【厚生労働省】診療報酬の改定議論が本格化 物価高の反映どこまで?

公的保険診療の対価である診療報酬の改定議論が秋から本格化する。26年度改定の焦点は医療技術料である報酬の「本体」部分を物価高に合わせてどこまで引き上げられるかだ。

 診療報酬は改定頻度が原則2年に1度のため急激な物価高に対応できず、材料や人件費といったコスト高で多くの医療機関が赤字経営を強いられている。一方、報酬を大幅に引き上げれば保険料や窓口負担などの形で患者らの負担増につながる。引き上げ幅は年末の予算編成過程で、最大の焦点となりそうだ。

 診療報酬は本体部分と医薬品の公定価格である「薬価」部分で構成される。前回の24年度改定では約30年ぶりのインフレを踏まえ本体を0.88%引き上げた一方、薬価は約1%下げて全体の改定率はマイナスとなった。本体部分のうち0.61%は医療従事者の賃上げに充てられた。厚労省幹部は「医療費は高齢化で年々膨張することから、報酬本体の上げ幅を巡る財務省との折衝はゼロコンマ刻みだった」と振り返る。

 物価高が定着した現在では、こうした抑制的な上げ幅では医療機関の経営は成り立たない。日本医師会など、医療関係団体は「報酬を前倒しで大幅に引き上げないと倒産する診療所や病院が続出し、地域医療に悪影響が出る」と悲鳴を上げている。

 今後は上げ幅を巡る政府内や関係団体間の攻防が激化する。日医など医療関係団体は補正予算による前倒し改定に加え、報酬本体を10%程度引き上げることを要求。これに対し、財務省などは必要最小限の上げ幅にとどめるよう主張している。

 従来は市場実勢価格を踏まえた薬価の引き下げによって本体部分の引き上げ財源をある程度確保できたが、物価高で薬も安売りされておらず、財源確保策は難航必至だ。

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