
キヤノンの経営の舵取り
経済人にとっても、使命感と覚悟が求められる時代だ。それはいつの時代においても同じだが、特に、現在の混沌とした状況においてはそうだと思う。
今は政治と経済が切り離せない時代。国と企業の関係もそうだ。
キヤノンをグローバル企業に育て上げた御手洗冨士夫さんは(1935年=昭和10年生まれ)「国あっての企業なんです」と語る。
御手洗さんは、1960年代、日本が戦後復興期を経て、高度成長期に入ろうとしていた時、米国市場開拓のために30歳で渡米し、20数年にわたる米国勤務の後、53歳で帰国した。
カメラ・複写機メーカーであったキヤノンを、医療機器、商業印刷、ITといった様々な領域へと拡大させ、売上の85%は海外市場であげるグローバル企業にされた功績は大きい。
「政治と経済は切り離せないのです。政治と経済は表裏一体」と御手洗さんは認識され、新しいグローバリゼーションの中での経営のカジ取りを模索しておられる。
自由第一主義の中を…
1990年代から2020年初めまでの約30年間、日本は〝失われた30年〟と呼ばれる低迷期の中で、成長を海外市場に求めていった。
北米はNAFTA(北米自由貿易協定)が結ばれ、米国、カナダ、メキシコの3カ国が提携。欧州各国はEUを結成し、結び付きを深め、開かれた経済圏が形成された。
「ええ、1990年代の終わりから、リーマン・ショック(2008)までの約20年間位は、社会が全部つながっているグローバリゼーションの時代だったわけです」と御手洗さんは語る。
「そのグローバリゼーションの中で、人の行き来、資本の行き来は非常に自由に行われたと。世界中で価値の交換が自由に行われたわけです。価値の交換とはどういうことかというと、資源国は資源をどんどん出す。文明先進国はそれを受けて加工品をつくって、原産国に返すと。それによって、文明を上げていく。そういうグローバリゼーションの中で流通が行われ、価値の交換が行われ、世界が豊かになっていったわけです」
そうしたグローバリゼーションが、トランプ政権の高関税策、米国ファースト政策で変容しつつある。自国第一主義が蔓延し、あちこちで国と国の利害衝突が散見されるようになった。旧来の秩序が崩れ、混迷する時代を経済人はどう生き抜くかという命題である。