旭化成と九州大学(九大)は、マイクロプラスチックの年齢(屋外で紫外線を浴びた経過時間)を推定する手法を開発したことを発表した。

同成果は、旭化成 基盤技術研究所の大久保理恵氏、同 山本挙氏、同 栗間昭宏氏、同 坂部輝御氏、旭化成 研究・開発本部 技術政策室資源循環プロジェクト長の井出陽一郎氏、九大 応用力学研究所の磯辺篤彦 教授らで構成される共同研究グループによるもの。詳細はエルゼビア社発行の国際学術雑誌「Marine Pollution Bulletin」に掲載された。

海に流出したプラスチックごみは、紫外線照射などによって劣化し、マイクロプラスチックと呼ばれる微細片に破砕されることが知られており、現在、世界の海洋表層には約24兆粒のマイクロプラスチックが浮遊していると言われている。また、このような自然に分解しづらいプラスチックは、分解するまで数百年以上の長期にわたって漂流を続けるとも予想されている。

一方で、先行研究では比重が海水よりも軽いポリエチレンやポリプロピレンといった素材のマイクロプラスチックが、海底から見つかったことも報告されており、海に浮遊するマイクロプラスチックを海底にまで沈降させる働きがあることが示唆されていたという。しかし、マイクロプラスチックが海を漂う本当の期間はこれまで良く分かっていなかったことから、共同研究グループは今回、マイクロプラスチックが屋外に出てのち、紫外線を浴びた経過時間(年齢)の推定手法を新たに開発することで、海面近くのマイクロプラスチックの年齢の測定に挑んだという。

  • マイクロプラスチックの採取位置

    マイクロプラスチックの採取位置。AとBは、屋外暴露試験を行った宮古島と富士市の位置を示している(出所:九大)

その結果、北西太平洋や赤道といった外洋の海面近くで採取されたマイクロプラスチックについては、年齢が1~3歳の範囲に集中していることを発見した。一方で、陸近くの日本近海から採取されたものは、0~5歳と年齢にばらつきが見られたという。

  • 日本近海と北西太平洋や赤道の海洋表層から採取されたマイクロプラスチックの年齢分布

    日本近海(上)と北西太平洋や赤道(下)の海洋表層から採取されたマイクロプラスチックの年齢分布(出所:九大)

これらの結果について研究グループでは、海には浮遊するマイクロプラスチックを1~3年程度で海面近くから除去する働きがあること、ならびにその取り除く機能は海岸に漂着した時点で失われることが示唆されたと説明している。

なお、旭化成と九州大学は、今後もそれぞれの知見を活かした連携を進めながら、マイクロプラスチック生成メカニズムの解明を目指すことで、海洋プラスチック問題の解決に貢献していきたいとしている。