Windows Latestは5月13日(現地時間)、「Former Windows boss reveals why modern Windows 11 apps feel slower, says Microsoft once gave every engineer a stopwatch」において、元Microsoft Windows部門責任者Steven Sinofsky氏が、過去のMicrosoft開発文化と性能管理の実態について語ったと報じた。
Microsoftでは、1980年代から2000年前後まで、全技術者にストップウオッチを配布し、起動や描画など多様な処理時間を日常的に測定していたという。
Microsoftでは「速度測定」が全技術者の日課だった
1980年代から2000年前後のMicrosoftでは、ソフトウェア性能がきわめて重視されていたという。当時はCPU性能やメモリ容量が限られていたため、わずかな負荷の増加も製品の品質に直結していたからだ。
Sinofsky氏はXへの投稿で、当時の開発現場では全技術者へストップウオッチが配布されており、物資室には予備が備えられていたと説明している。開発者たちはそのストップウオッチを使って、アプリの起動、スクロール、保存、印刷、コンパイルなど、あらゆる動作の時間を細かく測定していたという。性能最適化は特定の部署に与えられた仕事ではなく、すべての開発者が日常的に取り組む課題だったことがわかる。
実際は高速化しても「遅くなった」と言われた理由
Sinofsky氏はさらに、Visual C++ 1.0開発時の逸話も紹介した。新しいコンパイラーは旧バージョンより高速化されていたにもかかわらず、実際に利用したユーザーからは以前より遅くなったという反応が寄せられた。原因を分析した結果、純粋な処理時間だけではなく、画面表示による視覚的な情報が、ユーザーの速度感の認識に大きく影響することが分かった。
そこで開発チームは、コンパイル中に数字が派手に回転するカウンターを表示することにした。するとユーザーの認識は改善し、不満の声も少なくなったという。この事例は、コンピューターの実際の処理速度と、人間が感じる快適性が、必ずしも一致するわけではないことを示している。VC++ 1.0で採用されたこの手法は、現在ではWindows以外でも定石として広く使われている。
なぜWindows 11は「重い」と感じられるのか
Windows Latestは、近年のWindows 11アプリの動作がユーザーにとって遅く感じられている状況にも触れている。その大きな原因の一つがソフトウェアの肥大化だ。過去と比較してハードウェア性能は大幅に向上したが、OSやアプリが使用するリソースも増大しており、単純なToDoアプリでさえ数百MB級のメモリを消費してしまうのが実情だ。
また、現在はハードウェア性能の向上を前提として、ソフトウェアの設計そのものが複雑化している。CPU性能やメモリ容量が貧弱だった時代とは違い、現在のPCは豊富なハードウェアリソースを備えているため、効率を最優先とする文化が薄れたというのがWindows Latestの見解だ。
Microsoftは再び「高速化」に取り組み始めた
とはいえ、Microsoftは現状を決して楽観視しているわけではない。同社は現在、低スペックPC向けの「低遅延プロファイル(Low Latency Profile)」や、UIフレームワーク「WinUI 3」の刷新など、Windows 11全体の性能改善に向けた取り組みを進めている。
TECH+でも、Windows 11の起動時間短縮機能や、WinUI 3刷新によるアプリ高速化について既報している。
Microsoftは現在、Windows 11において再び性能改善へ注力し始めている。かつてのような“ストップウオッチ文化”が完全に復活することはないとしても、ユーザー体験を左右する「速さ」の重要性を、同社が改めて見直し始めていることは確かなようだ。
