米OpenAIは10月6日(現地時間)、開発者イベント「OpenAI DevDay 2025」において、「ChatGPT」内でサードパーティアプリを直接利用できる新機能「Apps in ChatGPT」と、開発ツールキット「Apps SDK」を発表した。ユーザーはChatGPTとの対話を中断することなく、チャット画面上で外部サービスを呼び出し、対話を通じてアプリを利用するという新たなAI体験が可能となる。
これまで、ChatGPTで得たアイデアをもとにプレゼン資料を作成したり、旅行計画を立てたりする場合、ユーザーはブラウザの別のタブや別のアプリに切り替えて作業を行う必要があった。Apps in ChatGPTにより、ユーザーは複数のタブやアプリを行き来したり、情報をコピー&ペーストすることなく、チャットの文脈を保持したまま作業を続行できる。
たとえば、ChatGPTで犬を飼いやすい地域を調べ、「Zillow(不動産情報サービス)で、ピッツバーグのペット可の家を探して」と入力すれば、チャット内にZillowの不動産検索画面がインライン表示され、ユーザーは画面を切り替えることなく物件の閲覧や絞り込み、問い合わせまでを完結できる。
Apps in ChatGPTを使うと、外部アプリで通常必要となる複雑なユーザーインターフェース(UI)操作や設定も、ChatGPT経由で自然言語で指示できる。たとえば「Canvaで明るくポップなポスターを作って」と言えば、ChatGPTがCanvaアプリに指示を伝え、ユーザーが細かい設定や操作を行わずに自動で作成される。
対応するアプリは、ユーザーが会話の中でアプリ名を指定して呼び出すか、ChatGPTが会話の文脈から必要と判断したアプリを自動で提案する。たとえば「xxを旅行したい」という話題で、Booking.comのアプリが提案され、ホテル検索をそのまま行える。
ユーザーには必要なアプリを適宜利用できる利便性をもたらし、開発者にとっては、アプリをApps in ChatGPTに対応させることで、数億人規模のChatGPTユーザーにアプローチできるという利点がある。
同機能は、EUを除く地域のすべてのChatGPTユーザー(無料プラン含む)に6日から提供が開始された。
サービス開始時点では、Booking.com、Canva、Coursera、Expedia、Figma、Spotify、Zillowなど、パイロットパートナーのアプリを英語で利用可能。これに続き、Uber、Target、OpenTableなど日常生活の様々な場面で活用できるアプリの追加が予定されている。
OpenAIは開発者向けに「Apps SDK」のプレビュー版提供を開始した。Apps SDKは、AI・大規模言語モデル(LLM)と外部データソースやツールを接続するためのオープンプロトコル「Model Context Protocol(MCP)」を基盤としている。開発者は自社のデータベース接続やビジネスロジックを担うバックエンドから、ユーザーが直接操作するフロントエンドのUIまでを完全にコントロールできる。ChatGPTの対話において、各サービスにログインした状態でアプリを利用することが可能であり、OpenAIは将来的に「さまざまなマネタイズ方法をサポートする」としている。
開発者はすぐにApps SDKを利用して、ChatGPT上で動作するアプリの構築とテストを始めることができる。OpenAIは、ユーザーがアプリを探せる専用ディレクトリを年内に開設する予定で、開発者が開発したアプリの申請受付も年内に開始する予定である。
「チャットボット」から「対話型アプリ・プラットフォーム」へ
Apps in ChatGPTは、チャット内でアプリを使うという新たなAI活用をChatGPTにもたらすとともに、「マルチタスク環境での煩雑なUI操作」を「自然な対話による一貫した作業体験」へと転換するものである。特に対話AIとの作業に慣れていないユーザーに対して、高度なAI活用のハードルを大幅に下げる可能性がある。「複数のアプリを使った作業を1つのチャットで済ませる」新たなインターフェースとして、今後のAIプラットフォームやAIデバイスの展開に影響を与える可能性を秘めている。



