
「自分が60歳までに日本の1人あたりGDPを世界ナンバーワンにするという目標を掲げました」と語るのはプラスゼロ会長兼CEOの小代義行氏。コンサル、ITを含めたAIサービスを強みとし、日本企業の生産性向上を図る同社。小代氏は若手経営者の教育にも注力し、これまで50名以上の経営者を輩出している。事業経営と経営者育成の両輪で、日本全体を世界の頂点へと押し上げたいという小代氏の経営論とは。
大志を抱き35歳で起業
─ 小代さんはAIで日本の生産性をあげるということを目標に掲げていますが、起業したのは2003年ですね。
小代 はい。24歳の頃、自分の人生の目標を見直す機会がありまして、自分が死ぬ時に笑って死ねる人生を考えた時に、日本の1人当たりGDPを世界ナンバーワンにするぐらい大きなことが実現できれば満足して死ぬことができると思ったんです。
当時調べてみたところ、ルクセンブルクやアイルランドのような小さな国で、GDPが高い国がたくさんあると。それで、自分が60歳までに日本の1人あたりGDPを世界ナンバーワンにするという目標を掲げました。
─ 非常に大きな目標を立てたと。
小代 はい。そのために50歳までに1兆円企業を作り、40歳までに、10億の軍資金を得て、他社からも経営の依頼が来るような状況になる必要がある。27歳の時に当時時価総額ナンバーワンだったマイクロソフトに転職をし、35歳までに起業して1億円の軍資金を得ると。
その目標と同時に、次世代リーダーを100人育てたいと考えこれまでやってきました。そういう人を育てることも、1人当たりGDPの手段の1つにはなると思っています。
グローバル企業を作る、あるいは引っ張っていけるようなリーダーを100人育てれば、日本も元気になるのではないかなと考えています。
50歳で上場し、時価総額200億円から300億円の位置にいますので、最終的な目標達成まではまだ先ですが、いま取り組んでいる次世代AIを予定通りうまくいかせることができれば、十分見えてくる水準だと考えています。
─ 事業の成長と教育を両輪で行っているんですね。
小代 ええ。今まで50人以上経営者を輩出しています。その時に何を意識したかというと、育成の競争です。
例えば18歳の子に2000万円のプロジェクトのマネージャーをやらせてみたり、19歳の子に1年間に3回M&Aをやらせてみたり。今、プラスゼロ自体も、わたしが会長兼CEOで、ナンバーツーが社長兼COOの森。
副社長の永田、大澤と4人の経営体制ですが、4人ともわたしが経営していた次世代リーダー養成塾の講師出身なんです。
森には20歳の頃から子会社の社長をやらせています。森、永田の2人は18~20歳の頃から経営者経験があり、博士号を持っていて、ITの開発ももう学生時代から経験させていますが、そんな人材は他にいません。
─ 社長や副社長とは年齢が2周り違いますね。
小代 はい。わたしは今年54歳で、社長は37歳。副社長は36歳と33歳です。彼らには若い頃からいろいろな経験をさせているので、社長歴がもう17年です。
アメリカGAFAMに負けずに日本の生き残る道は?
─ 現在時価総額トップはアメリカ企業が占めていますが、これをどうみていますか。
小代 分析をすると、アメリカ全体が良くなっているわけではなく、GAFAMなどを中心とした上位企業の時価総額が極端に効率よく上がっただけで、他の産業の成長率は日本とそんなに変わりません。
日本はラピダスが1つの例で、リスクキャピタルを集約し、選択的に張るべきところを絞り国際競争をしていく。評価軸を明確にしながら、しっかりと金額に見合うサービスや人材を置いて、戦うべきところを明確にして戦っていくことが重要だと思っています。
─ エヌビディアの時価総額は700兆円を超えています。日本の産業界が世界で生き残る道をどう考えますか。
小代 AIに関して言うと、日本は産業適用事例を作ることが大事だと思っています。
AIの技術進歩は非常に早く、AIを支えるGPU周りの世界だと1年で10倍と言われていますので、投資効率が年間で大きく変わるということです。また、すぐにオープンソースでシェアされてしまい価値が壊されてしまいます。
ですので、GPUなどのハードやAIの独自モデルで戦うよりも、各産業で世界に先駆けて更にリスクを取ったAIの導入事例を作っていくことに集中するといった方法の方が、大事だと考えています。
─ 日本はその方が得意とも言えますか。
小代 はい。日本は最初の1歩目を踏み出す力が弱いことが課題です。やり始めたら強いですし、真似をするのは得意なので、誰かがやり出したら一気に動き出すと思います。
今まで明治維新、関東大震災、太平洋戦争、などの劇的な変化が起こった後の跳ね返りは強いです。日本は強い危機感を持ったときに必ず強さを発揮する国です。そういう危機がないと、頑張るスイッチが入らない国民性もあると思っています。
世界中の方と話す機会がありますが、日本は他国から尊敬されていることを実感します。
アメリカと戦争をして敗れましたが、その後たった20数年でGDP世界2位までいきました。大国に向かっていく勇気も、負けた後のリカバリーもすごいと。わたしはそういう素晴らしい国をもっと元気にしていきたいという気持ちを強く持っています。
日本を元気にしたい!
