【 人でしか成し得ないサービスを!】 ロイヤルHD社長・阿部正孝の〝選ばれる店づくり〟

節約志向の中、高級路線でも選ばれるわけは

「われわれは、人でしか成し得ないサービスを大事にする」─。こう話すのはファミリーレストランの「ロイヤルホスト」などを展開するロイヤルHD社長・阿部正孝氏。 

 消費者の実質賃金は2022年からマイナスが続き、中東情勢の不安定さも重なり、物価はさらに高騰。スタグフレーションに向かいつつあるという指摘もある。消費者は生活防衛の意識から外食もより安価なものを求め、低価格路線のお店に人々の消費が向かっている。 

 一方で、価値を感じるものにはしっかりお金をかけるという人々のメリハリ消費も顕著となり、消費者の二極化は進む。 

 同社が運営するファミリーレストラン「ロイヤルホスト」は、「ガスト」や「デニーズ」などと比較し業界では高価格の店だが、25年12月期は売上高1654億円、経常利益は79億円と過去最高益を達成。コロナ禍前の2019年(同46億円)を大幅に超過する結果に着地した。 

 なぜ価格が高くても業績好調なのか。 

 コロナ禍で打撃を受けた外食業界は、注文や会計をデジタル化し、厨房では調理ロボットや冷凍食品活用、また配膳ロボットの導入など、省人化することでコストを抑え利益を確保し、経営存続を図ってきた。 

 そうした他社の動きを横目に「ロイヤルホスト」では席への案内、お冷の提供から注文、配膳、会計レジ対応まで、〝人〟が行うサービスにこだわってきた。 

「効率化も必要だが、人がやった方がお客様に喜んでもらえること、人でしか成し得ないことをわれわれがやる。料理が美味しいことだけでなく、サービスが行き届いていること、お店の雰囲気、清潔感、これらの総和の結果が外食の価値。そこに食事だけでないレストランの役割がある」と阿部氏。 

 昨今AI活用や機械化で合理化、効率化が進み、人々にもどこかデジタル疲れが出始め、人によるアナログサービスを求める動きもあるように思う。同社はその価値観を守り抜いたことで、現在他社にない付加価値の提供ができているのだろう。 

 また、祖業がフレンチレストランということもあって美味しさにはプライドと徹底的なこだわりが特徴でもある。外食の〝特別感〟や〝美味しさ〟の価値観を最重視し、ここ数年、円安などによる食材の原価高騰で利益がひっ迫されても、この2点は妥協せずに耐えてきた。逆に言えばそれが経営上の弱みでもあった。25年通期では、原材料高騰では21億円、電気・ガス代で2億円と計23億円仕入れ価格の影響を受けている。 

 現状多くの飲食店では冷凍食品の活用も増えているが、ロイヤルホストはチルド品の牛肉・豚肉を店内でカットし直前調理をする。 

「冷凍の食肉はドリップが出てしまうと美味しさが損なわれる。店舗で調理するのは手間もコストもかかるが、われわれにとって美味しさが一番大事という考えは変わらない。時代は変わっていく中でも提供する価値や考え方は変わらない」(阿部氏) 

 また、同社の店づくりでもう1つ大きなポイントは、店内の居住性へのこだわりだ。一人あたりの机の大きさも大きくし、余裕ある空間を担保している。その結果、「落ち着いてゆったり食事できる場所」という人々の認知が進み、ハレの日需要を取り込んでいる。 

 人による丁寧な接客対応や、美味しさへのこだわり、ゆったりした店内雰囲気の設計は、企業経営上で見るとどれも一見非効率な点に見える。しかし、外食に高いサービスを求める顧客にとっては大事な点。競合他社がデジタル化に舵を切る中、踏ん張って守り続けてきたものがいま資産となっている。 

 

食と泊の相乗効果で

 

 同社グループの強みである、食事の美味しさと接客サービスは、ホテル事業でもシナジー効果を発揮している。全国に67店舗のホテル・ホテルレストランを展開し、2023年には京都の朝食が美味しかったホテルランキングで、グループのリッチモンドホテルがトップにランクインした。(じゃらんアワード2023 じゃらん OF THE YEAR/泊まって良かった宿大賞 朝食(宿泊施設規模:101~300室部門)1位:リッチモンドホテルプレミア京都四条、2位:リッチモンドホテルプレミア京都駅前) 

「これは自信にもなった。〝食〟と〝泊〟を両方やる会社はそうない。われわれはそこで優位性が出せる」(同) 

 昨年、世界58カ国で560以上のラグジュアリーホテルやリゾート・ブランドレジデンスを展開するマイナー・ホテルズと合弁会社を設立。35年までに国内にラグジュアリーホテル21棟を開業予定だ。 

「日本は圧倒的にラグジュアリーホテルが少ない。われわれの強みを投入しながら、地域密着型のラグジュアリーホテルを開発していく」と阿部氏。 

 現に国内はインバウンド需要の活況もあって、ホテル事業の売上は全体の1/4、利益では5割を占める(25年12月期)。これは先述の外食事業の原料高やエネルギー高騰をカバーする大きな柱の1つになっている。 

 同社の25年から27年の3カ年投資計画では、外食事業に170億円、ホテル事業にはそれを上回る190億円投資する予定だ。「ロイヤルホスト」を始めとしたレストランで〝美味しさやサービスへのこだわり〟を実現し続けるためにも、国内での新たなラグジュアリーホテル開発は同社にとって社運をかける一大投資となりそうだ。