベースからアプリケーションまで一体で提供できることが強みになる」と同氏。「このデータプラットフォームがなければ、AIを実行系へと進化させることは難しい」と述べた。
そのうえで、「すぐれたAIとデータプラットフォームを組み合わせることで、AIに光を実装して、日本を強くしたい」と語った。
AIの影 フロンティアAI時代のレジリエンスを強化
一方、AIの進化は新たな脅威ももたらす。日本オラクルは「AIの影」への対応として、フロンティアAI時代を見据えたレジリエンス強化を今年度の重点施策に位置付けた。
フロンティアAIとは、高い能力を持つ最先端AIを指す。こうしたAIは業務効率化に役立つ一方、サイバー攻撃への悪用も懸念されている。その代表例として、Anthropicが開発する最新AI「Claude Mythos」が話題となっている。
オラクルはAI時代のセキュリティ強化に向け、3つの施策を実施する。
まず、Claude Mythos PreviewやOpenAI Trusted Access for Cyberをソフトウェア開発プロセスに導入し、脆弱性の検出・修正・テストに活用している。
次に、これまで四半期ごとだったセキュリティパッチの提供を今年5月から月次へ変更した。三澤氏は「毎月パッチを適用できる日本企業はほとんどない。ベンダーとして、そうした体制づくりも支援していく」と語った。
さらに、顧客のセキュリティ対策向上を支援するプログラムとして、「Oracle AI Resilience Solutions(OARS)」と「Oracle AI Resilience Training(OART)」を提供する。
OARSでは顧客の環境に応じて現状評価やリスクの可視化、対策方針の策定から導入・運用までを一貫して支援する。OARTでは、AI時代に求められる重要システムの保護やセキュリティ対策の実践方法をオンデマンド形式で提供する。
三澤氏は、フロンティアAIの登場によって攻撃は高度化するものの、「AIが脆弱性を見つけ、攻撃を仕掛けるようになっても、対策の基本は変わらない」と説明した。
重要なのは、適切なバックアップとDR(災害復旧)環境を整備し、迅速に復旧できる体制を構築することだと強調した。
その一例として、同社はデータベースを迅速に復旧する「Zero Data Loss Recovery Appliance」を提供していることも紹介した。
業種別アプリケーションの強化も推進
このほか、三澤氏は業種ごとの課題に対応するインダストリーアプリケーションにも注力する方針を示した。グローバルでは先行して提供している、通信、エンジニアリング・建設、金融、公益業界向けのアプリケーションの国内展開を強化する。
さらに、AIによる業務変革を支援する専任組織(Applied Engineering)を強化し、構想策定から業務への適用までを支援するほか、ISV(独立系ソフトウェアベンダー)との連携も強化する。
三澤氏は、「一度にすべてを変えることはできない。優先順位を決め、どこから変えるかを支援していく」と述べ、AIの活用だけでなく、AI時代に求められるレジリエンスや業務変革まで含めて支援する姿勢を示した。