─ いま、取引先は大企業から中堅企業、どちらが多いですか。
小代 両方多いですが、ここ最近は、大企業案件が増えつつあります。AI企業というのは、経営コンサルご出身の方々がやっていることも多いのですが、そういう会社だと、月額単価が800万円~1000万円で、安くても500万円と高いんです。
それに対して当社は、AIだけでなくITサービスも含んで150万円~170万円ほどですので、要はリーズナブルなんです。その金額でお客様に対しての経営インパクトを出し続けられるコストパフォーマンスになっています。
経営コンサルティングだと、単価500万円~1000万円でも、そのお客様の課題に対しての適切な対策を考えた時に、マーケティング、ファイナンス、AIというふうに分けてやるのですが、AIだけでその単価でサービス提供し続けていくのは、わたしは難しいという考えです。やればやるほど焼畑農業になってしまいます。
ですから、わたしたちは適切な単価でソリューションを提供していこうと。リーズナブルな価格もあって、エンタープライズ、大企業、中堅企業、ベンチャー企業と規模にかかわらず当社に決めていただけるということで業績が伸びています。
─ 御社は経済団体にも参加していますね。
小代 ええ。経団連や経済同友会にも入りまして、そこにいらっしゃる方々とともに、日本を元気にしたいという話ができることが面白いです。
─ 日本を元気にしたいという思いの原点はなんですか。
小代 恐らく、影響は少年時代からサッカーをやっていたからだと思います。サッカーは、最終的にワールドカップを目指すことが当たり前のようになっています。ですから競争し世界を目指すということは、自分にとっては幼少期頃から自然なことでした。
自分を自己分析すると、みんなを幸せにしつつ、知的にフェアな競争をするのが好きなんです。その時に、ただ勝てばいいということではないということもわたしの持論です。
英語の単語で「scene」という言葉になぞらえて自分で作ったフレームワークがあります。sがShareholder(株主)、cがCustomer(顧客)、eがEmployee(従業員)、nがNation(国)、eがEveryone(社会全体)です。
これを人生の目標や会社のミッション・ビジョン・バリュー(MVV)を決める時にもこのフレームに当てはめました。ステークホルダーの顔を思い浮かべて、できるだけ高いレベルでバランスを取ることを常に意識しています。
株主のことばかり、従業員のことばかり考えるということでなく、経営は知恵を使って、できるだけ高度にバランスをさせていく仕組みを作ることが大事だと考えます。
─ プラスゼロの特徴、強みはどこにあると考えていますか。
小代 コンサル、ITを含めたAIサービスが強みです。1人当たりGDPを上げるためにも、その浸透速度を上げていかなきゃいけないので、カスタム的なソリューションとパッケージ化したようなものとの両輪で、次世代AIのソリューションを展開しています。
特にそのままでは導入できないような、例えば金融の営業やコールセンター、ITの運用保守、製造業のテストや設計などの信頼性が求められる領域に、独自の技術で信頼性を高めたAIを世界に先駆けて導入するということで差別化しています。位置付けとしては現状ブルーオーシャンです。
わたしたちのAIは機械学習一辺倒ではなくて、モデル化したり、ルール化したり、要は言語化することが非常にポイントなんです。これを二重過程モデルというのですが、わたしたちは言語化から逃げません。
─ 言語化から逃げないというのはどういう意味ですか。
小代 AIは言語化すると、自己更新や自己成長させやすいのです。機械学習は良くも悪くもビッグデータを読み込ませて、ブラックボックスになりがちです。でもブラックボックスのままだと、どこを更新していいのかわからない。
そこで言語化したAIだと、更新や追加するポイントがわかるので、よりAIが賢くなるわけです。
世の中ではLLMやディープラーニングが広く使われています。しかし、これは社内でも強く言っていますが、何か答えを求めてディープラーニングに問うただけで、思考停止してないかと。
そのレベルのソリューションでは、世界で差別化は絶対にできません。ですから言語化によるAIの精度の高さがわれわれの付加価値でもあります。
─ 10年後の姿をどう描いていますか。
小代 大きく2つの軸があると思っています。1つは、トップ企業の中核業務がAIによって高いレベルで信頼性、戦略性が増し、こんなところまでAIを使っているという、世界に誇れる事例を世の中に1番出しているような会社になることです。
もう1つがエボルビングといって、要は進化することを怠らないこと。人が自己成長することによって、AIも進化します。そのことをしっかりと実現していきたいです。
AIと人の関係は
─ AIが人の仕事を奪うということも言われますが、これについてはどう考えますか。
小代 今AIコーディングというAIでプログラミングできるイノベーションが起こったので、その人材をこれまで通りのペースで雇うべきか悩む世の中になっているんです。
GAFAMの売り上げを棒グラフにして、従業員数を折れ線グラフにすると、折れ線グラフがもう平坦になっているのです。つまり、人数が増えていないのに業績が上がっています。ですので、雇用統計が悪くても、景気が悪くならない時代がきました。
─ 生産性が上がっていると。
小代 ええ。つまりAIが新たな労働力になる時代です。労働力=雇用ではなく、労働力=雇用+技術で、技術が労働力になった時代だと思います。
─ そうすると日本は人口減、少子化、高齢化ですが、まだまだ成長できると。
小代 できます。そこはグラフをどう捉えるかだけだと考えます。例えば日本に、年間6000万人ぐらいの労働力が必要だというときに、人口減少社会であれば、不足労働者数のグラフを書けば右肩上がりですね。それを全部ロボットやAIで埋めていくことを考えると、右肩上がりの市場で日本は絶大なるチャンスです。
IT革命、インターネット革命、バイオ革命、AI革命。この自分たちが生きている間に産業革命レベルの革命が4つ起こっていると思えば、頭を使ってイノベーションを起こす人にとっては、天国のような市場環境だと思います。