『わたしの「対話人生」』国際社会経済研究所理事長・藤沢久美「 記憶に残る人」

私自身も年齢を重ね、気がつくと『社長Talk』のゲストとして出演してくださる経営者の方々も同世代から年下の割合が増えてきた。大きな企業の経営者の方々は、まだ年上の方が多いが、そうした方々の中には、私が20年くらい前に、お仕事でお世話になったことがある方が何名かいらっしゃる。

 私は、若い頃、20代後半で起業したことやNHKでキャスターをさせていただいたことなどから、様々な講演会に講師としてお招きいただくことが多かった。当時の自分を思い出すと、世間知らずの怖いもの知らずで自分の論を語っていたと恥ずかしい気持ちになるが、多くの方々とご縁をいただいた。

 そうしたご縁の中で、強く記憶に残っている方々がいらっしゃる。例えば、元三井住友銀行頭取、元三井住友フィナンシャルグループ社長の国部毅さんには、リテールのお客様向けセミナーにお招きいただいた。まだ課長くらいのお立場だった国部さんだったが、名刺交換の際に、私の日頃の活動についても触れてくださって、形式的ではなく、とても丁寧で心のこもった名刺交換をしてくださったことが強く印象に残っている。名刺交換だけで、これほど印象に残った人は国部さんだけだ。

 また、野村證券で副社長、野村アセットで社長、投信協会や証券業協会で会長を務められた稲野和利さんも印象に残っている方だ。私が起業して間もなく、野村證券に営業に行った際に、当時部長だった稲野さんは、とても丁寧に私たちに接してくださった。当時、ほとんどの企業の方が、起業したての若者への対応は、当然のことながら優しくはなかったが、稲野さんは、帰り際まで丁寧に見送っていただき、その後も、茅場町などでばったりお会いした際には声をかけてくださったり、こんな私のことを覚えていてくださったんだと嬉しくなったことを思い出す。

 さらには、豊田通商の社長・会長を務められた加留部淳さんもそのお一人だ。豊田通商の一部門の部長でいらした際に、お取引先向けの講演をさせていただいた。加留部さんもまたジェントルマンで、講演後にもメールで直接お礼をお送りいただいた。その後も、時々、連絡をくださったりと、ご縁を大切に繋いでくださった。いずれのお三方ともに、偉くなられてからも、そのお人柄は変わらず、誰に対しても丁寧で、そして朗らかで、温かみがある。

 いろんな経営者の方々とお会いする機会があるが、お若い時のお姿を知るお三方になぞらえば、リーダーになる人は、なるべくしてなられるのだろうと思う。

冨山和彦の【わたしの一冊】『国宝』(上・下)