九州大学(九大)は8月24日、宇宙で最初に輝きだした第1世代の恒星「ファーストスター」の表層までを取り扱う高精度な磁気流体シミュレーションを行うことで、その形成過程における磁気流体効果を検証したところ、ファーストスターが誕生する初期宇宙の磁場強度は現在の宇宙と比べて10桁以上低く、極めて微弱だが、星や星周ガスの回転運動によって15桁以上指数関数的に増幅することがわかったと発表した。

また、その強磁場がブレーキとなって星周ガスの回転運動を弱めるため、星周円盤の分裂が抑制され、小質量のファーストスターが同時に複数誕生するのではなく、大質量の巨大なファーストスターが単独で誕生する可能性があることも併せて発表された。

同成果は、東京大学大学院 理学系研究科の平野信吾特任研究員、九大大学院 理学研究院の町田正博准教授らの共同研究チームによるもの。詳細は、米天体物理学専門誌「The Astrophysical Journal Letters」に掲載された。

ビッグバンからおよそ38万年後に光が直進できるようになり、“宇宙の晴れ上がり”イベントが生じたとされている。しかしその時点で、少なくとも可視光域で光を放つ星などの天体は存在しておらず、晴れ上がったが宇宙は“暗黒時代”を迎えたという。

そして、ビッグバンから数億年後(早ければおよそ1億年後)に、大量の水素やヘリウムなどから、宇宙で最初の星であるファーストスターが誕生し、“宇宙の夜明け”が訪れることとなり、それらファーストスターが超新星爆発を起こした後に誕生した第2世代以降の星々が集まって、「ファーストギャラクシー」が誕生したと考えられている。

このように、ファーストスターは宇宙の初期進化を左右する重要な天体であり、ファーストスターがどのような天体だったのかを明らかにするため、シミュレーションによるその誕生の再現も含めた、理論的研究がこれまで数多く行われてきた。これまでのところ、その描像には複数の説があり、現代の宇宙には存在しないほど桁違いの大質量星だったとする説もあれば、宇宙の年齢以上の寿命を持つ小質量の天体(太陽よりも小型)だったとする説もある。

そうした中、近年の研究トレンドとして注目されているのが磁場の影響だという。これまでのシミュレーションでは簡略化のために星周磁場は取り扱われていなかったが、より厳密性を求めるようになってきているという。

そこで研究チームは今回、ファーストスターの表層から星が生まれるガス雲までを空間分解する高精度な磁気流体シミュレーションを実施することにしたとする。