
日本は安定成長期に入り、更に人口減少に直面しています。その中で持続可能な物流網をどう構築していくかが、大きな社会課題になっています。
日本物流団体連合会では、昨年11月にタイ・ベトナムに海外視察団を派遣しました。各国の産業や生活、物流を見て、日本の物流網を持続可能なものにするためには、まず日本の未来の産業構造をどういうものにしていくのかが原点になければならないと強く感じました。
日本は戦後の復興から製造業が経済の高度成長を牽引して輸出を伸ばし、更には海外諸国の成長に呼応し、現地生産化を進めてきました。しかしながら、中国をはじめ、海外諸国の台頭により、日本企業が競争力を失う業種も出てきています。
これからの日本の産業は日本人の勤勉性からくる「ものづくり」の技術や地域の特性を活かしながら、DX等の新しい技術も取り入れ、製造業や農業・水産業などの製品や商品の付加価値を更に高め、日本の産業を再興していくことが重要だと思います。そのことが地域創生にも結び付きます。
これまでも日本製品の商品性・安全性は自動車・産業機械に加え、農業・水産業や食品・飲料などでも高い評価を受けてきているので、国内の需要に加え、経済成長や人口増加が著しいASEAN・インド・アフリカなどへの製品や商品の輸出を伸ばしていくことができるでしょう。また、海外からの輸入に頼らざるを得ないものも、今後少なからず存在すると思います。
このように輸出入も含めた日本の産業の未来の姿を支える物流の姿を考えると、いくつかの課題が浮かび上がってきます。
まず、港湾の利便性を高め、かつ国内物流モードとの結節を円滑なものにしなければなりません。海外の港湾施設は重点港への国からの集中投資で利便性を高め、またオンドックレールなどで結節性を高めています。
次に、国内物流インフラについて、特に激甚化する自然災害に対する強靭化を図ることは極めて重要です。人を災害から守ることを優先しつつも、物流網に対しても災害に対する予防保全をすることが輸出入貨物も含む物流を安定的にし、日本の産業の競争力を高めます。
更に、物流を支える人材についてです。多くの日本企業では、海外進出に伴い、海外経験を積んだ方が経営者として活躍されています。来年度から3千社を超える日本の主要企業に役員クラスの物流統括管理者(CLO)の選任が義務付けられます。企業経営として、調達・生産・販売と、それらを円滑化する物流を連関して議論することが始まり、輸出入貨物の物流の観点からも議論がなされるでしょう。そのことが日本の産業を支える物流を大きく変革することになると思っています。
2024年問題を契機に、物流問題にこれまでにないほど焦点が当たり、行政も物流が日本産業の競争力を生み出すという認識を持ち、国土交通省に加え、荷主を管轄する経済産業省、農林水産省とが連携して法制度に裏打ちされた物流に関する政策をパッケージとして打ち出しています。
今後、物流・人流の既存や新規のインフラへの、旧来の予算配分をベースにせずに将来の日本産業の戦略や人口動向に合わせた、メリハリの効いた予算配分が求められるところです。
官・民とも、モード別の縦割りを超え、「モーダルコンビネーション」での全体最適の実現の考えを持ち、腰を据えて物流の新たな時代を切り開かなければなりません。