中国国家統計局が発表したデータによると、2024年第1四半期の中国におけるIC生産量は、前年同期比40%増の981億個となったほか、3月単月でも前年同月比28.4%増の362億個という単月記録の過去最高を更新したと香港の日刊紙South China Morning Postが報じている。

中国は先端プロセス向け半導体製造装置などを中心に米国が行っている輸出規制などの影響で入手が困難になっている一方、成熟プロセスに対する規制は厳しくないため、それらの生産を拡大させる方向に舵を切っており、その結果が統計にも出てきたと言えるだろう。

米国は現在、中国における14nmプロセス以降の微細プロセスを用いた半導体の製造に向けた製造装置や技術の輸出規制を行っており、中国の半導体企業がそうしたプロセスに対応する製造装置などの入手が難しくなっているが、それ以前のプロセスを用いた「レガシーチップ」の製造は規制の対象になっていないことから、多くの中国の半導体企業がそうしたレガシーチップの生産拡大に向けた設備投資を進めており、その結果が統計にも出てきたと言えるだろう。米国が規制の対象外を設けたことが裏目に出ていると市場調査会社のTrendForceは指摘している。

同社の調べによると、グローバル市場におけるレガシーチップの中国企業のシェアは2023年時点で31%であるが、2027年には39%に到達する可能性があるという。また、中国のファウンドリ大手SMICは、そうした規制を乗り越え、ArF液浸リソグラフィによるマルチパターニングで7nmプロセスを実現。Huaweiのスマートフォン(スマホ)「Mate 60 Pro」向けSoCに適用しており、間もなく5nmプロセスを用いたSoCも登場するとのうわさもでている。

こうした中国の動きに対し、米国商務長官のジーナ・レモンド氏は、4月21日に放映された米CBSテレビの報道番組「60minutes」に登場。インタビューに答える形で「中国は先進技術において依然として米国に数年遅れている。バイデン政権のチップ輸出政策が効果を発揮しており、米国は今後とも半導体に関する国家安全保障を守り続ける」と強気の発言をしている。

米国政府はMate 60 Proが発売されて以降、中国に対する先進半導体技術の輸出に関する制限をさらに強化する動きを見せており、中国側はそうした政策に対する非難を繰り返し行ってきている。そうした中、レモンド長官は、今後についてはレガシープロセスの半導体製造についても規制対象にする方向で検討していることを示唆しており、米国政府として中国の半導体企業がレガシープロセスであっても世界市場を席捲することになれば、米国の国家安全保障を脅かす可能性があるとの警戒化を示している。