シトリックス・システムズ・ジャパンは6月10日、新製品「Citrix Platform」の国内初公開に合わせ、戦略説明会を開催した。
同社は2022年1月に投資会社であるVista Equity PartnersとEvergreen Coast Capitalに買収され、TIBCO Softwareと合併し、Cloud Software Groupの傘下のブランドとなった。
プラットフォーム戦略に伴いライセンスも簡素化
同社は2024年にプラットフォーム戦略を発表した。これにより、機能別の製品パッケージが廃止され製品のシンプル化を図った。
ジェネラルマネージャーの平井恵介氏は、「当社は仮想化とネットワーク技術を牽引してきたが、現在はプラットフォームというアプローチを提供している。これにより、複雑を解消し、セキュアなエクスペリエンスを提供する。また、当社のプラットフォームは働き方を支える基盤となる」と語った。
平井氏は、買収を通じてプラットフォームを進化させていると説明した。2024年3月にuberAgentを買収したことを皮切りに、2025年1月の時点で4社の買収を行った。同氏は「買収した企業の製品のすぐれた機能を統合し、自動で提供される。ユーザーは追加の費用を払うことなく利用できる」と述べた。
プラットフォームの提供に伴い、製品パッケージも簡素化され、現在は2種類のサブスクリプションモデルを提供している。
「Citrix Universal Hybrid Multi-Cloud」は、Citrix Universalサブスクリプションの後継で、フル機能のNetScaler、Citrix Endpoint Managementも含み、エンド・ユーザー・コンピューティング(EUC)分野の中核となるアプリケーションデリバリーに必要な機能がすべて提供される。
「Citrix Platform License」は新たに設けられた最上位パッケージで、Citrix製品の機能に加え、買収によるテクノロジーや将来のイノベーションも含まれる。
平井氏は「当社はVDIからプラットフォーマーへと進化しているが、これにより、VDIの価値を上げている。また、クラウドPCに対しても、最適化と付加価値を提供している。プラットフォーム戦略の柱に安全なアクセス環境の実現を据えている」と語っていた。
Chrome Enterprise PremiumをCitrixプラットフォームに導入
同社は今年3月、Googleとの提携関係を強化し、企業向けブラウザであるChrome Enterprise PremiumをCitrixプラットフォームに導入することを発表した。Chrome Enterprise PremiumはCitrix Platform Licenseに包含される。
これにより、Citrixプラットフォームで安全なウェブ閲覧機能が提供されるほか、Chromeを通じてCitrixプラットフォームからアプリケーションへのアクセスが容易になり、セキュリティを強化できる。
テクニカルソリューション本部 リードアカウントテクノロジーストラテジストの武石隆治氏は、「われわれはブラウザセキュリティまで一貫して提供できるようになった」と述べた。
武石氏はブラウザセキュリティに注力する背景について次のように語った。
「SaaSや生成AIが普及し、ブラウザが業務の窓口になっている。だからこそ、Chrome Enterprise Premiumをオプションでもなく、戦略的中核のソリューションに据えているChrome Enterprise Premiumとの統合により、社内アプリケーション、リモートワークは当社が守る」
NVIDIA仮想GPUを基盤とするAI仮想ワークステーション提供
また、今年3月には、NVIDIAと提携し、同社のNVIDIA仮想GPU(vGPU)を基盤とするAI仮想ワークステーションを提供することも発表された。Citrix DaaSとNVIDIA RTX仮想ワークステーションを組み合わせることにより、アプリケーションの開発、PoC、デリバリーができる仮想化環境を提供する。
テクノロジー・ソリューション部 統括本部長 竹内裕治氏は、この取り組みにおいては「セキュリティ、コンプライアンス、コストがカギとなる」と述べた。
NVIDIA AI仮想ワークステーションとCitrix DaaSの併用により、自社のデータと機密情報が保護され、公開のLLMへの流出リスクが低減される。また、物理環境を構築するとコストがかかるが、仮想環境ならコストと時間を抑えながら、AIの実用化に漕ぎづけることが可能だ。
さらに、ユーザーは本番のAIアプリケーションをDaaSまたはCitrix Enterprise Browser内で使用するため、セキュリティ強化のメリットが得られるという。