米国が主導して日本、韓国、台湾との4者で半導体サプライチェーンの強靭化をめざす「Chip 4」プロジェクトが水面下で進んでおり、半導体製造・販売で中国に依存度の高い韓国も政府内で様々な議論の末に、準備会議に参加する姿勢をみせている。

そうした中、もしそういった動きが実現されれば、実は台湾のファブレスIC設計企業の生き残りが困難になる可能性が出てくるとの調査結果を、台湾の信用調査機関である「中華徴信所(China Credit Information Institute:CRIF)が発表した。

CRIFによると、半導体サプライチェーンの上流にある台湾のファブレスIC設計業の売り上げ(2021年)は1兆2648億NTドルで、このうち年間売上高が50億NTドルを超す上位31社の売上高合計は1兆1690億NTドルに達し、台湾ファブレス全体売り上げの92%を占めている。また、これら31社の中国市場での売上高合計は6220億NTドルで31社の合計売上高の53%を占めており、この結果は、台湾ファブレスIC業界が中国市場に大きく依存していることを示すもので、Chip 4の構築により中国市場からの撤退を余儀なくされた場合、それらの多くの企業が生き残ることは困難だとCRIFは結論付けている。

CRIFによれば、台湾のファブレスIC企業で売上高に中国地域の比率が80%を超えるのは6社、50%から80%が9社、30%から50%が10社で、中国本土からの収入が50%以上を占める15社の総収入は5320億6400万NTドルで、31社の中国向け売上高の85%以上を占めているという。

これら31社のうち、連結財務報告で中国および香港からの収益を開示しているのは18社、残りの13社はアジア地域の収益として開示しているため、中国依存はもっと高い可能性があるとCRIFでは指摘している。

米国は台湾半導体業界の何に期待しているのか?

なお、米国の対台半導体政策については、「米国政府は、Chip 4の同盟を通して台湾を取り込もうとしている」(台湾業界関係者)という見方や、「米国は、台湾による先端半導体独占を避けて台湾依存から脱却しようとしている」(台湾工業技術研究院関係者)という見方が台湾内からは出ているという。CRIFでは、これらの見方は一見すると相反する方向にあるように見えるが、「短期」と「長期」という観点の違いを考慮すれば、結局は同じ地点を着地すると分析している。つまり、先端プロセスの製造基盤をすぐに構築するのが難しい米国の立場としては、まずは北東アジアの同盟国(日本、韓国、台湾)と緊密に協力し、長期的には米国自身の製造能力強化に進むだろうという分析だという。