≪ 国内移動の需要をつかめ! ≫  香川県三豊市など 全国36市町村と協業する日本航空の「関係人口」づくり

2030年に1.5倍の総量へ

 

「都会(の人々)は孤独で、つながりを求めている。一方、地域は人口減少と高齢化に直面している。当社のマイルを媒介にして都会と地域をつなげていく」─。こう語るのはソリューション営業本部関係・つながり創造部部長の関谷岳久氏だ。 

 JALは中期経営計画において「移動を通じた関係・つながり」の創造に取り組んでいる。人口減少が進む国内需要は先細りが避けられない。そこで、いかに「関係人口」を増やせるかに同社は焦点を当てている。中計でも2030年までに「関係・つながりの総量」を23年比で1.5倍に増やす計画だ。 

 関係人口とは、移住した「定住人口」でも、観光に来た「交流人口」でもない。地域に継続的かつ多様な形で関わる人々を指す。「旅行以上で移住未満という第三の人口として地方創生やまちづくりで重視されている」(旅行会社関係者)。 

 この関係人口を増やすJALの仕掛けが都市と地域を行き来する「二地域居住」だ。マイルを活用した移動支援を行うことで二地域居住の心理的ハードルを下げ、関係人口の拡大を目指すJALの取り組みは25年に国土交通省の「二地域居住先導的プロジェクト実装事業」にも採択されている。 

 実はそれ以前の20年から同社は北海道や兵庫県、福岡県などと連携した二地域居住を始めるためのツアー商品の造成に取り組み、23年にはワーケーション向けの航空サービスの実証実験を北海道上士幌町と展開。関係人口づくりに精を出してきた。そして25年度から本格稼働。全国6市町と移動費支援に特化した広域型プログラム「つながる、二地域暮らし」を開始した。 

 民泊の経営をやってみたい─。愛知県生まれの30代男性はJALの旅と学びの地域体験プログラムで初めて香川県三豊市を訪れた。同市は人口6万人を切る小さな町だが、「父母ヶ浜」という約1キロの海水浴場が人々を惹きつける。潮が引いた干潮時の夕暮れには、南米ボリビアの標高約3700メートルに広がる世界最大級の塩の湖「ウユニ塩湖」のような写真が撮れるとSNSで一躍話題となったからだ。 

 年間5000人の観光客が年間50万人へと急増。また、地元の100年企業などの4~5代目といった若手経営者たちや地域外から訪れたイノベーターが一丸となって次々と新しいプロジェクトを発案する動きが活発化していた。それに伴って毎年、年間約2000人規模の人々が視察に訪れていることを知った先の男性は三豊市への移住を決断し、今では空き家を活用した不動産事業を展開している。 

 他にも、うどんに特化した宿泊施設のオーナーを務める女性起業家と東京から度々通っていた地域プロデューサーの男性が移住し、地元の民間企業11社を集めて共同出資で新たな宿泊施設を開業。JALも投資した。

 

ライバルのJRとも協業

 

 そんな三豊市と同社は昨年4月に包括的連携協定を結び、同市での二地域居住に関心のある人に、東京から高松までの航空券片道4回分相当のマイルを提供するプログラムを実施するなど、関係人口づくりの実績が徐々に積み上がり始めていた。 

 そしてJALは今年4月、関係・つながり共創(「KANTSUNA」)を設立。同社は26年度に市町村長からの委託を受けて二地域居住者などへの移住相談や住宅・仕事紹介といった支援を自治体に代わって手掛ける「特定居住支援法人」として全国25の自治体から同法人に指定された。20以上の自治体から同法人の指定を受ける事例は日本初となる。 

 KANTSUNA事業推進部部長の青木漱介氏は「二地域居住や地域に興味がある人に呼びかけ、例えば子育てに力を入れている自治体をグループ化するなど、地域紹介と交流会を行っていく。交流会や双方向の交流によりマッチングしていくことを目指し、個人と自治体と事業者が融合していく場をつくっていきたい」と意気込む。 

 26年度は全国36市町村と移動費支援に特化した「つながる、二地域暮らし」と滞在を実践している人に移動・住居・コンシェルジュサービスをパッケージとして提供する「二地域居住クラブ」を両軸で展開。さらに長距離路線でライバル関係にあるJR東日本とJR西日本とも共同のプログラムを展開し、新幹線などの鉄道も絡めた移動支援を行っていく予定だ。 

 もちろん、ライバルのANAホールディングスも二地域居住を支援するサイトを運営し、航空券の支払いや旅行商品などに使える「ANA SKY コインン」で移動支援を行っている。 

 JALもANAも昨今の燃料費高騰や円安に伴う整備費などの人件費の急騰で営業費用が急上昇している上に、コロナ禍を経て単価の高いビジネス客がコロナ禍前比で約1割減という状況が恒常化。JALは辛うじて国内線の事業では黒字を維持したが、ANAは「実質赤字」(関係者)となっている。 

 JALの26年度の「つながる、二地域暮らし」プログラムの定員は全国で計266人と、25年度の計45人から約6倍に増えた。「航空需要の創出という狙いは根底にある」(関谷氏)。それだけに、地方創生を実現させて移動需要の創出を生み出すためには、さらなる関係人口づくりに向けた知恵を絞る必要がある。

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