同社のデザインチームは、実は5つの試作モデルと数百人規模のユーザーテストを経て現在の形にたどり着いたことを明らかにしている。本稿では、その設計プロセスと判断の裏側を解説する。

Windows Latestは4月10日(現地時間)、「Microsoft tested 5 different Start menus for Windows 11 before choosing the current one」において、MicrosoftのデザインチームがWindows 11の新しいスタートメニューを現在のデザインに決定する以前に、5つの異なる試作版を用いて広範なテストを行っていたと伝えた。

Windows LatestはMicrosoftの公式Instagramアカウントおよび公式ブログに投稿された内容を解説、現在のデザインには不満の声が多いものの、さまざまな理由から合理的な判断によって決定されたものだったと指摘している。

スタートメニューはどう設計された? 3つのプロセス

Microsoftは「探索→検証→最適化」の3段階でスタートメニューのデザインを決定した

Microsoftのデザインチームが公式のInstagramアカウントを通じて、スタートメニューの再設計に向けた科学的なアプローチについて紹介した

  • 公式アカウントによるInstagramへの投稿

    公式アカウントによるInstagramへの投稿

同チームによると、すべてのWindowsのデザインと同様に、スタートメニューのデザインも次の3つのステップに従って決定したという。

  • Explorer: 無数のレイアウトをスケッチし、自由に発想を広げ、新しい発見を求めた
  • Validate: 100人以上のWindowsユーザーのフィードバックを得ながら、どこが的を射ているのかを確認した
  • Refine: さまざまな画面サイズを持つ膨大な数のデバイスで新しいデザインをテストし、すべてのピクセルで最適なデザインになるように微調整した。

同チームは今回のInstagramへの投稿以前にも、公式ブログにスタートメニューの再設計方法について解説する記事を投稿している。

この記事では、デザイン決定のプロセスについて、最終的に残った5つのプロトタイプのスクリーンショットとともにより詳細に解説している。

なぜ5つのプロトタイプは採用されなかった?

Microsoftが作った5つのプロトタイプは、機能は豊富だったが、操作性と視認性の面で最適ではなかったため不採用となった。

公開された5つのプロトタイプは、実際にいずれも採用されたものとは大きく異なっている。1つめのデザインは、アプリをフォルダーではなくグリッド形式でカテゴリー分けし、左側に「For you」セクションを設けてウィジェットやCopilotを配置した。実際に採用されたスタートメニューにもグリッド表示オプションはあるが、こちらはアルファベット順に分類されている点が異なる。

2つめも「For you」セクションを持つデザインで、こちらはウィジェットが水平に並べられている。また、ピン留めセクションがあり、Spotifyなどのサードパーティー製アプリがピン留めできるようになっている点が興味深い。3つめは単独のアプリのような外観を持ったデザインで、左側にStartやMy Appsなどのアイコンが並び、これをクリックすると詳細ページが開く仕様のようだ。

4つめは、左側にカテゴリー別のドロップダウンメニューがあり、ドロップダウンを開くとアプリの一覧が表示される。右側はピン留めや最近開いたアプリなどのセクションがある。最小限のデザインで、かなり整理された印象だ。5つめはピン留めや「For you」セクションごとに大きなブロックに区切られ、全体がスクロール可能なデザインになっている。ユーザーのクリエイティビティの支援を意図したと思われる「Create」セクションがある点が注意を引く。

現在のデザインはどうやって決まった?

現在のデザインは、視線追跡と大規模テストにより「1画面集約」が最も使いやすいと判断された。

Windows Latestでは、これらのプロトタイプは、実際に採用されたスタートメニューよりも洗練されていると評価している。ただし、Microsoftはこれらのプロトタイプが採用に至らなかった理由も説明している。同社は300人以上のユーザーを対象としたテストで、ユーザーの視線の動きを追跡し、ヒートマップを作成することで、どの要素が実際に注目され、操作されているかを詳細に分析した。さらに、12インチから49インチのウルトラワイドモニターまで、あらゆる画面サイズでの操作性をテストした。

その結果、ユーザーが最も求めていたのは「アプリの発見しやすさ」、「適切な推奨事項」、「ピン留めや情報のコントロール性の向上」であることが判明した。Microsoftはこの要求に応えるため、複数のページに分かれていた情報を1ページに統合し、上部にピン留め、下部に推奨事項を配置する現在のレイアウトを採用した。

スタートメニューは何を優先した? ユーザーが求めた3つの要素

スタートメニューのデザインにおいては、「アプリの見つけやすさ」「適切な推薦」「操作の自由度」が最優先された。

Microsoftのテストでは、ユーザーが重視していたのは主にこの3点だった。同社はこれらの要素を満たすため、情報を1画面に集約し、ピン留めと推奨を組み合わせた現在のレイアウトを採用した。

なぜ不満が多いのにこのデザインなのか?

現在のスタートメニューに対しては、ウィジェット機能がないことや、反応速度が遅いことなど、多くの不満の声がある。Instagramの投稿に対するコメント欄もユーザーからの不満の声で埋まっている。

しかし、Microsoftは数百人規模のテストとデータ分析をもとに、現在のスタートメニューを「最も効率的に使える構成」と判断した。しかし、この“最適化”はあくまで平均的なユーザー行動を基準としたものであり、すべてのユーザーにとって快適であることを意味するわけではない。

特に、従来の操作に慣れたユーザーや、より細かいカスタマイズ性を求めるユーザーにとっては、現在の設計は自由度が低く、使いにくいと感じられる可能性がある。つまり、不満の多さは設計の失敗というよりも、「誰に最適化したか」の違いによって生まれている側面が大きい。

今後、Microsoftが進めているネイティブ化によってパフォーマンスが改善されれば、こうした評価も変わる可能性がある。