将来宇宙輸送システムは、米国のロケットエンジン開発企業・Ursa Major Technologiesからロケットエンジンを追加調達するとともに、将来的なエンジン開発に関する共同検討を行うことで合意したと、4月9日に発表した。

  • Ursa Major Technologies製のロケットエンジン「HADLEY」(ハドレー)

  • (前列左から)ISCの畑田康二郎CEO、Ursa MajorのDan Jablonsky CEO

将来宇宙輸送システム(ISC:Innovative Space Carrier)は、宇宙往還を可能にする次世代輸送システムの実現をめざすスタートアップ企業。Ursa Major Technologiesは米コロラド州バーサウドに本社を構え、ロケットエンジンの開発・販売を行う企業だ。ISCによるUrsa Major製の「HADLEY」(ハドレー)購入を皮切りに、両社は再使用型ロケットの開発に向けた協業を進めてきた。

ISCによれば、日本企業が米国製のロケットエンジンを用いて米国で飛行実証するのは、これが初の試みになる予定だ。今回の合意により、実証時の不測の事態に備えて、予備用エンジンなど将来的な需要を見据えた調達を可能にしたかたち。ISCでは2025年内に、再使用型ロケット「ASCA 1」シリーズの最初のバージョン「ASCA 1.0」の飛行実証を行うことを目標として、開発を進めていくとしている。

なおロケットエンジンは、ミサイル技術管理レジーム(MTCR)のカテゴリー1に該当することから、米国製のものは「国際武器取引規則」(ITAR)に基づき、米国外への持ち出しは原則として禁じられている。このためISCは、100%子会社である米国法人Sirius Technologiesを設立し、子会社が管理して米国内で飛行実証する計画を具体化。一定の範囲内で技術情報をやり取りできる体制を整え、米国務省から2025年1月に承認されたとのこと。

  • 小型衛星打ち上げ実証機「ASCA-1」(アスカワン)のイメージ

  • 2025年から飛行実証の実施をめざす、再使用型ロケットASCA 1シリーズ

あわせてISCは、Ursa Majorが開発するロケットエンジン「ARROWAY」(アロウェー)を用いたロケットシステムの開発を共同で検討することも発表した。

現在設計中のARROWAYは、液体メタンを燃料とし、2段燃焼サイクルを採用したロケットエンジン。2段燃焼サイクルは複雑で高度な開発が求められるが、きわめて高い推進効率を実現できるとのこと。スペースX(SpaceX)をはじめ、一部の米スタートアップが実用化しているが、ISCによれば日本国内ではまだ実現例がないという。

こうした複雑で高度な開発を実現するために、Ursa Majorは米オハイオ州の研究開発センターで、金属3Dプリンターを活用したロケットエンジン開発に取り組んでいる。ISCも金属3Dプリンターを用いたロケットエンジン開発に着手しており、今後両社の連携を通じて技術力を向上させることを検討している。

  • Ursa Majorが開発中のロケットエンジン「ARROWAY」(アロウェー)のイメージ