アゼルバイジャンの首都バクーで11日から開かれていた国連気候変動枠組み条約(UNFCCC)第29回締約国会議(COP29)は24日、発展途上国の地球温暖化対策資金(気候資金)として先進国が2035年までに官民合わせて少なくとも年3000億ドル(46兆円余り)を支援することなどで合意し、閉幕した。
COP29は世界中で気候変動が影響したとみられる熱波や豪雨、干ばつといった「極端な気象」が頻発する中で開かれた。今回会議の最大の焦点は、途上国の脱炭素化や自然災害の被害対策を支援する気候資金の増額だった。事前に予想された通り、先進国と新興国・途上国との間の溝は埋まらずに交渉は難航。会期を2日延長して年1000億ドルという現行目標の3倍増でようやく決着した。
一方、新興国インドや途上国の一部は合意文書採択後に「目標額が低すぎる」と不満を表明した。インド代表は「(合意額は)私たちが直面する課題の深刻さに対処できない。合意文書採択に反対する」と述べるなど、会議は異例の雰囲気に包まれて終わった。
途上国は「地球温暖化や気候変動はこれまで化石燃料を大量に使って二酸化炭素などの温室効果ガス(GHG)を排出してきた先進国の責任」と一貫して主張してきた。そしてGHGの排出量を削減するための再生可能エネルギー導入などに多額の資金を提供するよう先進国に求めてきた。
国連やUNFCCC事務局によると、合意文書には途上国を含めた世界全体で気候資金を2035年までに官民合わせて少なくとも年1兆3000億ドルに拡大するための協力を求める、との文言も盛り込まれた。
2009年のCOP15で、先進国は20年までに年1000億ドルの気候資金を拠出することを約束した。22年に2年遅れで同資金は目標を達成。25年までに新しい気候資金の目標を決めることになり、COP29はその目標額設定が最重要議題だった。
会議閉会式でUNFCCCのスティール事務局長は「新しい気候資金の目標は気候変動が各国を襲う中で人類のための保険だ。何十億人もの命を守るためにこの保険の保険料を払うという約束を守らなければならない」と述べた。
また国連のグテーレス事務総長はCOP閉幕に向けた声明で「(地球に住む)私たちが直面する大きな課題に対処するために、より野心的な成果を期待していた」として新たな気候資金の目標額にやや不満を示したが、「この合意を基にさらに上を築くよう訴える」と強調。「年1兆3000億ドル」に向けた努力を各国に求めた。
パリ協定では産業革命前からの気温上昇を1.5度以内に抑えることを目指している。しかし、国連環境計画(UNEP)によると、各国が現在掲げる2030年までの削減目標が仮に達成されても今世紀末には2.6~2.8度の気温上昇が見込まれる。このため「1.5度目標」に必要な各国のGHGの削減量と排出実績の乖離(かいり)は大きい。だが、今回のCOP29では、化石燃料の使用削減について「約10年で脱却を加速する」とした昨年のCOP28の合意から大きな進展はなかった。
各国は来年2月までに2035年のGHG排出削減目標を提出することを求められているが、多くの国は現行目標の達成も厳しい現状で大幅な目標の上積みは容易ではない。
米国のトランプ次期政権はパリ協定から離脱する可能性が高い。グテーレス氏は「パリ協定を中心とする多国間主義が(気候変動という)最も困難な問題を乗り越える道筋を見いだすことができることを示した」とも述べた。
COP29は先進国と途上国が対立したまま終わるという最悪シナリオは避けられたが、肝心の「1.5度」目標を達成して気候変動による甚大被害を食い止める具体的な道筋は示されなかった。国際協調が必要な気候変動対策に「待ったなし」の状況の中で、世界第2位のGHG排出国が不在によるパリ協定のほころびが懸念される。COP30は来年11月にブラジル北部のベレンで開かれる。
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