
現預金を成長投資や人的資本投資に有効活用できているか不断に検証すべき――。
金融庁と東京証券取引所が4月に公表した企業統治指針(コーポレートガバナンス・コード、CGコード)の改訂案は、上場企業に対して積極的な投資を迫る内容となった。官民投資の拡大で日本経済の底上げを目指す高市早苗政権の経済政策、”サナエノミクス”に呼応したものだ。
CGコードは、上場企業が持続的な成長と企業価値の向上を目指す上で従うべき行動指針を示す。法的拘束力は持たないが、指針に従わない企業にはその理由の説明を求める「コンプライ・オア・エクスプレイン(順守か、さもなくば説明を)」が原則。経済界では「事実上の強制力を持つ」(経団連幹部)と受け止められている。
5年ぶり3回目の改訂となった今回は、企業が持つ多額の現預金がやり玉に挙がった。背景には「近年の円安などで業績が好調なのにも関わらず、企業が儲けたお金を抱え込み、投資や賃上げに十分回していない」(高市官邸筋)との不満がある。
実際、東証プライム上場企業の現預金(金融機関を除く)は過去10年間で4割も増え、約115兆円(25年3月末時点)に上っている。ただ、企業は手厚い手元資金を確保しておきたいとの思いも強い。経済危機時に事業や雇用を維持するための命綱となるからだ。改訂された指針が導入されれば、「経営者は現預金の有効活用を進めるよう市場から強いプレッシャーを受けるのが必至」(大手証券アナリスト)と見られる。
CGコード改訂に伴う市場の圧力をテコにして企業を動かし、国内投資を活発化させる。高市政権と金融庁はそんなシナリオを描くが、果たして思惑通りに事が進むだろうか。