
家庭用整水器のニーズなぜ増加
今、じわじわと家庭用整水器が売れている─。昨今ペットボトル飲料500㎖が200円に達し、自販機での購入を躊躇する消費者は少なくない。実際に大手飲料メーカーは自販機事業から撤退を進めていることもあり、生活費防衛の意識から家庭から飲料を持参するという行動にシフトしつつある。
こうした背景に加え、整水器の水を利用すればゴミも出ず環境にも良いということで、家庭用整水器導入が増えている。
また、昨今発がん性が疑われる水道水に含まれる有機フッ素化合物(PFAS)の懸念から、より安全な水を求めて整水器を導入したいというニーズも増加。
イラン戦争による石油価格の高騰で、ペットボトルやガロンボトル容器の資材や輸送コストは上昇、今後さらなる飲料製品の値上げは予測できるため、将来を見越してということもあるのだろう。
「家族の健康面への配慮、家計節約のために、弊社商品を選んでいただくケースが増えている。同社の整水器を家庭に導入した場合、1リットルあたり10円の電解水素水を家族全員で使用することができ、1世帯あたりのトータルコストは安くなる」。こう話すのは日本トリム執行役員経営企画部長の平井健太郎氏。
日本トリム(東証プライム市場)は1982年設立後、44年間整水器のパイオニアとして市場をつくってきた。独自技術により、水道水を電気で分解し濃度が高い「電解水素水」をつくることができることが強みで、家庭用整水器メーカーではシェア首位だ。2026年3月期連結業績は、売上高250億円(前年比11.3%増)、経常利益37億円(前年比4.7%増)と過去最高益となる見込み。
電解水素水は、文字通り電気分解したアルカリ性の水素を含む水で、胃腸症状を改善したり、万病の元となる体内の活性酸素を除去することが認められている。理化学研究所や九州大、東大、早稲田大、東北大ともそれぞれ共同研究を続けており、抗酸化、腸疾患、2型糖尿病治療、肝障害にも効果があるという論文を発表。
中でも東北大医学部を中心とした研究成果は医療分野で実用化のステージにある。人工透析患者の電解水透析は次世代の新規治療法として注目され、聖路加国際病院、亀田総合病院、徳洲会グループなど、37箇所で導入されている。
日本トリムの強みはこの産学連携の研究の多さであり、医療分野を開拓していることでもある。そのことが結果的に家庭用整水器の信頼性も高めている。
2007年頃、第一次水素ブームがあったが、一部業者の誇大広告が問題視され、「水素水は胡散臭い」─という社会風潮が高まった。そのイメージが踏襲され、水素水に対し悪い印象を持つ人は今でも多い。
当時市場で販売されていた大半の水素水商品は、ペットボトルの水にバブリングで水素を注入した清涼飲料水。しかし、水素は原子が非常に小さくペットボトルやアルミ容器をすり抜けてしまうことから、時間が経つにつれ水素濃度が低くなることが指摘された。
同社の水素水は電解しているため性質が異なるが、消費者からは同じものとして認知され、社会からは厳しい目が注がれた。当時コールセンター長を務めていた平井氏はこう振り返る。
「当然当社にも風評被害があり、『効果がないものを売ったのか』と厳しいクレーム対応に追われ、『怪しい』と警戒され営業にも苦労した。お客様には当社の商品は国から承認された管理医療機器であり、電気分解してつくられた医療効果のある水だということを丁寧に伝えていくしかなかった」
現在、同社はBtoC向けが売上の7割を占めるが、大手自動車メーカーなどを始めとした健康経営優良法人のオフィス、サウナ、スパ、医療・介護施設、飲食店でも多数導入が進む。実際、日本トリム社員(700名)は自社の水素水を日常的に飲用し、1人当たりの月額医療費が全国平均と比べ3割安いというデータも得ており、健康経営を社として自ら実践している。
農業分野でも効果4Lサイズのメロンが6Lに
興味深いのは、同社の電解水素水が人間への健康効果だけでなく、農作物の発育にも好影響を及ぼす点だ。
同社の農業用整水器で生成した水を植物に与えて抗酸化成分を増加させ、果実や野菜の品質を高める実証実験を続けている。象徴的なのは、2015年から滋賀県草津市の農園と提携し、電解水素水を使用した草津メロン栽培。草津メロンは国内トップレベルの糖度を誇るブランドメロンで、通常サイズは4Lで糖度14.6度だが、この電解水素水を使用し育てると、6Lサイズ、糖度17~18度のメロンが収穫できる。このメロンは例年12時間ほどで完売する人気ぶりだ。他にもパプリカや米などが市場に出回る。
電解水素水を与えて育てたメロン(右)
日本の農家は65歳以上が7割を占め、低収益も理由に農業人口は減少に向かっている。同社はこの電解水素水を活用した農作物の付加価値化を実現し、農家の所得増加を目標に掲げている。実際、農家からも収益向上に繋がっているという声が届いているという。
「当社は整水器だけで44年間やってきた会社。電解水素水で人々を健康に導き、日本の社会課題の1つである医療費削減に貢献したい」と平井氏。
産学連携で整水器を磨き続け、それを応用し新たな分野を切り拓いてきた日本トリム。向かう先は医療分野、農業分野といずれも社会課題が大きい分野。人や農作物が元気になる「電解水素水」の今後の可能性が注目される。
