リクルートマネジメントソリューションズは6月22日、「新入社員意識調査2026」と「若手の離職実態調査2026」の結果を公表した。説明会では、同社サービス統括部 主任研究員の桑原正義氏と、測定技術研究所 主任研究員の松本洋平氏が調査結果を解説した。

今回の調査では、2026年入社の新入社員の意識と、社会人1~3年目の若手社員の離職実態を分析した。その結果からは、「成長しなければならない」という意識の高まりと、それに伴う職場や上司への期待の変化が浮かび上がった。

  • 調査のイメージ

    調査のイメージ

若手社員の6割超が退職を考えた経験

「若手の離職実態調査2026」は、大学・大学院卒で新卒入社した社会人1~3年目の968人を対象に調査を実施したもの。調査対象のうち、87.1%が在職者、12.9%が退職者だった。退職者はいずれも自己都合退職である。

在職者に対して「会社を辞めたいと思ったことがあるか」を尋ねたところ、62.2%が「ある」と回答。2023年調査と大きな差はなく、約6割という高い水準が続いている。

辞めたいと思った理由では、「仕事にやりがいを感じない」が最多で、「給与水準への不満」「やりたい仕事ができない」が続いた。順位は2023年調査と同様だった。

離職理由は「給与」から「能力発揮」へ変化

退職者に実際の離職理由を尋ねた質問では「労働時間や休日の取りやすさなど労働環境への不満」が最多だった。次いで、「自分の能力や持ち味を発揮できない」が2位となった。

特に「自分の能力や持ち味を発揮できない」は前回調査の12位から大幅に順位を上げた。一方、前回2位だった「給与水準への不満」は6位まで低下した。

松本氏は、若手社員の離職要因が待遇面だけでなく、自身の成長や能力発揮に関わる要素へと変化している可能性を指摘した。

  • 離職を想起した(辞めたいと思った)理由(出典:新入社員意識調査2026)

    離職を想起した(辞めたいと思った)理由(出典:新入社員意識調査2026)

さらに、辞めたいと思いながらも在職を続ける理由については、「転職にはリスクがあると感じる」が最も多かった。しかし前回調査との比較では、「会社のビジョンや価値観に共感している」「仕事にやりがいや意義を感じている」「成長できる環境がある」といった前向きな理由が増加した。

一方で、「会社がつぶれる心配がない」「転職先が見つからない」「転職にリスクを感じる」といった消極的な理由は減少した。

松本氏は、「若手が会社に残る理由が『辞められないから』ではなく、『この会社で成長したいから』へと変化しつつある」と分析した。

離職を防ぐカギは上司と職場の関係性

在職者と離職者を比較した分析では、上司との関係性や職場環境に大きな違いが見られた。

上司との関係では、「仕事の進め方が合っている」という項目が、在職者と離職者の差が最も大きかった。松本氏は、若手社員と上司の仕事の進め方にズレが生じていないかを確認し、やりにくさを感じていないか把握することが重要だと説明した。

また職場との関係では「率直に意見を言い合える」といった心理的安全性に関する項目や、「職場メンバーから学べる」「メンバーとともに目標を達成したい」といった項目で、在職者の評価が高かった。

新入社員の「挑戦」志向が過去最高

一方、「新入社員意識調査2026」は、2026年3~4月に全国で開催した公開型新入社員導入研修受講者683人、同時期に開催したインハウス型新入社員導入研修およびWEB学習プログラム受講者3041人に対して行われたもの。

まず「社会人として働いていくうえで大切にしたいこと」を聞いた調査では、「社会人としてのルール・マナーを身につけること」が53.6%で3年連続のトップとなった。続いて「仕事に必要なスキルや知識を身につけること」が42.2%、「任せられた仕事を確実に進めること」が36.9%となった。

その一方で注目を集めたのが、「失敗を恐れずにどんどん挑戦すること」の回答率が34.3%と、2010年の調査開始以来、過去最高を記録した点である。反対に、「周囲(職場・顧客)との良好な関係を築くこと」は32.9%、「何があってもあきらめずにやりきること」は13.3%となり、いずれも過去最低となった。

  • 働いていくうえで大切にしたいこと(出典:新入社員意識調査2026)

    働いていくうえで大切にしたいこと(出典:新入社員意識調査2026)

この結果を受けて、桑原氏は「個人差を前提としながらも時代背景による価値観の変化として捉える重要性」を指摘。社会や環境の変化によって身につきやすい考え方や価値観があり、それを理解することで若手との関わり方を考える手がかりになると説明した。

「仕事についていけるか」が最大の不安

新入社員が抱える不安については、「仕事についていけるか」が64.6%で最も高い結果に。次いで「上司とうまくやっていけるか」が42.9%、「先輩・同僚とうまくやっていけるか」が36.8%となった。

一方で、「十分な収入が得られるか」は8.1%、「雇用が継続されるか」は2.7%と低水準だった。

桑原氏は「近年の雇用環境改善や初任給上昇などを背景に、経済面への不安は相対的に小さくなっている一方、自分自身が仕事で通用するかどうかへの不安が強まっている」との分析を示した。

  • 仕事・職場生活をするうえでの不安(出典:新入社員意識調査2026)

    仕事・職場生活をするうえでの不安(出典:新入社員意識調査2026)

仕事をする上で重視することは、「成長」が32.4%で突出してトップとなった。以下、「貢献」が21.8%、「専門性」が20.6%、「責任」が17.4%と続いている。また、「創造」は9.8%だったものの、前年から2.1ポイント上昇し、最も伸び率の高い項目となった。

「AIの進化などを背景に、新しい価値を生み出す仕事への関心が高まっている可能性があります。単なる安定志向ではなく、自身の成長や能力向上を通じて将来に備えたいという意識がうかがえる結果になりました」(桑原氏)

求められる職場は「助け合い」と「明確なルール」

続いて、働きたい職場像については、「お互いに助け合う」が66.8%で圧倒的に高い結果となった。また、「ルール・決め事が明確」は16.5%となり過去最高を記録した一方で、「皆が一つの目標を共有している」は23.9%で過去最低となった。

また、上司に期待することでは、「一人ひとりに対して丁寧に指導すること」が50.1%で初めてトップとなり、過去最高を更新。さらに、「言うべきことは言い、厳しく指導すること」は24.0%となり、3年連続で上昇した。

  • 上司に期待すること(出典:新入社員意識調査2026)

    上司に期待すること(出典:新入社員意識調査2026)

桑原氏は、「『仕事についていけるか』という不安が強い中で、能力向上につながる丁寧な指導への期待が高まっている」と説明。従来は減少傾向にあった厳しい指導への期待が近年上昇していることについても、成長を求める若手の意識が背景にある可能性を指摘した。

今回の調査結果からは、若手社員が単に働きやすさや待遇だけを求めているわけではなく、「成長できるか」「能力を発揮できるか」を強く意識していることが明らかになった。

新入社員の挑戦意欲の高まりや、離職理由としての自己成長機会への関心の増加は、その象徴的な変化といえる。企業にとっては、若手の成長実感を支える育成環境と、心理的安全性を備えた職場づくりが、今後の定着施策の重要な要素となりそうだ。