
JR東海が建設中のリニア中央新幹線(品川―名古屋間)が開業に向けて大きく前進した。
未着工となっている静岡県知事の鈴木康友氏が7月7日に着工容認を表明。工事には10年以上かかり、年内に着工しても開業は最短で2036年以降になる見通し。物価高などの課題を抱えつつ、開業に伴う経済効果への期待が一層膨らんでいる。
県とJR東海は7月18日に着工の前提となる自然環境保全協定を締結。これを受け、国土交通相の金子恭之氏は同月21日の閣議後記者会見で「JR東海においては協定に沿って環境保全措置をしっかりと実施し、地域の理解と協力を得ながら適切かつ着実に工事を推進してもらいたい」と注文した。
同工区を巡っては、17年に環境への影響を懸念した前知事の川勝平太氏の反対以降、約9年にわたり着工できない状態が続いた。ようやく着地したが、その間に物価高が進み、「金利のある世界」が到来。建築費高騰や人手不足により、各地で再開発計画の見直しや遅延が発生するなど、事業環境が激変した。
JR東海は昨年10月、総工事費が当初の約2倍となる11兆円に上振れすると発表。増額分には直近の建設費高騰の影響と、今後の物価上昇分など2兆3000億円も含まれる。
今後、新たな経済圏形成に向けた議論も加速する。リニア中央新幹線は段階的な開業を経て、大阪まで延伸される予定だ。政府は第3次国土形成計画で、リニアなどにより三大都市圏が「日本中央回廊」を形成すると位置付けた。
首都圏、中京圏、近畿圏の人口規模は約6600万人と巨大で、ビジネス拡大や国際競争力の向上が見込まれる。
沿線地域も恩恵を受ける。品川―名古屋間には神奈川県駅(仮称)、山梨県駅(同)、長野県駅(同)、岐阜県駅(同)の4つの中間駅が設けられ拠点機能を担う。
また、高速輸送の需要がリニアに移行し、ダイヤに余裕ができる東海道新幹線では「ひかり」などで増発余地が生まれる。国交省は23年、静岡県における経済波及効果が10年累計で1679億円になると公表した。