
約357万社あると言われている日本の中小企業。その中でA社という製造業の中小企業に注目が集まっている。なぜなら、日本の防衛装備品を製造するためには、そのA社でしか作れない部品があるからだ……。
政府が重点支援を進める「戦略17分野」には「防衛産業」が含まれており、A社のような高度な技術を持つ中小企業の存在感は確実に高まっています。もともとA社は防衛産業とは縁もゆかりもない製造業で生き抜いてきました。しかし、その歴史の中で同社の社長や従業員たちが汗水たらして築き上げてきた技術や匠の技がキラリと光り始めているのです。
これは製造業だけではありません。実は今、大手企業が採算性などの観点から撤退や縮小などを進めた結果、中小企業にしかできない技術や匠の技が注目されているのです。日本の中小企業を残さなければ、日本の国防や安全保障をはじめ、私たちの生活にも影響を及ぼしかねない時代になっています。
私がソフトバンクやデロイトトーマツ、投資会社のACAなどを経て2022年に創業した当社は、後継ぎ不在などで廃業危機にある中小企業の事業存続を支援する投資事業を行っています。当社が他の投資会社やファンド、事業承継支援企業などと違うのは、投資だけでなく、経営に深く関わるという点です。
例えば、当社は後継社長の採用なども支援しています。信頼できる後継者を見つけるために何十人もの候補者と面談を重ね、経営視点・熱意・現場との相性を総合的に見極めています。それでも、投資先の後継社長候補が既存の従業員と関係を築けず、最終的には就任前に辞退したり、選任そのものを見送らざるを得なかった事例もありました。
しかし、こうした泥臭い作業の積み重ねが実を結ぶと、その中小企業の経営は着実に成長へ向かっていきます。日本では65歳以上の中小企業経営者の約半数が後継者不足という深刻な課題に直面しています。何とかして手を打たねばなりません。
そこで当社が始めたのが「ロールアップ戦略起業プログラム」です。事業承継の実務を若手に伝え、実際に承継を通じて起業するための実務力を養うプログラムです。当社だけで引き継げる企業数には限界があるため、担い手を増やして社会課題の解決にもつなげる取り組みです。
つまりこのプログラムは、当社だけでは届かない事業承継の可能性を広げる試みです。当社の事業承継のノウハウを若手に伝えることで、起業する若者も自らのテーマで事業承継に挑めるようになり、将来的には1つのテーマで1業界、あるいは1業種の事業承継を自ら主導して進めていけるようになります。
若い人たちの間では、「起業したいけれどもゼロから会社を立ち上げるのは難しい」「事業承継での起業に興味はあるが、そのやり方が分からない」といった声が増えているのです。
一頃、ベンチャーキャピタルなどからはSaaSビジネスなどへの投資が盛んでしたが、今は宇宙やAIといった領域に資金が流れており、同時に足元では今、実業としてのものづくりの現場にも改めて注目が集まり始めています。この潮流の変化に伴って若い人たちの関心も今、ものづくりなどの現場型産業へ向き始めているのです。
若い人たちの力を中小企業の再建に使わない手はありません。当社が築き上げてきたノウハウを余すことなく提供することで、中小企業が日本の国力の底上げに寄与できるようにしていきたいと思っています。